日立・帝人、デジタルトランスフォーメーション推進への協創を開始 研究開発のさらなる高度化・効率化を目指す

株式会社日立製作所(以下、日立)は、帝人株式会社と新素材の研究開発におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向け、協創を開始すると発表した。 帝人は、「中期経営計画2020-2022」において、データ利活用による素材開発の高度化を掲げ、デジタル技術を活用した、研究開発スピードの向上と開発力強化に向けた検討を進めており、今回の日立との協創は、その取り組みの一環という。

今回の協創において、帝人と日立は、デジタルイノベーションを加速する日立のLumadaで展開されるソリューション・技術を活用し、各種データの一元管理が可能な統合データベースを中核として、マテリアルズ・インフォマティクス(以下、MI)をさらに加速するほか、研究者間で研究手法やノウハウを最大限利活用するためのサイバーフィジカルシステム(以下、CPS)を共同で構築する。これにより、新たな研究知見の獲得や迅速な新素材の研究探索を可能とするなど、研究開発のさらなる高度化・効率化を目指すという。 また、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の生活様式や企業活動が大きく変化する中で、ウィズコロナを前提としたニューノーマルの時代において求められる、デジタル化の潮流をとらえ、両社で、データ駆動型の研究開発の加速に向けた新たな枠組みを検討していくとのことだ。
出典元:プレスリリース
帝人では、気候変動対策やサーキュラーエコノミーの推進など素材の軽量化・省資源化のほか、革新的医療技術の創出に向けた医薬品技術と素材技術の融合といった新たな価値の創出をめざすなど、持続可能な開発目標SDGsと連動したイノベーション創出に向けた取り組みを進めているという。また、欧州市場をはじめとする海外市場への積極的な事業展開を図る中、今後さらに国際競争力を高めるために、先進のデジタル技術を活用して、研究者・組織間で知見・ノウハウを共有・体系化し、各実験装置から得られるさまざまなデータから新たな研究知見を獲得、価値創出へつなげるなど、革新的な研究開発を推進するためのDX実現をめざすとのことだ。

帝人と日立は、今回の協創開始に先立ち、日立のITコンサルタントとUXデザイナーにより、課題抽出や対策立案を行うワークショップを重ね、データ利活用とシステム基盤の導入に向けた検証を行ってきた。先行検証において、業務要件とシステム要件の両面から設計・構築を行い、データ収集効率の向上やMIによるさらなる研究開発の加速など、一定の効果を確認できたため、革新的な研究開発を推進するためのDX実現に向けたグランドデザインの検討を開始したという。

今回の協創では、本格的なMIの導入推進のほか、MIの加速に向けてベースとなる、研究者・組織間での研究手法や研究データ、ノウハウを共有・利活用するための統合データベースを中核に、DX加速のためのシステム基盤を構築する。具体的には、研究者や組織ごとに有する実験データなど各種データを収集し、データレイクの構築により統一的にデータベース上に蓄積するほか、これらのフィジカル空間から蓄積されたデータをサイバー空間で人工知能(以下、AI)などデジタル技術を用いて分析・知識化し、さらには高度な検索機能により、研究者間での研究手法や研究データの利活用を支援する、CPSを実現する。サイバー空間での分析結果をフィジカル空間へ再度フィードバックする循環を繰り返し行うことで、研究開発における新たな知見の獲得やさらなる高度化を図るシステム環境をめざすとのことだ。

■DX推進に向けて構築するシステムの特長

(1)統合データベースを中核とした、研究開発の業務プロセス変革を実現
研究者と技術の関連性を社内技術情報や社外の特許情報などのテキストデータをもとにテキストマイニングを用いて加工・抽出し、蓄積する。「誰が何を知っているのか」「どこにどんな業務の経験者やエキスパートがいるのか」といった、研究者と技術の関係性を可視化し、人的リソース情報を統合データベースで一元的に蓄積・検索できるため、業務の効率向上に寄与する。

また、実験データを管理する機能により、実験室や分析室など複数箇所で生成する実験データや実験条件などのメタデータの関係を紐付け、データを構造化し、統合的な実験データの解析を支援するほか、単語抽出AIを組み込むことで、特許公報から材料開発に必要なデータや図表データを自動で高精度に抽出することを可能にする。さらには、AIにより電子顕微鏡などの画像から素材の成り立ちなどを捉えられる形態指標を抽出する機能を提供し、データの意味付けや解釈の定量性をより高めることをめざすなど、MI実行のために不可欠となるデータ生成・整備を支援し、新素材の開発を加速する。

上位アプリケーションである日立の「材料開発ソリューション」と連動し、手軽な操作でAIなどを活用したデータの多角的な分析や三次元でのグラフィカルな可視化が可能な分析環境を提供するほか、MIの実績を有する日立のデータサイエンティストによりきめ細かな分析支援を行うことで、MIを用いた開発手法の確立や新素材の開発をさらに加速するとともに、素材開発に役立つデータの取り扱いに長けた人財の育成にも寄与する。

(2)研究者・組織間の情報共有・利活用を活性化
「R&Dポータルサイト」を新たに構築し、統合データベースに蓄積された情報や、各部署の技術・ノウハウを見える化することで、研究者と部署など、人や組織・技術の関係性を紐づけ、研究開発の効率向上、開発スピード向上につなげる。「R&Dポータルサイト」ではチャット機能を備え、研究者同士のコミュニケーションの活性化も期待できるほか、社内外の会議でのやり取り(音声データ)を、自動的にテキスト化する機能も取り込み、議事録など書き起こしにかかる時間を削減するなど、専用ポータルから迅速なノウハウ共有が可能となる。また、研究者がその研究活動で得た知識(暗黙知)を効率よく整理し、その知識を起点にした新たな着想を示唆するなど、統合データベースに記録された研究データをAIで分析し整理・着想をガイドする機能の検証を行い、研究成果のさまざまな分野での応用やさらなるイノベーションの加速を支援する。

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