■研究背景と目的
猫の運動器疾患、特に変形性関節症の発症率は加齢とともに増加し、日本の高齢猫では12歳以上で70%が発症していることが知られている。それら疾患・痛みの早期発見には、猫の行動変化を客観的かつ定量的に評価することが重要だが、猫の加齢に伴う身体活動の変化を定量的に評価した研究はこれまでになかったという。本研究では、猫の身体活動と睡眠の質を評価するための新しいツールとして、Plus Cycleの有用性を検証した。
■Plus Cycleの測定精度
これまでに多くの研究で使用されてきた研究用活動量計ActicalとPlus Cycleを同時に猫に装着し比較したところ、2つのデータには強い相関があり実際の猫の行動を正確に反映していたという。これらの結果から、Plus CycleはActicalと同等の精度で猫の身体活動を評価でき、治療効果の測定などにも利用できる可能性が示唆されたとのことだ。
■加齢に伴う猫の活動変化が明らかに
健康な猫61頭にPlus Cycleを装着して活動量・ジャンプ数を測定したところ、高い精度で身体活動を定量化し、活動状態と安静/睡眠状態を判別する上でも非常に精度が高いことが認められた。また、加齢に伴い活動量とジャンプ回数は有意に減少し、その一方で、安静/睡眠時間は有意に増加することが明らかとなった。
■ジャンプ回数が重要
運動器疾患に伴う身体活動の異常を検出するには、加齢による正常な変化を多面的に把握する必要がある。今回の研究において、ジャンプ回数も加齢に伴い有意に減少することが認められたことにより、運動器疾患の早期発見には、活動量変化に加えジャンプ回数も新たな指標として重要であることが明らかとなった。
■夜間の睡眠を評価することで、猫の「痛み」が見えてくる
猫は加齢に伴い睡眠時間が増加することが知られているが、今回の研究において、加齢に伴い「昼間」の睡眠時間は増加するが、「夜間」の睡眠時間の推移はほぼ一定であることが明らかとなった。ヒトや犬では痛みや様々な疾患で夜間の睡眠が阻害されることが知られており、今後、夜間の睡眠の質を定量的に評価することによって、猫の「痛み」や疾患が早期発見できる可能性が示唆されたという。
■結論
Plus Cycleは、猫の身体活動と睡眠の質を正確かつ客観的に評価できることが認められた。特にジャンプ回数や安静時・睡眠時間を測定することにより、猫の健康管理に活用できることが示された。