量子セキュアクラウド技術の確立に向け、NICTら4者が連携 

凸版印刷株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)、株式会社QunaSys及びISARA Corporation(以下、ISARA)は、高度な情報処理と安全なデータ流通/保管/利活用を可能とする量子セキュアクラウド技術の確立に向け4者連携を開始すると発表した。

量子コンピューティング技術とは、量子力学的な現象を持つ量子ビットを用いた計算処理技術であり、高い計算処理能力を有する次世代のコンピューティング技術として期待されている。

量子セキュアクラウド技術は量子暗号技術と秘密分散技術を融合し、データの安全な流通/保管/利活用を可能とするクラウド技術。量子セキュアクラウド技術の確立により、改ざん・解読が不可能な高いセキュリティ性を担保するだけでなく、例えば、医療、新素材、製造、金融分野で蓄積された個人情報や企業情報など秘匿性の高いデータの収集/分析/処理/利用を可能とする。
出典元:プレスリリース

■本連携の背景

近年、企業にとって、自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態時に、オフィスや工場、データセンターなどの経営資源の損害を最小限にとどめ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とすることは、重要課題になっている。また、昨今のデジタルシフトを受け、企業の重要な経営資源の一つである大容量の情報を安全に保管し、必要に応じて完全に復元することは欠くことのできない課題だ。しかし、予測不可能な自然・人為災害に対して、将来にわたって高いレジリエンスを保つことは技術的に限界があるため、情報を分散して安全に保管し、完全に復元できる超長期のセキュリティ性の高いクラウド技術が求められている。

一方、現在普及している暗号技術によって、現状の通信は安全に行うことができている。しかし、2030年に実用化が期待されている量子コンピューティング技術により、電子決済や各種個人情報の電子申請など高秘匿情報通信に用いられる暗号が解読される恐れがあり、セキュリティの強化が社会課題となっていくことから、今後は決して破られない暗号技術が求められる。

■4者の役割

・凸版印刷
ICカードの開発や製造事業を通し、暗号技術、認証技術及び不正アクセス防止技術など、ICカードのセキュリティ技術を培ってきた。このような知見を活かし、凸版印刷はICカードへの耐量子-公開鍵暗号の適用及び量子セキュアクラウド技術の利用拡大に向けた導入支援、秘匿性の高い情報の安全なバックアップやデータ流通サービス、ソリューションの提供など、量子コンピューティング時代における安全・安心な社会の実現に向けて取り組む。

・NICT
内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety5.0 実現化技術」の一環として、東京QKDネットワークなどを活用し、量子セキュアクラウド技術の研究を行っている。これまでに量子暗号、秘密分散及び次世代の耐量子-公開鍵認証基盤を搭載した、保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システム(Healthcare long-term integrity and confidentiality protection system、以下、H-LINCOS)を開発している。このような知見と経験を活かし、H-LINCOSやさらに高度な計算エンジンを搭載した量子セキュアクラウド技術の確立とその国際標準化を目指して取り組む。

・QunaSys
量子コンピューター向けアルゴリズム及び量子コンピューターを活用した量子化学計算ソフトウェア「QunaSys QamuyTM」の開発を通し、量子コンピューティング技術を培ってきた。このような知見と経験を活かし、QunaSysは量子セキュアクラウド技術を活用した材料開発のサービス提供を推進する。また、ユーザ視点で量子セキュアクラウド技術の構築に貢献する。

・ISARA
ISARAは、長年にわたるサイバーセキュリティ技術の蓄積をもとに、現在のコンピューティングエコシステムを量子の時代まで守り続ける、アジャイルな暗号技術と耐量子セキュリティソリューション事業の世界的リーダー。また、NICTと構築した「H-LINCOS」では、保健医療分野のための耐量子-公開鍵認証方式の開発を行った。これらの暗号実装技術と公開鍵認証技術をアジャイル方式で開発してきたノウハウを活かし、量子セキュアクラウド技術の国際標準化に準拠する耐量子セキュリティソリューション開発を目指す。

■具体的な連携内容

(1)量子セキュアクラウド技術の確立
システム設計や仕様検討、最新の量子暗号技術の実装、秘密分散技術を利用したバックアップやデータ保管の実装、耐量子-公開鍵暗号によるデジタル署名の開発などにより、データ保管/交換基盤及び耐量子-公開鍵認証基盤となる量子セキュアクラウド技術を確立する。

(2)量子セキュアクラウド技術の国際標準化の推進
NICTは戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、量子ICTフォーラム/量子鍵配送技術推進委員会やITU-T(国際電気通信連合/電気通信標準化部門)、ISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)やETSI(欧州電気通信標準化機関)等の国際標準化組織へ、2022年度までにネットワーク要件、ネットワークアーキテクチャ、ネットワークセキュリティ要件、及び鍵管理、量子暗号モジュールの評価・検定に関する提案を行い、国際標準化を推進していく。

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