現在、日本の要介護高齢者は659万人で、そのうち約380万人が在宅で介護サービスを利用しており、団塊世代が75歳以上となる2025年には、要介護高齢者数のさらなる増加が予測されている。今後、要介護高齢者の病気の悪化を防ぎながら、住み慣れた家で少しでも長く在宅生活を継続することは、高齢者自身のQOL向上だけでなく、国の財政面においても、非常に重要となる。一方で、IoT/ICT等のデジタル技術の介護現場への普及は遅れている。厚生労働省は、介護現場の生産性向上にむけて介護ロボットの導入促進を進めているが、その対象は介護施設が中心となり、在宅向けの導入は大きく遅れている状況にあるという。
パナソニックは、在宅介護の質向上による在宅生活の継続を目指し、要介護高齢者の生活を支えるケアマネジメントに、ICT・IoT・AI等のデジタル技術を用いた「デジタル・ケアマネジメント」を構築し、ケアマネジャー向けの「ケアプラン作成機能」と「IoTモニタリング機能」を開発。2019年度より、ケアマネジャー職能団体と共創し、実際のケアマネジメント業務で利用する実証に取り組んでいる。第1期実証は、国内初の取組みとして、2019年10月より宮崎県都城市において、要介護高齢者4名を対象に実施し、4事例全てにおいて「本人状態が改善傾向」という結果が得られたとのことだ。
宮崎県都城市では、宮崎県介護支援専門員協会 都城・北諸県支部との共創を継続し、新たに4名の対象者で2020年8月より実証を開始。また、新たな実証フィールドとして、東京都品川区を追加した。品川区介護支援専門員連絡協議会との共創で4名の対象者を選定し、2020年10月より実証に取り組んでいる。
現時点で、IoTモニタリング機能により、第1期からの累計実証対象者12名の延べ1,000日超の生活ログの蓄積を実現。これに、ケアマネジャーから収集した介護実践結果を掛け合わせることにより、ケアマネジメントAIの構築に不可欠な、高齢者の状態改善に寄与した質の高い介護事例を蓄積することが可能になるという。今後は、ケアマネジメントAIの構築を目指し、さらに他フィールドのケアマネジャー職能団体や自治体とも共創を行い、対象者数を拡充することで、継続的に提供価値を高めるアップデータブルなサービス展開を進めるとのことだ。