炎上トレンドについてまとめられた「ネット炎上レポート 2020年下期版」が公開

株式会社エルテスは、2020年下期の炎上トレンドについてまとめた、「ネット炎上レポート 2020年下期版」を2021年2月4日デジタルリスクラボにて発表した。

■炎上レポートの趣旨

エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開している。企業の広報やリスク管理を行う人に炎上事例の傾向を伝えることで、自社のレピュテーション保護を行ってほしいという想いを持ち、作成しているという。また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っている。

エルテスの定義するネット炎上
・前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
・定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指す。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となる。
・炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定している。

本レポートでは、外部環境の変化に合わせて、どのように炎上対象・炎上内容が変化していったのか“炎上対象”と“炎上要因”に分けて、考察している。

■炎上対象の変化

出典元:プレスリリース
図1は、2020年1月から12月のそれぞれの炎上対象を比率で整理したもの。2020年下期の大きな特徴は、以下の3つだ。
(1) 2020年上期と比較して、サービス業の炎上件数が低下
サービス業の企業を対象とする炎上件数は、上期と比べて半分近く落ち込んだ。その結果、2020年上期(1月~6月)には炎上全体の45.9%をサービス業が占めていたが、2020年下期では30.7%まで低下した。過去と比較すると、飲食店や小売店での炎上事例が減少している。ここから、新型コロナウイルスの感染拡大による営業自粛などが影響している可能性が推測されるという。

(2) 7月以降メーカーを対象とした炎上が増加し、下期のトレンドに
一方で、上期には全体の1割にも満たなかったメーカーを対象とした炎上が増加し、炎上比率の17%を占めている。特に11月はメーカーを炎上対象とする炎上が多く、全体比率の20%を超す結果となった。メーカーによる炎上要因を分析すると、マーケティング・コミュニケーションの内容への批判が約1/3を占め、その他企業のコンプライアンス問題への批判、製品の品質への批判も多く見られた。また、これらの批判に、新型コロナウイルスの関連するものはほとんど見られなかった。批判の引き金となったマーケティング・コミュニケーションやコンプライアンス問題の内容を1つ1つ確認。すると、情報公開時に、多様な観点からチェックを行っていれば、ミスコミュニケーションや製品不備が生じていることに気づける内容のものが散見されたという。このような炎上が発生している要因の一つとして、テレワークなど多様な働き方が導入され、社内の意思決定フローやコミュニケーションが十分に機能していない可能性も推測されるとのことだ。

(3) 10月~12月に個人・著名人を対象とした炎上が増加
2020年上期炎上レポートでは、新型コロナウイルスの感染拡大による企業活動の停滞を要因として、“企業・団体“の炎上比率が低下し、相対的に個人・著名人、マスメディアの炎上事例が多く散見されたと報告した。夏場炎上比率の低下傾向が見られたが、10月以降は個人・著名人の炎上比率が増加している。ただし10月に東京発着のGo To トラベルが解禁された秋から冬にかけては、経済活動が再開しつつある環境が影響しているのか、上期とは炎上要因が異なった。上期はメディアやSNSにおける政府の新型コロナウイルス対応への批判などが炎上の要因となる傾向が多かったが、10月以降はYouTuberやVTuberなどで新型コロナウイルスに関係ない過激な発言を含む不適切な言動があったとし、炎上する事例が増加している。背景には、コロナ渦における新たな収益の確保を目的としたプレイヤーの増加が影響していると考えられるとのことだ。

■炎上の火種

出典元:プレスリリース
図2は、炎上内容を比率で整理したもの。
(4) 10月~12月の情報漏えい/内部告発の増加
2020年1月以降、下火になりつつあった情報漏えい/内部告発による炎上比率は、8月以降増加している。10月以降3ヶ月連続で炎上比率の14%を超えている。炎上事例の内容を掘り下げていくと、外部からのサイバー攻撃だけでなく、記憶媒体の紛失・誤廃棄や、利用サービスの脆弱性による情報漏えいなどの事例が取り上げられた。今回、事件の対象となった企業は、日本を代表する上場企業が多く含まれていた。このような企業であっても、情報セキュリティの脆弱性を抱えているという事実は、日本経済が非常に大きなリスクを抱えているとも考えられるという。また、このような情報セキュリティインシデントが炎上につながるということは、企業レピュテーションにも大きな影響を与える要素だと再確認できる結果であったとも言い換えられるとのことだ。その他に、コロナ渦の特徴的な炎上内容として、「断ればネガティブな口コミを記載すると、Go To Eat不正利用を強要する事件」や「新型コロナウイルスの感染者を装って、飲食店を妨害する事件」などが確認された。このような事件の場合、事件を起こした個人の元所属企業が批判を受ける事例なども確認されており、従業員へのコンプライアンス意識の向上が企業のレピュテーションを守るためにも必要であると改めて認識させられる事例となったという。

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