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日本IBM、AIを活用した新たな材料の発見を体験できるWebアプリを公開

日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、AIを活用した新たな材料の発見(マテリアルズ・インフォマティクス)を体験できるWebアプリケーション「IBM Molecule Generation Experience」を公開した。対応言語は英語と日本語。
持続可能な未来を実現する方法の一つとして、世界的課題に対処できるような新たな材料の発見が求められている。例えば、二酸化炭素を速やかに吸着する、太陽光を損失なく電気に変換するといった性質を持つ新材料を作ることで、課題解決への一歩を進められるようになる。また、材料の性質は構成する分子の形で決まるが、分子の形はほぼ無限のパターンがあり材料開発に多大な時間がかかっている。そのため、AIを活用することにより、迅速かつ最適な材料を開発できるような技術への期待が高まっている。このように、マテリアルズ・インフォマティクスは、AIや最先端のデータ処理技術を活用して新規材料や代替材料を探索する技術として、開発コストの低減や開発期間の短縮を図ったり、革新的な素材の発見につながったりする可能性がある技術分野として大変注目されている。

今回公開した「IBM Molecule Generation Experience(以下、MolGX )」は、欲しい性質を持つ材料の分子形状を自動でデザインする無料のwebアプリケーションで、IBMリサーチのAI技術を部分的に提供している。一般ユーザー向きに作られた分かりやすいユーザーインターフェースや操作性により、高度なITスキルがなくても、AIの基本を学びながらマテリアルズ・インフォマティクスの最先端を体験できる。本webアプリケーションの背景にあるのは、「分子生成モデル」というAI技術で、これを用いた新材料の開発期間の短縮や、固定的な発想に縛られない革新的な新材料の開発が期待されているという。

具体的には、ツール内に事前準備された材料データをもとに、データの観察と選択、AIの学習、分子デザインという3ステップを実施することで、「水への溶けやすさ」「熱しやすさ」など欲しい化学的性質をもつ材料の分子形状をAIが自動でデザインしてくれる。

今回の取り組みは、IBMの研究開発部門であるIBM リサーチの東京基礎研究所において、材料開発の「生成モデル」という領域に注力して開発した技術の部分的な利用を、一般社会へ広く開放するもの。IBMは、世界中の研究所で行っている研究や広範な業界のトレンドに基づいて、今後5年間にテクノロジーがビジネスと社会を根本的に変革すると考えるテクノロジーについての予測「5 in 5(ファイブ・イン・ファイブ)」を毎年発表してきた。昨年10月に発表した最新の5 in 5では、より持続可能な未来を実現するために、新たな材料の発見を加速することに焦点を当て、持続可能性、気候変動への対応、責任ある生産の支援、健康の増進、クリーン・エネルギーの推進などの課題を取り上げている。MolGXを使用することで、これらの課題解決につながる可能性のある新材料を、誰もがAIとともにデザインすることができるとのことだ。
出典元:プレスリリース
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