九州大学ら、人工知能であらゆる疾患の治療薬を見つける方法を開発
2021/9/28
九州大学生体防御医学研究所の中山 敬一 主幹教授、米国ハーバードメディカルスクール・システム生物学部門の清水秀幸リサーチフェロー、北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所の澤 洋文 教授の研究グループは、疾患の原因となるタンパク質のアミノ酸配列のみから、そのタンパク質を狙った治療薬を見つけ出す方法を開発したと発表した。
本研究グループはこの問題を解決するため、タンパク質の立体構造を全く使わずに、より容易に入手できるタンパク質のアミノ酸配列のみから治療薬候補を高速に見つけ出す人工知能、LIGHTHOUSE(“灯台”の意)を開発。がんや感染症、生活習慣病といったさまざまな疾患の治療薬をLIGHTHOUSEに予測させ、その予測を実験で検証したところ、新たな抗がん剤や抗菌薬を見つけることができたという。さらに新型コロナウイルスについても、国内で深刻な感染状況を引き起こしているデルタ株を含め多くの変異株の治療に有望な化合物を見出したとのことだ。
■研究の背景と経緯
■研究の内容
次に、LIGHTHOUSEを使ってがんの悪性化に関わる酵素PPATと呼ばれるタンパク質を抑制する化合物を探索した。PPATをノックダウンするとさまざまながんの進行を食い止めることができることは知られているが、PPATの立体構造は未だ解明されておらず、PPATの阻害剤もないという。そこで、ZINCデータセットに登録されている10億近い化合物をLIGHTHOUSEを用いて探索し、発見した最も有望な化合物を調べることで、PPAT阻害活性がある化合物を見つけることに成功。PPATはあらゆるがんの悪性化に関わっていることを考えると、この化合物は多くのがん患者に有効である可能性があるとのことだ。
さらに、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の治療に有望な化合物をLIGHTHOUSEで予測し、エトキシゾラミドというすでに緑内障治療薬や利尿薬などとして承認されている化合物を見出した。ヒト培養細胞を用いた感染実験において、エトキシゾラミドは新型コロナウイルスの感染を抑え、元々の新型コロナウイルスだけでなくデルタ株を含めさまざまな変異ウイルスから細胞を保護する働きがあることを確かめたとのことだ。