NTTデータ、バチカン市国の16世紀の天文台「Gregorian Tower」を3Dデジタル化

株式会社NTTデータは、バチカン図書館と協力しバチカン市国の保有する希少な文化遺産を初めて3Dデジタル化したと発表した。

2014年から取り組むバチカン図書館保有の貴重な手書き文献の2Dデジタル化・公開に加え、今回デジタルアーカイブソリューション「AMLAD」を用いた事業で培った最新の3Dデジタル化技術を用いて、16世紀に建造された天文台「Gregorian Tower(またはTower of the Winds)」を3Dデジタル化している。精緻なデジタル化により、災害等による損傷のリスクにさらされる希少な文化遺産の情報を確実に保全し修復や研究に活用することに加え、XR技術と組み合わせた新たな鑑賞体験が実現できる。今回デジタル化された「Gregorian Tower」は2021年10月よりUAEドバイで開催されるExpo 2020 Dubaiで公開される。NTTデータは、これまでの2Dデジタル化技術に加え、最新の3Dデジタル化技術を活用し、「Gregorian Tower」をはじめとする世界の希少な文化遺産や美術品等の保全と、オンラインでの公開やXR技術を組み合わせた更なる活用を推進する。また今後、NTTグループのXR事業推進の動きと連携し、NTTのVR空間プラットフォーム「DOOR」等を活用したバーチャルミュージアム事業にも取り組むとのことだ。

■背景

NTTデータはこれまで、バチカン図書館、秋田県立図書館、高野山大学等の希少な歴史的蔵書を数多く保有する公共機関や企業の2Dのデジタルアーカイブ事業を支援している。さらに2020年には、ASEAN事務局が推進するASEAN諸国の貴重な歴史的文化遺産をデジタル化する「ASEAN Cultural Heritage Digital Archive(ACHDA)」プロジェクトにおいて、ASEAN地域全体の文化遺産を集約するデジタルアーカイブシステムを構築し一般公開している。このACHDAではNTTデータとして初めて3Dでのデジタル化を実現しているという。

マレーシア博物館局で保管される「BELT BUCKLE」
出典元:プレスリリース
バチカン図書館 ボッティチェッリの描いたダンテの『神曲』の挿絵
出典元:プレスリリース
バチカン図書館 世界で最も美しい聖書「ウルビーノ聖書」
出典元:プレスリリース
バチカン図書館とは2014年から、バチカン図書館が保有する貴重な手書き文献の長期保存・公開を目的とする、デジタルアーカイブソリューション「AMLAD(アムラッド)」を活用した事業に取り組んでいる。これまで、手書き文献等を対象とした2次元画像によるデジタルアーカイブに取り組んできたが、バチカン図書館とNTTデータは、この事業と並行してバチカン市国が保有する希少な文化遺産や建造物の3Dデジタル化による保全の検討も進めてきた。

今回、具体的な取り組みとして、歴史的建造物である「Gregorian Tower」の3Dスキャンを行い、デジタル化を成功させた。バチカン図書館と行うデジタルアーカイブ事業としては、初めての建造物の3Dスキャン・デジタル化となるとのことだ。

■Gregorian Towerについて

今回3Dデジタル化し公開する「Gregorian Tower」は、16世紀にローマ教皇グレゴリウス13世によって天文学の研究と暦の刷新の為に建築された。ここでの研究を通じ、それまで広く利用されていたユリウス暦が、現在もなお世界中で広く利用されているグレゴリウス暦へと改訂された。そのホールの天井や壁には豪華なフレスコ画の装飾が施されている。

「Gregorian Tower」外観
出典元:プレスリリース

■スキャニング・デジタル化作業

スキャニングは、3Dレーザースキャナー2台とデジタルカメラ1台を用い、3日間かけて丁寧に実施されたという。撮影枚数は合計で約600枚にも及び、非常にデリケートな空間かつ高さのある建物の中で、撮影のプロフェッショナルが光の当て方に気を配りながら作業を進めたとのことだ。

3Dスキャン・デジタル化作業の様子
出典元:プレスリリース

■公開用、長期保存用に加工作業

撮影したデータには、Expo 2020 Dubaiで展示するための最適化作業と、長期的に保存し様々な用途で活用するための加工をしている。ウェブサイトやバーチャルアプリケーションなどのプラットフォームで閲覧のできるデータを用意することに加えて、価値ある文化遺産の情報を未来に継承し学術的研究や修繕・修復作業へと活用していくことを目的としているという。また、Expo 2020 Dubaiでの展示においては、新型コロナウイルス感染症の影響で訪問者が身につけるタイプの装置(VRゴーグルなど)を使用することができないため、手の動きだけで3Dモデルの内部を自由に周遊し鑑賞できる環境を構築しているとのことだ。

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