バトンズ、ポストコロナ時代のM&Aプラットフォーム市場についてのレポートを公開

株式会社バトンズは、ポストコロナ時代のM&A市場について、レポートを発表した。

新型コロナウィルス感染症の拡大による「不況」一色だった小規模M&Aの世界でも、2022年に入ってポストコロナというべき傾向が顕著になってきたという。2021年第一四半期(1月~3月)でバトンズに登録した譲渡希望事業者は680者であったのに対し、2022年同四半期では1054者と1.5倍以上に増加している。しかし、その理由を分析すると、明確な変化を見て取ることができる。特に目に付くのが、2021年に主流だった経営不振の割合が51.6%から43.6%に大きく減少していることだ。
出典元:プレスリリース
このことから全体のトレンドとして、コロナ禍での緊急回避的M&Aから、ポストコロナ時代を見据えた事業戦略としてのM&Aに転換しつつある傾向を見てとることができるという。バトンズにおける実際のM&A事例からみた、ポストコロナのM&Aのトレンドは以下の通り。

・コロナ以後の受診控えから医療機関のM&Aが急増
帝国データバンクが2021年7月8日に発表した「急増するクリニックの廃業、過去最多ペースで推移 ― コロナ禍で長期化する受診控え、経営に大きな打撃」によれば、2021年1月〜6月までに累計267件の廃業が確認されており、過去最多ペースで推移している。この原因は外出自粛やテレワークの浸透に伴う医療経営の悪化が大きな要因だ。バトンズにおいてもこの傾向は非常に顕著になっているという。医療・介護業界における譲渡希望事業者は昨年と比較して4pt増加し、飲食・食品業界に次ぐ、第二位となった。殊に入院施設を持たないクリニック(無床診療所)の割合が35%から52%へと激増しており、新型コロナウィルス感染症拡大による患者減少の影響をもっとも大きく受けたことは明らかだ。コロナ後も抜本的な医療経営の改善見込みは立っておらず、この傾向が当面続くことが予想されるとのことだ。

・材料高、人件費上昇の影響が営業を再開した飲食店を直撃
飲食・食品業界の譲渡希望事業者は、全体の14%から20%に上昇し、業種単体としてはもっとも譲渡希望者が多い業種となった。引き続き売却を検討する経営者が増加を続けているが、細かく分析するとその傾向には大きな変化がみられるという。2021年には緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置による夜間営業の取りやめの影響を受け、業種全体の19%を占めていた居酒屋・バーが、2022年には約半分の10%に減少した。その一方全体的に2〜4pt幅広く増加しているのが、ラーメン店や自社ブランドの飲食店などである。この背景として原材料の高騰や、コロナ禍で一時的に従業員を減らしていた店舗が営業を再開したものの、人手不足や人件費の上昇により危機に陥っているという点が挙げられる。飲食・食品業界全体としてはまだまだ譲渡ニーズが落ち着くことはなさそうとのことだ。

バトンズ 2021年1〜3月と2022年1〜3月の業種別登録案件の月別推移比較表
出典元:プレスリリース
・女性経営者によるM&Aの増加
2021年11月2日の東京商工リサーチの発表によると、全国の女性社長が初めて50万人を突破し、女性社長率は初の14%超えを記録した。これに伴い、女性の多様な働き方や人生の選択肢を増やすためにM&Aが活用される例が、最近特に目立つようになっているという。これに関連して、買収のみならず、女性経営者が譲渡側となるケースが増えている点も注目に値するとのことだ。

・中小M&AにおいてもPMI(買収後の統合作業)が本格普及の兆し
M&A後の企業統合作業、つまりPMI(Post Merger Integration)は、M&A成功の最も大事な要素であるとされているにもかかわらず、その実施は大企業に限られ、従来中小企業でほとんど実施していないとされていたという。しかし、近年中小、特に小規模事業者におけるM&Aの普及により、その重要性は改めて認識されることとなり、2022年3月17日には中小企業庁は中小M&AでPMIを実施する際の指標である「中小PMIガイドライン」を策定、併せて「中小PMI支援メニュー」としてその普及のための体制の整備に乗り出した。

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