■カオスマップ作成の背景
「ゲーミフィケーション」の概念は、2010年頃に欧米を中心に広まり、日本でも一時期盛り上がりをみせた。2020年以降、DXや顧客体験がビジネスで重要視される昨今の時世もあり、有用性が再認識されている。アメリカの調査会社Report Oceanの調査によると世界のゲーミフィケーションの市場全体は、2027年には350億米ドルに達すると予測されているという。海外では、オンラインフィットネスサービスを展開するiFitsが2021年に200億円の資金調達を行うほか、国内においても、バーチャルトラベルプラットフォーム開発・運営会社のANA NEO株式会社が45億円の調達に成功するなど、昨今トレンドになっているビジネスの分野でもサービスにゲーミフィケーションを活用しているものが多く、多額の資金調達に成功している。
このように、「ゲーミフィケーション」の概念が持つ、ゲームやエンタテインメントにおける人を能動的にさせる仕組みは、マーケティングやプロモーション領域はもちろんのこと、新規事業や新サービス、人材育成やマネジメント、社会課題など業界業種問わず幅広い分野での活用が期待されるようになってきた。定性的な部分では、世界的なマーケティングアワードである「カンヌライオンズ」における受賞作のうち、「ゲーム」や「ゲーミフィケーション」の構成要素が増加傾向にあり、今や「ゲーミフィケーション」は世界のビジネスシーンにおいて、改めて新潮流の1つになりつつあるとのことだ。
そこで、同社は日本のビジネスパーソンに広く「ゲーミフィケーション」の有用性を認識させ、「ゲーミフィケーション業界」の存在を知ってほしいと考え、本委員会の事務局を担当して、「国内ゲーミフィケーション業界カオスマップ 2022年度版」を委員会メンバーと作成し、今回公開したとのことだ。
■カオスマップ作成の趣旨
本委員会では、作成したカオスマップで市場理解を深め、掲載事業者との取引や協業コラボレーション等により、更に多くの日本の事業者がゲーミフィケーションを活用することを目指している。それにより、VUCA時代を生き抜く日本の事業者が自社やサービスの成長促進およびその先の顧客への価値貢献がより一層できるようになることや、SDGsを含む社会テーマにおける課題解決の一助になるよう議論を重ねてきた。「国内ゲーミフィケーション業界カオスマップ 2022年度版」では、国内のゲーミフィケーション事業者、計206社を選定し、13のカテゴリーに分類した。
■カオスマップにおけるゲーミフィケーションの定義
日本ゲーミフィケーション協会の定義「『ゲーム要素』を活用して(ゲーム外の)やる気を高めるもの」を踏襲した。補足としてガートナーの定義「ゲームのメカニズムを非ゲーム的な分野に応用することで、ユーザーのモチベーションを高めたり、その行動に影響を及ぼしたりする幅広いトレンド」も含意して検討を進めた。更に目的に沿ってゲーミファイやシリアスゲームなど狭義の定義ではゲーミフィケーションと区別されるものについても上の定義に従ってゲーム外の領域に貢献するものについては本カオスマップへ加えているとのことだ。
■カテゴリー分類
まずは法人間で取引する企業「BtoB」と最終的に生活者やエンドユーザーにサービスを提供する事業者「BtoBtoC、BtoC」と二分割した。そこから同じカテゴリーの中でも提供するサービスの特性や業界ごとにセグメントしている。
・BtoBソリューション
<業務支援/ゲーミフィケーションツール>
受発注にて、人事や営業などの業務支援や、ゲーミフィケーションを簡単に実装できるデジタルツールや支援ソリューションを保有している事業者
<体験型研修>
企業研修でゲーミフィケーションを活かした学習コンテンツをユーザー体験型で提供する事業者
<専門知識型研修>
企業研修でゲーミフィケーションを活かした専門職種や難易度の高い知識向けの学習コンテンツを提供する事業者
<コミュニケーション/自己啓発研修>
企業研修でゲーミフィケーションを活かしたコミュニケーションや自己啓発に資する学習コンテンツを提供する事業者
・BtoB受託
<コンサルティング>
ゲーミフィケーションを企業課題に合わせて設計するコンサルティングやゲーミフィケーションそのもののインプットなどをクライアント企業へ行う事業者
<受託開発/DX含む>
受発注にて、ゲーミフィケーションに関する、あるいはゲーミフィケーションを活かした受託開発を行う事業者
・BtoBtoC、BtoC
<ヘルスケア>
ヘルスケア(健康・医療)テーマにおいてゲーミフィケーションを活かしたソリューションやサービスを提供する事業者
<リテール>
リテール(小売・流通)テーマにおいてゲーミフィケーションを活かしたソリューションやサービスを提供する事業者
<SDGs/ESG全般>
SDGsやESGテーマ全般においてゲーミフィケーションを活かしたソリューションやサービスを提供する事業者
<防災>
防災テーマにおいてゲーミフィケーションを活かしたソリューションやサービスを提供する事業者
<学校教育>
学校教育や学生個人へゲーミフィケーションを活かした学習コンテンツを提供する事業者
<生涯学習>
未就学児以外の個人へゲーミフィケーションを活かした学習コンテンツを提供する事業者
<幼児教育>
未就学児を対象にしたゲーミフィケーションを活かした学習コンテンツを提供する事業者
本カオスマップでは、委員会で独自に作成した3点の基準を満たす事業者のみを掲載しているとのことだ。
・日本国内に本社がある事業者であること
・ゲーミフィケーションの上記カテゴリーに分類できるソリューションやサービスをホームページ上に価格と共に記載しているまたは本委員会が有償で提供していることを事実確認できている事業者であること
・本委員会メンバーから本カオスマップの趣旨から疑義がでない事業者であること