LinkedIn、「TOP STARTUPS 2022年版」を発表

ビジネス特化型ソーシャルネットワーキングサービスのLinkedInは、勢いのあるスタートアップをデータから明らかにする「TOP STARTUPS(トップスタートアップ) 2022年版」の上位10社を発表した。本調査は、日本を含む34ヵ国と地域で実施され、国内では4回目となる。

今年の調査は、長引くコロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、広範囲にわたるインフレといった不安定な経済状況を背景に世界的な景気後退懸念が広がる中で行われた。このような厳しい事業環境下にあって、イノベーションを起こし続けている日本のスタートアップ上位10社は以下の通り。

1.アセントロボティクス
AI(人工知能)や機械学習を活かしたロボットピッキングシステム「Ascent Pick」などを開発。「プレイステーション」の開発を指揮した元ソニー・コンピュータエンタテインメント会長の久夛良木健氏が2020年9月からCEOを務める。

2.Rapyuta Robotics(ラピュタロボティクス)
複数ロボットをクラウド上で協働・連携させるプラットフォームと、そこで稼働するピッキングアシストロボット (AMR) による「サービスとしてのロボット」を、 RaaSソリューションとして開発・提供する。2022年6月には導入後の生産性に応じて利用料が変動する成果連動型の料金体系を導入。

3.Synspective(シンスペクティブ)
昼夜を問わず地表面を観測可能な小型のSAR衛星を開発・運用し、その観測データによる自然災害の被害解析や洋上風力発電に必要とされる遠洋海面付近の風力測定など各種ソリューションを提供。2022年9月には3機目となる実証商用機StriX-1の打ち上げに成功。

4.Telexistence(テレイグジスタンス)
「人間の存在を拡張する技術システム」としてのロボットのハードウェア、ソフトウェア、AI、遠隔操作の技術を自社で開発している。今年8月からは、商品陳列を行う人工知能ロボット「TX SCARA」の量産を開始し、ファミリーマート300店舗へ順次導入予定。

5.DeepX(ディープエックス)
ディープラーニング (深層学習) AIを駆使して、あらゆる機械の自動化を目指す。土木や食品加工、農産など、自動化需要が高まる領域において深層学習イノベーションを支援する。NVIDIA Inception Programの認定パートナー企業として、NVIDIA社の最新ハードウェアなど、AI製品開発を促進する支援を受けている。

6.キャディ
多品目の部品調達が必要な製造業の現場において、発注者へ短時間で見積もりを提供し、受注候補の企業へとつなぐプラットフォーム「CADDi」を開発・運営する。煩雑な調達業務から顧客企業を解放すると同時に、積極的にパートナー工場を支援することによって「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」ことをミッションとしている。

7.Zeals(ジールス)
AIチャットボットと緻密なコミュニケーションデザインで、人間同様の温かみある接客体験を実現するチャットコマース「ジールス」を開発・提供する。国内では400社以上での導入実績があり、2022年9月にはアメリカに法人を設立。日本の「おもてなし」を海外に広げていく。

8.10X(テンエックス)
小売チェーンのオンライン事業立ち上げと運営を支援するプラットフォーム、「ステイラー」を開発・運営する。消費者にスムーズな購買体験を提供するだけでなく、在庫管理やオペレーション改善など事業者側のDX化推進もサポート。イトーヨーカ堂をはじめ、大手小売チェーンでの導入が進んでいる。

9.Shippio(シッピオ)
デジタルフォワーダーとして、国際物流に関わる業務をクラウド一元管理で可視化・効率化するサービスを提供。アナログ主体だった貿易業務の大幅な負担軽減を実現している。不安定な現下の国際情勢において物流の安定稼働に貢献することを目指す。

10.ZAIKO(ザイコ)
クリエイターとファンが直接繋がれるプラットフォーム「ZAIKO」を軸に、デジタルイベントの開催や動画配信、NFTマーケットプレイスなどの製品・サービスを提供する。多様性を重視するカルチャーで、国籍をはじめ様々なバックグラウンドを持つ社員が顔を揃える。
出典元:プレスリリース
・今年の日本のランキングに見られる傾向
本調査では、昨年のランキングから2社が上位10社に再ランクインした。上位10社の特徴として、(1)人工知能(AI)技術を事業に完全に実装していること、(2)複雑な業務のデジタル・トランスフォメーション(DX)を支援するサービスを提供していること、(3)コロナ禍を経て新たに生まれた消費行動をビジネスとして的確に捉えていること、の3点が挙げられるとのことだ。

(1)人工知能(AI)技術を事業に完全実装
AI技術を武器にするスタートアップは年々増えているが、上位にランクインしたスタートアップは、AI技術を事業に完全に実装し、その活用の裾野を広げている。今回のランキング1位のアセントロボティクス、2位のRapyuta Robotics(ラピュタロボティクス)、4位のTelexistence(テレイグジスタンス)、5位のDeepX(ディープエックス)はそれぞれ製造や物流、小売や建設の分野で従業員をアシストするロボットを開発・製造するといった、AIを使って働く人の身体的な労働負担を軽減する製品やサービスを提供している。3位のSynspective(シンスペクティブ)は衛星を使った地表解析で、土地の測量や地盤を分析するサービスを提供しており、昨今の人材不足を解決するソリューションに需要が高まっていることがわかる。

(2)社内外の複雑な業務のDXを支援するサービス
複雑な業務のデジタル・トランスフォメーション(DX)を支援するスタートアップ2社がランクインした。6位のキャディは製造業の部品調達を支援するプラットフォームを提供、9位のShippio(シッピオ)は国際物流に関わる実務のデジタル化を支援し、煩雑な貿易業務を効率化するサービスを提供している。両社は、社内業務のIT化・自動化だけでなく、社外を含めた業務プロセスの変革を指すDXの推進という課題解決をサポートしている。

(3)コロナ禍を経て新たに生まれた消費行動を捉えたビジネス
コロナ禍が始まってこの数年で定着した生活の新様式、「ステイホーム」や「非接触」を実現するスタートアップがランクインしている。7位のZeals(ジールス)はチャットボットによる質の高い接客を、8位の10X(テンエックス)はオンラインでも実店舗と変わらない購買体験を可能にするための製品・サービス、10位のZAIKO(ザイコ)はデジタルイベントやライブ配信のプラットフォームを提供している。

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