JR東日本、AIを活用した信号設備の復旧支援システムを開発し首都圏に導入開始
2022/11/9
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、輸送障害の発生時にAIを活用し、設備の状態確認を実施すべき箇所や原因の絞り込みを行う復旧支援システムを開発し、首都圏に導入を開始すると発表した。
鉄道の信号設備は、線路沿線に設備された多くの機器が組み合わされたシステムとなっている。自然災害や設備故障に伴う輸送障害が発生した際は、早期に運転再開を図るために、技術者のノウハウをもとに、マニュアルに定められた手順に従って装置1つ1つの状態を確認しながら確実に原因を絞り込み、復旧作業を進める。輸送障害の発生原因によっては、係員が多くの箇所のデータを測定する必要のあるケースもあり、この場合、原因の特定に時間がかかり運転再開まで時間を要することがあるとのことだ。
今回、現地係員を指揮する指令員が、早期に障害原因の特定や復旧方法を指示できるよう、データベースに蓄積している過去の輸送障害に関する情報に基づき、AIを活用した復旧支援システムを開発した。このシステムは、障害の発生状況の時系列を入力することで、AIにより、過去のデータベースの中から類似する事例を抽出し、障害の原因や復旧方法の提案を行う。これまで行っていた技術者のノウハウやマニュアルによる復旧方法に比べ、AIの提案により調査箇所や原因の絞り込みが可能となるため、調査時間の短縮が図れる。技術者が経験を積むことが難しい発生頻度の低い事象についても、AIにより障害の原因や復旧方法の提案ができる特徴があるため、長時間の輸送障害削減が期待できるという。このシステムを活用してシミュレーションを実施したところ、復旧に約2時間要した事象に対して、1時間程度まで復旧時間の短縮ができる結果が得られるなど、約50%程度の復旧時間削減を見込んでいるとのことだ。
・デジタル技術(MR)を活用したゴーグルの導入
輸送障害が発生した際に係員が早期に復旧するため、係員のスキル向上としてMR(Mixed Reality)技術を使用したゴーグルによる復旧手順の習得訓練や現地映像を活用した遠隔復旧支援など、輸送安定性の向上に向けた取り組みを進める。また、本ゴーグルは、工事完成時の検査において現地確認を実施する際に使用し、業務変革にも活用しており、現在、電気関係職場に100台配備されているとのことだ。