Today's PICK UP

自動運転タクシーの仕組みとは?導入するメリットや今後の課題も説明

自動運転の技術が導入されるのは自家用車だけではありません。ゆくゆくは自動運転のタクシーが街を走り回る日が来るはずです。自動運転タクシーの仕組みについて触れつつ、タクシーに自動運転を取り入れるメリットや今後の課題を解説します。
自家用車だけではなく、タクシーにも自動運転の技術が使われようとしています。では、どうして将来タクシーが自動運転になるのでしょうか? 自動運転タクシーが求められる背景や、導入するメリットについて説明します。また、実施されている実証実験の現在地についても解説します。

自動運転タクシーの仕組みとは?

ひと昔前は、ナビさえ搭載されておらず、ドライバーの経験と知識で営業していたタクシーですが、現在はナビやタブレットなど、さまざまな機器が車内に取り付けられています。今後はさらに進化し、自動運転タクシーも登場すると見られていますが、いったいどんな仕組みで運行が行われるのでしょうか?

高度なマッピング機能を取り入れる

道を熟知しているドライバーが乗車しない代わりに、自動運転タクシーでは運行する際に、走行エリアとなる運行設計領域(ODD)内をくまなくマッピングして高精度な地図を作成します。また走行時には、このマップと車載カメラなどのセンサーが取得したデータを照合することで、自車の位置を把握するほか、インフラからV2I(路車間協調システム)によってさまざまな交通情報・データなどを取得し、リアルタイムでデータ解析しながら運行します。

データ分析によっては効率的なタクシー運用が可能に

現在、運行しているタクシーも、お客さんをどこで拾うのか、どこで待っていれば、効率よく利用者を探すことができるのかなど、顧客に関する情報はドライバーそれぞれの経験値や勘に頼っていました。しかし、自動運転タクシーでは過去の乗客データはもちろん、イベント情報や商業施設の集客データ、駅の乗降データ、その日の天気予報など、膨大なデータベースにアクセスしたり、AIで学習することによって、経験や勘に頼らないデータに基づいた効率的な運行を実現できる可能性があります。

自動運転タクシーを導入するメリット

では、自動運転タクシーを導入することはどんなメリットがあるのでしょうか? 

交通渋滞の改善につながる

ベテランのドライバーであれば、経験に基づいて、最短ルートや、その日の道路状況に応じて、走行することができますが、すべてのタクシーが自動運転によって効率的な経路を探しながら、運行することになれば、渋滞を避けるようにタクシーが走行し、街の交通渋滞も大きく減少することが期待されます。

環境負荷を低減させられる

自動運転タクシーは交通情報や渋滞情報、リアルタイムの混雑状況などのデータを受信しながら、走行し、さらに自動運転タクシー同士が通信することで、混雑を避けた効率的なルートで走行することが可能となります。効率的な運転ができるようになれば、渋滞が減り、さらに排出されるCO2なども減るため、環境への負荷も低減させられるはずです。

交通弱者のサポートを行える

自動運転の車両は常にセンサーやカメラ、GPS、5G通信などを駆使しながら、安全な走行を行います。人間による運転よりも危険回避性能がアップすることによって、交通弱者をサポートできるようになります。

ドライバー不足の解消につながる

タクシー業界では慢性的なドライバー不足に悩まされています。以前は収入が安定していたタクシー運転手ですが、長時間労働の割りに、所得が低く、人材難になっています。自動運転タクシーなら、ドライバーを用意する必要がなく、必然的にドライバー不足が解消します。

人件費の削減ができる

ドライバーに支払う人件費が削減されるため、その分のコストを削減できるようになります。少ない人材で営業ができるようになり、経営状態が改善されます。

自動運転技術が向上することで快適に仕事ができる

自動運転技術が向上によって、仕事の負担が大幅に軽減できるため、心身ともに負担がかかりにくい働き方が実現できます。

自動運転タクシーでタクシードライバーの仕事がなくなる?

自動運転タクシーが本格的に導入されると、タクシードライバーの仕事がなくなってしまうのではないかと、危機感を抱いている現役ドライバーもいます。自動運転タクシーが導入されると、すべてのタクシードライバーが失業してしまうのでしょうか? むしろ有人タクシーと無人の自動運転タクシーとの棲み分けができるという意見もあります。

完全自動運転が実現するまではドライバーが必須

現在、自動運転レベルは3まで到達していますが、高速道路の走行中など、一定の条件下での自動運転に限られています。人が乗車しない完全な自動運転のレベル5の実現にはまだ時間がかかります。それまでは自動運転によるサポートがあったとしても、必ず補助者としてタクシーにドライバーが乗車しなければならないといった制限がつくことが予想されます。したがって、当面の間は、ドライバーが必須になるはずです。

接客サービスとしてタクシードライバーは必要

また通常のタクシーに加えて、有人のタクシーサービスのニーズも高まると考えられます。高齢者のサポートや、移動中の会話など、人間にしかできないサービスを求めるニーズは必ずあるはずです。

自動運転タクシーを実現する際の課題とは?

自動運転タクシーの実現までには、どんな課題が考えられるでしょうか? 指摘されている課題を取り上げます。

自動運転機能のさらなる向上

センサーやカメラで周囲の危険を察知しながら、安全に運行する能力は強化されていますが、現在のシステムでは最適な経路を選んで目的地まで到達させる機能が未熟だと言われています。電車やバスと違い、タクシーは目的地まで直接アクセスする点が評価されているため、経路検索が不十分であれば、乗客の不満は募ってしまいます。また小さな子どもから高齢者まで幅広い層の人々を安全に運ぶためのシステムづくりが求められています。

事故が発生したときの責任の所在

自家用車での自動運転でも責任の所在は議論の的でしたが、タクシーの場合、乗客を運ぶサービスのため、事故が発生した時の責任の所在はよりシビアに考える必要があります。どのような事故が発生するリスクがあるのか、事故が発生した場合の責任は誰にあるのか、責任の所在だけではなく補償の仕組みなど、整えておくべき課題がたくさん残されています。

完全自動運転が可能になるインフラ整備

完全な自動運転を実現するには、インフラの整備も欠かせません。たとえば自動運転車両が通行しやすい道路や標識を開発したり、膨大なデータをタイムラグなしで受信できる5G環境の整備も必要です。5Gの通信サービスがはじまったものの、極めて限定的なエリアでしか利用できず、行動範囲の広いタクシーで活用するにはまだカバー範囲が狭すぎます。

各種法律の整備

レベル3の自動運転を公道で走行させるために、道路交通法や道路運送車両法が改正されましたが、タクシーの自動運転ではレベル5を想定しています。そのためレベル5にあわせた法整備も必要です。

セキュリティリスクへの備え

あらゆる通信機器・デバイスがセキュリティへのリスクを抱えていますが、自動運転のタクシーも同様です。ネットワークとつなげることで、安全な走行が可能になりますが、もしシステムがハッキングされると、暴走や衝突など深刻な事故が起こってしまうかもしれません。いかにして通信のセキュリティを高めていくのかも重大なテーマです。

海外では自動タクシーの実用化が目前

海外では自動運転タクシーの実証実験が盛んに行われていますが、Google系のWaymo(ウェイモ)が有料の商用サービスである「ウェイモワン」を2018年12月から実施しています。まだ安全の確保のため、セーフティドライバーが同乗しての運行となっていますが、将来的には完全な自動化も視野に入れています。そのほか自動車部品の大手であるAptiv(アプティブ)と配車大手のLyft(リフト)の共同による自動運転タクシーの実証実験も行われています。フランスではハンドルやブレーキのない6人乗りの車両を使った、Navyaによる完全自動運転のタクシーAUTONOM CAB(オートノムキャブ)も開発されています。

中国でも、2019年ごろから公道での実証実験が本格化しており、IT大手の百度(バイドゥ)や配車サービス大手のDidi Chuxing、スタートアップ系のWeRide、Pony.ai、AutoX、Mementaなど多くのプレイヤーが参入しており、実用化が目の前に迫ってきています。

日本でも自動運転タクシーの実証実験をしている

日本でも自動運転タクシーの実証実験は各地で盛んに行われています。代表的な例をいくつかご紹介します。

トヨタ自動車の「JPN TAXI」

ティアフォー、JapanTaxi、損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーの5社は、将来の自動運転タクシーの事業化に向けて、トヨタ自動車のタクシー車両「JPN TAXI」に自動運転システムを設定し、配車アプリや地図データ、サポートセンターを含むサービス実証実験を共同で実施しています。

「ZMP」も実証実験を進めている

ロボットベンチャーのZMPは日の丸交通と遠隔型自動運転システムの公道実験や、2018年8月には、世界初となる自動運転タクシーによる公道での営業サービスの実証実験も行われました。東京都内の大手町と六本木を結ぶ5.3キロ間で実施され、ICT技術を活用して、タクシー需要が多い都市部路線におけるドライバー不足解消といった検証でした。

自動運転タクシーの普及状況を知っておこう

人材不足を背景にタクシー業界にも自動運転の波が押し寄せています。ドライバーなしで走行できるレベル5相当の技術が搭載されれば、タクシー料金も安くなることが予想されるため、利用者によってもメリットが大きいと言えます。自動運転タクシーの普及状況を注視しておきましょう。

人気記事

TVer 取締役とテレ東名物Pが語る、テレビと配信の未来【前編】 YouTubeもNetflixも、テレビの敵ではない?

TVer 取締役とテレ東名物Pが語る、テレビと配信の未来【前編】 YouTubeもNetflixも、テレビの敵ではない?

テレビが「お茶の間の王様」とされていたのも今は昔。2021年5月にNHK放送文化研究所が発表した「10代、20代の半数がほぼテレビを見ない」という調査結果は大きな話題を呼びました。そんなテレビの今を「中の人」たちはどのように受け止めているのでしょうか。そこでお話を伺うのが、民放公式テレビポータル「TVer」の取締役事業本部長である蜷川 新治郎氏とテレビ東京のクリエイティブプロデューサーを務める伊藤 隆行氏。前編では、コネクテッドTVの登場によって起きた変化や、YouTubeやNetflixといった競合コンテンツとの向き合い方についてお届けします。

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

テクノロジーの力で子育てを変えていく。そんなミッションを掲げ、泣き声診断アプリや赤ちゃん向けスマートベッドライトなど、画期的なプロダクトを世に送り出してきたファーストアセント社。「CES2021 Innovation Awards」を受賞するなど、世界的に注目を集めるベビーテック企業である同社の強さの秘密とは。服部 伴之代表にお話を伺いました。

なぜ日本企業のDXはうまくいかないのか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO 石角友愛氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授が、要因を徹底解説

なぜ日本企業のDXはうまくいかないのか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO 石角友愛氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授が、要因を徹底解説

緊急事態宣言の度重なる延長、オリンピック開催是非の議論と、依然混沌とした状況が続く日本とは裏腹に、シリコンバレーではワクチンの複数回摂取が進み、市民がマスクなしで屋外を出歩く風景が見られ始めているそうです。コロナ禍と呼ばれる約1年半の間、アメリカのメガテック企業、ベンチャー企業はどのような進化を遂げたのか。DXを迫られる日本企業は何を学ぶべきなのか。『いまこそ知りたいDX戦略』、『“経験ゼロ”から始めるAI時代の新キャリアデザイン』の著者であり、パロアルトインサイトCEO、AIビジネスデザイナーの石角友愛さんをゲストに迎え、立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

「銀行は将来、もはや銀行である必要がない」デジタル時代の金融に求められるものとは。SMBCグループ谷崎CDIO×東大・松尾教授×デジタルホールディングス 鉢嶺

「銀行は将来、もはや銀行である必要がない」デジタル時代の金融に求められるものとは。SMBCグループ谷崎CDIO×東大・松尾教授×デジタルホールディングス 鉢嶺

コロナ禍を経て、全世界のあらゆる産業においてその必要性がますます高まっているDX。DXとは、単なるITツールの活用ではなく、ビジネスそのものを変革することであり、産業構造をも変えていくほどの力と可能性があります。そして、全ての日本企業が、環境の変化を的確に捉え、業界の枠を超え、積極的に自らを変革していく必要があります。 今回は、AIの第一人者であり東京大学大学院教授である松尾 豊氏にご協力いただき、デジタルホールディングス代表取締役会長 鉢嶺 登氏と共に、金融業界大手の中でいち早くデジタル化に着手した三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)の谷崎 勝教CDIO(Chief Digital Innovation Officer)にお話を伺います。DXの必要性を社内でどう伝え、どのように人材育成を進めてきたのか、また金融・銀行業界はDXによってどう変わっていくのか。デジタルならではのメリットとは。SMBCグループの取り組みに迫ります。

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタルネイティブ企業が金融業に参入し、キャッシュレス化が加速するなか、アコムが描く未来戦略とは

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタルネイティブ企業が金融業に参入し、キャッシュレス化が加速するなか、アコムが描く未来戦略とは

2021年6月23日開催のアコム株式会社の株主総会および総会終了後の取締役会において、木下政孝氏が新社長に就任しました。1993年に業界で初めて自動契約機「むじんくん」を導入し、2016年に「イノベーション企画室」を設立するなど、金融業界でも積極的に新しい取り組みやデジタルシフトを推進してきたアコム。新社長である木下氏は今どんな想いで会社のトップに立つのか。激動のコロナ禍を経た上で見えた、デジタルでは担えない、人の役割とは何なのか。立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

Clubhouseをはじめ、新勢力が次々と参入し、拡大を見せる音声コンテンツ市場。その中で、民放開始から70年の歴史に「大変革」を巻き起こしているのが“ラジオ”です。放送エリアの壁を取り払う、リアルタイムでなくても番組を聴けるようにするといった機能で、ラジオをデジタル時代に即したサービスに生まれ変わらせたのは、PCやスマートフォンなどで番組を配信する『radiko(ラジコ)』。今回は、株式会社radiko 代表取締役社長の青木 貴博氏に、現在までのデジタルシフトの歩みと将来の展望について、お話を伺いました。

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

国内でMaaS(Mobility as a Service)実証が活発化している。新たな交通社会を見据え、既存の交通サービスの在り方を見直す変革の時期を迎えているのだ。 交通社会は今後どのように変わっていくのか。MaaSの基礎知識について解説した上で、海外のMaaSに関する事例を参照し、その変化の方向性を探っていこう。

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタル時代においても求められる「お客さま第一義」とは何か

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタル時代においても求められる「お客さま第一義」とは何か

2021年6月23日開催のアコム株式会社の株主総会および総会終了後の取締役会において、木下政孝氏が新社長に就任しました。1993年に業界で初めて自動契約機「むじんくん」を導入し、2016年に「イノベーション企画室」を設立するなど、金融業界でも積極的に新しい取り組みやデジタルシフトを推進してきたアコム。新社長である木下氏は今どんな想いで会社のトップに立つのか。激動のコロナ禍を経た上で見えた、デジタルでは担えない、人の役割とは何なのか。立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてのfacebookやTwitter、現在ではUberがその代表と言われている。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は欧米を中心に注目されている「代替肉」を扱う「インポッシブル・フーズ」を紹介する。