デジタルシフト未来マガジン〜フィンテック系ユニコーン企業 後払い決済「Affirm」〜

AIやIoT、VR/ARといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどです。「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介していきます。
今回は、フィンテック系では後発ながら”後払い”に特化し、ユニコーン企業に急成長した決済サービスの「Affirm」です。Affirmは連続起業家のマーク・レブチン氏が立ち上げた企業で、2016年には、モルガン・スタンレーが1億ドルを投資するなど注目を集めています。

Affirmは、決済の中でも、後払い決済や分割支払いに特化しており、日本でも進みつつある、金融(finance)とテクノロジー(technology)を掛け合わせた「フィンテック(fintech)」の領域です。日本でもZOZOの「ツケ払い」など話題になりましたが、金融サービス自体がマーケティング訴求そのものになり得る、発想の転換を迫られる良い事例だと思います。

・【概要】Affirmのビジネス

「Affirm」は、2012年に創業した決済サービスを提供する企業です。累計で10億ドルの資金調達を実施済みで、2018年の累計貸し出し(分割払いの残高)は20億ドルにのぼります。

Affirmは、後払い決済や分割支払いに特化しており、消費者は購入金額を、3カ月〜12カ月の中で希望の支払い期間で返済することができます。Affirmでは即時に消費者の与信力調査が行われますが、この調査から算出したリスクに応じて金利は変動します。また、導入企業には1営業日で入金され、ユーザーは分割支払いができ、導入企業はキャッシュフローを改善できるサービスになっています。

Affirmのユーザーが商品を購入する際、金額・返済期間・信用力スコアに応じて手数料を算出します。250ドル以下の低額商品の場合は0%で分割払いが利用できる場合もありますが、1,000ドル以上の高額商品で返済期間が12ヶ月以上の場合は金利が発生します。

また、Affirmをサイトに導入する際、ECカートが対応していればコーディング不要で簡単に実装でき、企業側が導入しやすいことも特徴です。

・“デジタルシフト”なポイント

Affirmのポイントは、BtoBサービスとしての「営業マーケティング手法」にあります。導入企業側のメリットを打ち出すことで、企業側がユーザーにAffirmの使用を促してくれるのです。導入企業からすれば、Affirmは、単なる決済手法としてだけではなく、マーケティングにも利用価値があるのです。Affirmが手がける手法は大きくは3つ、「企業の活用法」、「キャンペーン」、そして「パートナー戦略」です。

■ポイント1:「導入企業のメリット」
例えば、あるマットレスブランドでは、商品の説明ページで、Affirmによる分割払いを大々的に推奨しています。「Sleep now, Pay over time with Affirm(Affirmの後払いで、今すぐ寝よう)」という文言とともに、月額67ドルの返済かつ金利0%のプランを提示しています。キャッシュフローの安定など、導入企業にもメリットが大きいので、ユーザーにAffirmを勧めてくれるのです。

■ポイント2:「キャンペーン活用」
導入企業の広告やマーケティングに、Affirmの後払い決済の仕組みを活用します。導入企業が出しているweb広告に、Affirmのロゴが記載されていることがあるのです。そのまま広告から商品ページに進むと、「Affirmで金利0%の分割後払い」と後払いの利点が訴求されます。「後払いができるから買いやすい」と購買を促すのです。また、格付けや返済実績などのデータと、企業の目標CVRの掛け合わせで、広告のメッセージを変える取り組みをしています。

■ポイント3:「パートナー戦略」
大手企業向けにシステムの実装や保守管理をしている企業とコラボレーションしています。このような大企業向けのシステム管理をしている企業に導入支援を依頼することで、大手企業への営業販路を拡大しています。
また、ECカートを扱う企業と連携しており、カート側がデフォルトでAffirmに対応しておくことで、そのカートの導入企業がAffirmを簡単に実装できるのです。

・Affirmが生み出した“2000億円”の需要

Affirmは後払い決済/分割支払いという、新しい決済手段を提供しました。この決済手段により、Affirmは6年間で2000億円分の需要を生み出したのです。

これは近年、支払い手段が現金から多様化している中で、新しい決済手段が消費を押し上げる可能性があることを示す、非常に興味深い現象です。支払い手段が消費者の購買意欲にどう関係しているのかは、日本でも今後さらに注目されるでしょう。

プロフィール

石原 靖士(Yasushi Ishihara)
株式会社オプト 執行役員
株式会社オプトホールディング 執行役員

ソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)にてネットワークエンジニアとして従事。2006年にオプト(現オプトホールディング)入社。2010年にデジミホ(旧オプトグループ)取締役に就任。2015年にオプト執行役員に就任し、テクノロジー開発・オペレーション・クリエイティブ領域を管掌。2019年からは事業開発領域を管掌。2019年4月よりオプトグループ執行役員を兼務しデジタルシフト変革領域管掌。