2年でDL数100万件突破。ユーザーがシェア買いアプリ「カウシェ」にハマるワケ

商品を購入する仲間を24時間以内に見つけることで通常よりもお得に購入できる、シェア買いアプリの「カウシェ」。2020年9月のサービス開始から2年で累計ダウンロード数が100万件を突破し、主婦層をメインに着実に利用者を増やしています。速さや手軽さを求める買い物ではなく、カウシェが目指すのはユーザー同士がコミュニケーションを取りながら楽しむ買い物。シェア買いが普及することで、日本のECによる購買体験はどのように変わるのか? 株式会社カウシェの取締役COO 前本 航太氏にお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- コロナ禍で苦境に立たされる飲食店を見て、なんとかしたいという想いから誕生したカウシェ。従来の「共同購入」という言葉は使わず、「シェア買い」という言葉でサービスをキャッチーに表現。

- カウシェでは購入者が商品をシェアして拡散してくれるため、広告費が不要というメリットがある。出店する事業者が負担するのは販売手数料と決済手数料のみの完全成果報酬型。

- カウシェが目指すのは世界一楽しいショッピング体験。オフラインの買い物の楽しさをオンラインでも実現するため、ソーシャル機能の強化や商品の拡充に取り組んでいく。

ライブコマースなどEC市場が成熟している中国と、そうではない日本の差

――コロナ禍の2020年4月に、株式会社カウシェを設立した理由を教えてください。

大きな背景としてあるのは、コロナ禍におけるモノの売り買いの停滞に対する強い危機感です。代表取締役CEOの門奈(門奈 剣平)の実家はレストランなのですが、人がまったく来ない状況になり休業せざるを得なくなっていました。各地でも同様の飲食店が多く見られ、どうにかして現状を変えていきたいという想いからカウシェは生まれました。

もう一つは、コロナ禍における日本と中国の状況の違いです。門奈は中国と日本のハーフで上海に長く居住していたのですが、中国ではオフラインからオンラインへの販売の転換が非常にスムーズでした。デパートが休業になっても、多くの販売員たちがライブコマースに進出して成功しています。それを見てEC市場の成熟度の高さを感じました。複数人で買い物をするというモデルは、日本でも古くから生協(生活協同組合)の共同購入という形がありますが、直接の参考にしたのは、中国で2015年に創業した「拼多多(ピンドウドウ)」という共同購入のECサービスです。

――あえて「共同購入」という言葉を使わず、「シェア買い」と謳っているのは何か理由があるのでしょうか?

1ヵ所に商品が届けられる共同購入と違い、カウシェがイメージするのはオンラインで2名以上が購入しても配送は個別にされるサービスです。共同購入という言葉の硬さもカウシェにはマッチしないので、それに替わる新しい言葉を探していました。それが「シェア買い」です。我々のサービスで商品を買うときは誰かにシェアをする必要がありますが、アプリからSNSでシェアをする際は「#カウシェでシェア買い」というハッシュタグが自動で入ります。それも多くの人に「シェア買い」というワードを認知してもらうための施策です。

――最低購入人数は2名とのことですが、これまでの最高購入人数を教えてください。

2,000名による強炭酸水のシェア買い成功例があります。500mlの24本入りで1,600円だったものが1,199円になりました。

――やはり、人気の商品は食料品や日用品などの消耗品になるのでしょうか?

売れ筋は比較的購入頻度の高い食料品や日用品ですね。コロナ禍における食の領域の課題を解決したい、という想いが創業背景にありますので、初期は多くの方が購入したいと思うであろう商品からスタートしました。現在では家電やコスメなどの取り扱いも始めています。

また、低単価の必需品だけでなく、蟹派と肉派というテーマで贅沢品の大人数のシェア買い対決キャンペーンなども過去に実施しています。 贅沢品もシェア買いで楽しんでいただく流れをつくっていきたいですね。

ユーザーが商品をシェア・拡散することで広がる「シェア買い」の輪

――カウシェに出店するメリットは、ユーザーが自主的に商品を広めてくれるという点にあるのでしょうか?

そうですね。我々は出店いただいている事業者から広告費は一切いただいていません。お客様が商品をシェアすることによって、その認知がどんどん広がり、購買数が増えていくことがカウシェ最大の特徴です。シェア買いの制限時間は24時間で、ツイッターやインスタグラムのストーリーズなどで拡散いただいている方が多いです。

新規顧客にリーチする方法は多くの事業者が抱えている課題です。既存のECサービスに出店したとしても、多大な広告宣伝費が必要になるのでそれなりの体力が必要です。カウシェであればSNSでお客様が自発的に拡散してくださるので、その点が多くの事業者に喜ばれています。カウシェは販売手数料と決済手数料のみで固定費は一切いただいていません。

――カウシェを利用するユーザーの属性と傾向を教えてください。

メインユーザーは30~40代の女性です。男女比は女性が7割、男性3割となっています。これは日本人の特徴でもあるのですが、ダイエットや子育てなど、特定の趣味や行為のためのSNSアカウントを持ち、通常のアカウントと使い分けている人が多いんです。そのなかでお薦めのプロテインやベビーグッズの情報を交換したり、シェア買いを募ったり、そういったやり取りがされています。

――在留ベトナム人のユーザー数が8.5万人を突破したとのことですが、なぜベトナム人に人気なのでしょう?

カウシェはコミュニティ属性が強いところで流行りやすい傾向があります。現在は在留ベトナム人の方の約20%にご利用いただいています。ベトナムの方はフェイスブックのグループなどで情報交換を頻繁にされており、そのコミュニティで受け入れられた形です。日本のミカンがすごく人気で、カウシェならお得に買えるということで好評いただいています。

――予想外の波及効果ですね。

狙ってやったことではないので、本当に意外でした。広告を打つのではなくお客様の力で広がっていくというカウシェの特徴がよく出た事例かと思います。

スピードや利便性より、「世界一楽しいショッピング体験」を

――従来のECではスピードや利便性を重視されてきましたが、思い立ったときに買えないカウシェはそういった意味では不便なわけですよね。けれども、それを受け入れられている点が面白いですね。

我々は「世界一楽しいショッピング体験をつくる」というビジョンを掲げています。多くのECが速さと安さを追求して、需要の高い商品をいかに安心安全に届けるかにフォーカスしてきましたが、我々は買い物自体の楽しさにフォーカスしたサービスをつくりたいという想いがあります。ウィンドウショッピングを楽しんだり、人でにぎわうセールに引き寄せられたり、といった経験が誰にでもあるかと思います。その楽しさをどうやってオンラインに転換していくのか、ということを常に意識しています。

――シリーズBにて調達された約22億円の主な用途を教えてください。

カウシェが目指す楽しいショッピング体験については、現状まだ実現できていません。その実現に向けたプロダクトの改善に投資していきます。具体的には、ソーシャル要素の強化です。コミュニケーションを介した購買体験を実現することで、購入者と購入者、購入者と事業者がつながり、シェア買いを楽しんでいただくためにできることは、まだまだあるはずです。現状は一方通行のコミュニケーションでしかないので、双方向のコミュニケーションを介しながら、買い物をより楽しんでいただくためにはどうすればよいのか、といったことを常に考えています。

――では、今後の展望について教えてください。

カウシェが短期間でここまで成長できたのは、世の中のトレンドと噛み合ったことが大きいと考えています。今はSNS上でインフルエンサーが紹介しているコスメを見て、そのまま検索して購入するという行動が当たり前になっています。そこにプラットフォームとして我々がうまく入り込めたことで、ここまで多くのユーザーの増加につながったと思います。

カウシェは立ち上げ時から総合ECを目指してきました。日本中で多くのお客様に使っていただけるような規模になってはじめて、「日本のECによる購買体験を変えた」といえると思っているので、食やコスメ、家電だけでなくすべての商品カテゴリーの網羅を目指しています。

もう一つ目指しているのはC2M(Consumer-to-Manufacturer)の実現です。お客様と工場をダイレクトにつなげて、必要とされている商品を必要な量だけ生産するという試みです。カウシェはお客様の需要を把握しやすく、かつそれなりの量が売れるという特徴があるので、無駄のない生産が可能になります。お客様に対してはコストを抑えた状態で商品をお届けできるようになりますし、事業者は廃棄ロスの削減にもつながるので双方にとってメリットがあります。

C2Mが実現すれば「既存の商品から欲しいモノを選ぶ」世界から「消費者が求めている商品を生産する」世界へのシフトが進むでしょう。大量消費社会を脱して、よりサステナブルな世界を目指していきます。

前本 航太

株式会社カウシェ 取締役COO

1993年生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。2014年にLoco Partners入社。Relux会員200万人、年間流通額200億円超のサービス成長にプロモート責任者として貢献。 2020年7月よりカウシェに参画。「Relux」での1→10事業経験を活かし、オペレーション全般やマーケティング戦略を担当。

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