InsurTech(インシュアテック)スタートアップ「Lemonade」とは?~デジタルシフト未来マガジン~
2019/11/19
~デジタルシフト未来マガジン~
AIやIoT、VR/ARといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどだ。そんななかで生まれる新しいビジネスは、いったいどんな着眼点で生み出されているのだろうか?「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
Contents
石原 靖士 -Yasushi Ishihara-
㈱オプトホールディング グループ執行役員
㈱オプト 執行役員
SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。
■保険業界を変える「InsurTech(インシュアテック)」
Lemonadeの創業者は保険業界での経験が無いにも関わらず、2015年の創業から、企業価値は2000億円に至り、ソフトバンクからも300億円の出資を受けています。
■【概要】Lemonade
気になる保険料はどの程度なのでしょうか?
賃貸不動産の保険なら、月額5ドルからと非常に低価格に設定されています。また、初めて保険に加入する人にもわかりやすいよう、説明ページや登録フォームがとても丁寧に作られていて、今まで保険に入っていなかった新規加入者層をうまく取り込んでいます。
保険の加入や請求の期間を今までにないほど短縮したことからもわかるように、Lemonadeは徹底的に効率主義です。これはサービス改善にも活かされています。「どのようなボタンにすれば、ユーザーはクリックしてくれるか」「ユーザーの入力の手間を減らすにはどうすれば良いか」などが考え尽くされているのです。
■Lemonadeのビジネスモデルを支える2つのポイント
ポイント1:「テクノロジーの導入」
Lemonadeは、ただ低価格の家財保険を提供しているだけではなく、随所にテクノロジーの力を使っています。
例えば、保険の加入や請求の手間を減らし期間を短くするために、AIやチャットボットを活用し、人件費を省いています。ユーザーの使いやすさとコストカットを同時に実現しているのです。
また、他社の様々なサービス(例えば、家財のネットショップなど)が、Lemonadeの保険を自社サービスに組み込むことができるようにしているのです。家具を買うときに、一緒に保険も契約するという流れはとても自然なもの。これによってLemonadeは新規ユーザーを獲得しています。Lemonadeを組み込んだサービスが、既存の保険業界でいうところの販売代理店の役割を果たしているのです。
ポイント2:「社会貢献」
Lemonadeは、ユーザーが支払う保険の掛け金から20%を手数料として取ります。これがLemonadeの収益です。その他の掛け金からユーザーへの保険金を支払った上で、余ったお金をNPOに寄付しています。この点も非常に特徴的な取り組みです。
ユーザーは最初に関心のあるNPOを選択し、そこへLemonadeから寄付される仕組みになっています。「保険」という経済的な価値が大きい商品に、「寄付」という社会貢献の側面が強い価値を合わせて提供しているのです。
実際にユーザーからは「余ったお金が寄付につながるところもクールだね!」という声もあがっており、社会への参加意識が高いユーザーにとって魅力的な仕組みになっています。