動画広告の新たなプラットフォーマー「ROKU」って? ~デジタルシフト未来マガジン〜

「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
石原 靖士 -Yasushi Ishihara-
㈱オプトホールディング グループ執行役員
㈱オプト 執行役員

SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。
今回紹介するのは、独自のTVスティックでOTT市場に切り込むデバイスベンチャー「ROKU」です。

「OTT」とは、「Over The Top」の略で、インターネットでコンテンツ配信を行うこと。OTTの形式で配信される動画を「OTT動画」と呼び、ROKUはこの領域のデバイスや広告を扱っているのです。

TVスティックと言えば、Amazon のFire TV StickやGoogleのChromecastなどが日本でも普及しつつありますが、アメリカでは、「ROKU」のTVスティックが圧倒的なシェアを誇っています。

一体なぜそのような事態になっているのか?
消費者がROKUに見出したバリューと、ROKUの収益モデルを解説します。

ROKUとは?

ROKUは2002年に創業されました。社名は、創業者の6つ目の事業という意味で、日本語の「六」からきています。ネットフリックスの社内事業を経て分社化し、2017年にNASDAQへ上場しました。9月の時点で時価総額は170億ドルになっています。

アメリカ人の多くはそんな「ROKU」のスティックをテレビの背面に差し込み、NetflixやAmazon Prime、ケーブルテレビなど、ありとあらゆる動画コンテンツを「ROKU」経由で見ています。

ROKUはデータドリブンな会社で、自分たちでコンテンツは作らずに、他社のコンテンツを消費者とマッチングさせる仲介プレイヤーに集中しているのです。

ROKUは、視聴者の興味や視聴行動をデータから分析し、ユーザーに合わせた広告を配信しています。アカウント作成時に登録するクレジットカード情報と使用する端末を紐付け、端末ごとに視聴情報を取得しているのです。そして、その視聴情報から最適な広告を選び配信しています。

データドリブンで視聴者にとって最適な広告を配信するのは、web広告を扱う多くのアドテク企業と同じですが、ROKUはスティック型端末を自社で販売し、プラットフォーマーになっていることから、web広告と比べて競合が圧倒的に少ない状況になっています。広告主から見れば、web広告の配信先は無数にありますが、OTT動画での広告を扱っているところは限られるのです。ここにROKUの強さがあると言えるでしょう。

ROKUのアクティブなアカウントは約3,050万もあり、1アカウントあたりの1日の平均視聴時間は3.5時間です。配信時間は3ヶ月で94億時間になります。その結果、コンテンツ課金と広告収入を合わせて1アカウントあたりの売上は、19ドル(約200円)になっています。

月額課金地獄からの脱却!消費者ニーズをつかんだ戦略で一気に拡散

しかし、数あるTVスティックの中で、ROKUが支持されているのはなぜなのでしょうか?

ROKUでは、アカウントを作成しクレジットカードを登録することで、ROKU上で視聴する様々なサブスクサービスを一括管理、一元的に支払うことができます。

アメリカ人の多くは、NetflixやHuluなどのほかに複数のケーブルTVに加入していて、まさに月額課金の嵐。分散された請求に嫌気がさしていたのです。

そんな状況に対してROKUは「ROKUのスティックをTVに挿すだけでケーブルTV料金が半額!!しかもネトフリもAmazonもHuluも、あれもこれもまとめて支払いが出来て便利!」とうたったコマーシャルを大量に投稿。動画市場の拡大期に、マスマーケティングによって一挙にユーザーを獲得した手法も注目すべきポイントです。

日本での可能性は?

ROKUのようなビジネスモデルの展開は日本で可能でしょうか?OTT自体の普及はアメリカほど進んではいませんが、コンテンツや決済が一元化されるというユーザーのメリットは存在していると考えられます。

2014年以降、日本ではケーブルテレビの加入者が減少傾向にあることから、ケーブルテレビ事業者がOTTに参入することはありえるでしょう。一方で、彼らにデータドリブンで広告を配信する能力があるかはわかりません。逆に、今web広告を中心にアドテクノロジーを活用している事業者には、広告配信のノウハウがあります。もしかしたら、今後はそちら側からの参入があるかもしれませんね。

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