業種特化の法人向けクレジットカードで急成長 米、クレジットカード会社Brexは何がすごいのか? ~デジタルシフト未来マガジン〜
2020/1/20
「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
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石原 靖士 -Yasushi Ishihara-
㈱オプトホールディング グループ執行役員
㈱オプト 執行役員
SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。
既存の大手プレイヤーが乱立するクレジットカード業界で、Brexは2017年の創業後、急成長しており、公開している範囲でも既に1億2500万ドル以上の資金を調達しています。この伸び方は驚異的と言えるでしょう。Brexは既存のクレジットカード会社とは何が異なり、どこに優位性があるのかを紐解きます。
Brexの概要
例えば、スタートアッププランでは、起業家の個人保証は無しになっています。海外のデータですが、65%が失敗するとも言われているスタートアップの創業者にとって、個人のリスクが軽減されるのはとても魅力的でしょう。Eコマース企業は、商品の販売と実際の入金との間が開いてしまうことが多く発生します。そのため、BrexのEコマースプランでは支払期間が60日に設定されており、資金繰りのサイクルを踏まえた返済プランになっているのです。これらは一例で、3つの業種それぞれのニーズを満たすプランが提供されています。
Brexの創業者は、オンライン決済サービスでをイグジットした経験を持つ2人です。また、投資家には、世界的なオンライン決済サービス「Paypal」出身者や、決済サービスに強いベンチャーキャピタルなどがいます。さらに、多額の調達資金を使って、金融サービスの知見のある人を雇っており、社内外にプロフェッショナルなメンバーが揃っていることも大きな強みです。
2つのビジネスポイント
■ポイント1:「業種特化」
Brexのポイントは何といっても業種に特化したプランを用意しているところです。さらに、外部サービスと提携したり、その業種が必ず使うような費用に特典を付けたりすることで、各業種の企業がよりメリットを得やすくなっています。
スタートアッププランでは、スタートアップ企業の利用が想定されるサービスと提携することで、他のカードよりもBrexを使うことで得する仕組みを作っています。テレビ会議サービスの「Zoom」の1年契約が20%オフ、コワーキングスペースを提供する「WeWork」が6カ月間最大15%オフになるなどです。ライフサイエンスプランでは、展示会や学会への支払いでポイントが7倍になります。このように、業種ごとの支払い項目に合わせることで他のクレジットカードから切り替えるインセンティブを与えているのです。
それぞれの業種に特化したプランを作るだけであれば、他のクレジットカード会社にもできるように思えますが、Brexは独自の仕組みで他社との差別化を実現しています。それが、「リアルタイムデータ」の活用です。
通常、大手のクレジットカードは、利用枠と利用規約をあらかじめ定め、その範囲内で運用します。しかし、Brexは企業の利用額や支払状況などのリアルタイムデータを利用し、利用制限を柔軟に変更しています。これにより、支払いが30日遅れていて貸し倒れリスクがありそうな企業には当月支払い分でサービスの提供をストップするなど、柔軟な対応が可能になっているのです。
既得権益に屈しないビジネスモデル
日本でも同様の動きを見せる金融ベンチャーがありますが、旧来型の信用データ企業と連携してしまっているなど、イノベーションがおこしにくい環境です。Brexはこの仕組を0から組み上げる事で、既得権益を突破しているのです。