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式場のクチコミ評価を当たり前にしたウエディングパークが挑む、 ブライダル業界のデジタルシフト

これから結婚するカップルを対象に様々なオンラインサービスを展開するウエディングパーク。メイン事業であるクチコミを活かした式場検索サイト「Wedding Park」は、多くのユーザーから支持を得る業界最大手のメディアです。業界でタブー視されていたクチコミサイトの立ち上げと運営には、知られざる苦労があったようです。ブライダル業界のデジタルシフトに挑む背景にはどのような想いがあるのか、株式会社ウエディングパーク代表取締役社長の日紫喜誠吾氏にソウルドアウト株式会社取締役CMO美濃部哲也氏がお話を伺いました。

ユーザーが望むサービスを。業界でタブー視されていたクチコミを導入

美濃部:まず、事業内容について教えて下さい。

日紫喜:現在のメイン事業は、日本最大級のクチコミ数を誇る結婚準備クチコミ情報サイト「Wedding Park(ウエディングパーク)」です。結婚式を検討しているカップルが、クチコミを参考にして式場を探せるサービスで、検索できる式場は全国で約5,000会場と、業界最大規模。現在はハワイなど海外の式場が探せる「Wedding Park海外(ウエディングパーク カイガイ)」や、フォトウエディング・前撮りの検索サイト「Photorait(フォトレイト)」、婚約・結婚指輪のクチコミ情報サイト「Ringraph(リングラフ)」、結婚衣装選びのクチコミ情報サイト「Wedding Park DRESS(ウエディングパークドレス)」なども展開し、いずれも順調に成長しています。

美濃部:日紫喜さんは元々親会社のサイバーエージェントで営業をされていたんですよね。

日紫喜:はい、営業部門の局長を務めていました。2004年にサイバーエージェントがウエディングパークを子会社化したタイミングで、社長の藤田から「ウエディング事業をやることになったんだけど、やってみる?」と声を掛けられまして。いつか経営者になりたいという思いもあり、「やります」と即答したんですが、その時点では業績など詳しいことは何も知らず。蓋を開けてみたら業績は大変厳しい状態で、創業者2人だけで会社を何とか回している状態でした。

美濃部:会社の危機を脱するために、クチコミサイトへの転換をするという決断をされたということですね。

日紫喜当時クチコミサイトは他業界では成功例が出始めており、結婚式という人生のビッグイベントで失敗したくないカップルにとって、クチコミは絶対に役立つサービスだと思いました。私自身既に結婚していましたが、一個人としてもそんなサービスがあったら良かったなというリアルな感覚がありました。創業者2人からは「クレームの嵐になる」と不安視されましたが、自分の感覚を信じて押し切りました。

殺到するクレーム。それでも絶対に譲らなかった信念

美濃部:ブライダル業界でクチコミサイトを立ち上げるには、大変な苦労があったと聞いています。

日紫喜:サイトでは明らかな誹謗中傷のコメントなどを除いて、ほぼ全てのクチコミを掲載しており、毎日数百件近いクチコミに、私自身が目を通して承認していました。承認作業をする時間は、夜の10時と決めていました。クチコミを寄せて下さった新郎新婦が、翌日の朝サイトを見たらアップされているというのがユーザーの満足に繋がると思ったので。

ただ、ブライダル業界はイメージ産業でもあります。「柱が邪魔で新郎新婦が見えにくかった」など、式場さんにとっては書かれたくないようなネガティブなクチコミも掲載していたので、創業者の指摘通り式場からのクレームが殺到しました。「クチコミを消してくれないなら今後広告費は出さない」とおっしゃる方もいて、苦しかったですね。「社長を出せ」とお叱りも受けました。毎日深夜までクチコミの承認作業をして、承認したそのクチコミによって翌日朝一でクレームの電話を受けるという日々でした。

美濃部:式場からのクレームには、どう対処されていたんですか?

日紫喜:クチコミを消すことはしませんでした。結婚式を挙げるカップルに絶対に役立つことをしているという強い思いがあったからです。広告契約を打ち切られることもありましたが、「より良い結婚式を提供するために、いつかこのクチコミを参考にしていただけることを僕たちは信じています」と言い続けました。

クチコミの質が高まるように投稿を会員制にしたり、式場側がコメントを返信できるようにしたりして、サイトの健全化も図りました。5年ほどは不安定な状態が続きましたが、結果的にユーザーにとても受け入れられるものになり、徐々に軌道に乗っていきました。現在ではユーザーからのクチコミを元に、式場に対して提案型の営業ができるようにもなりました

美濃部:そうした営業活動ができるのも、初期の段階で信念を譲らなかったことが大きかったのでしょうね。その後、2010年に料金体系に関するビジネスモデルを変更されたそうですね。これにはどのような背景があったのでしょうか?

日紫喜:当時はクリックされた分だけ広告費が発生するクリック課金システムだったんですが、時期的な変動も大きく、中長期期的な収益を見込み経営を安定させるためにも、固定料金制への変更が必要だと感じました。

美濃部:会社の将来のために、大きな決断をされたわけですね。

日紫喜: はい。ビジネスモデルの変更は一筋縄ではいかない部分もありましたが、このときの一連の経験を通して私も社長として一皮剥けたといいますか、自分自身で会社を引っ張っていく覚悟がより定まったように思います。結果として、この時の判断によって収益性が上がり、今では会社も約200人規模の組織にまで拡大させることができました。

業界全体にインターネット媒体の理解を深めるために

美濃部:日紫喜さんがクチコミサイト立ち上げを行った頃のブライダル業界は、まだ紙媒体が全盛で、デジタル化もインターネット媒体に対する理解も進んでいなかったと思います。開拓を進める中でどのような工夫をされていたのでしょうか。

日紫喜:まず、業界の特徴として、大企業は数社しかなく、あとは全国その土地土地でビジネスをしている中小企業が多いんですね。そして全体的にITに関するリテラシーはそれほど高くない傾向がありました。その前提の上で、大きな方針として、直販営業にこだわりました。背景として、私が元々新卒入社したキーエンスでの経験が大きいです。キーエンスは直販営業がとにかく強い。その後サイバーエージェントで代理店営業も経験しましたが、やはり自社サービスを伝えるという観点では直販の方が適しています。先ほど申し上げた理由の通り、インターネット媒体の理解を深めてもらうには時間がかかる感覚もあったので、自分たちで直接対話をしていく方法を選びました。

ウエディングプランナーをされている方一人ひとりに、業界としてはまだ理解も薄かったインターネット媒体の広告の話をするには、やはりハードルがあります。とはいえ、時代はインターネットの方向に必ず向かっていくはずだと信じて、流れが変わった時のためにまずは関係を築くことに注力しました。

美濃部:地道に一社ずつ関係を作っていかれたんですね。

日紫喜:はい。ただ、時間がかかるという課題もあり、もう一つの考えとしてセミナーを開くことにしました。私が講師としてインターネットとはこういうものです、未来はこうなっていきますというお話をする。あえて自社サービスの話にはあまり触れず、業界全体への貢献だと思って全国行脚しました。そうやって接点を増やして信頼関係を作っていきました。

あとは、業界団体にとにかく顔を出しました。平均年齢50・60歳の団体で、私はとても若造だったのですが、インターネットについて話すのは私くらいだったのもあり可愛がってくださって。じゃあちょっと勉強会をやってくれと全国でセミナーの機会をいただくことができました。

そうしているうちに、ウエディングパークはしっかりやってくれそうだからと広告予算を預けていただきました。デジタルのいい部分ですが、実績がはっきりと数字で出できますので、各社からご満足いただけるようになり、一気に広がっていきました。

業界全体のデジタルシフトをサポート。21世紀を代表するブライダル会社へ

美濃部:最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。

日紫喜:サイトでの集客だけでなく、式場の経営自体のデジタルシフトをサポートしていきたいと思っています。今ブライダル業界も人材不足という課題を抱えています。例えば1度カップルが式場に相談に来ると、プランナーの方は最低でも接客に2、3時間費やす必要があります。挙式契約につながればいいのですが、契約に至らないケースがあまりにも多いと、現場がどんどん疲弊してしまうんです。その点を解消すべく、カップルと式場のマッチング精度を高める機能開発に取り組んでいます。他にも式場の現場では、労働としては過酷な面がいまだにあります。自動化できるところは自動化し、生産性も上がれば、離職率も抑えられると考えています。インターネットサービスを通してブライダル業界に貢献できることであれば、幅広く実践していこうと思っています。

美濃部:ブライダル業界にとって頼もしい存在ですね。御社の社内でもデジタルシフトに取り組まれているんですか?

日紫喜:自社では、2016年にAI Labという組織を立ち上げ、生産性の向上に取り組んでいます。最近注目しているのは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)です。人的にやっていた業務の一部を、AIによる画像認識技術を使って自動化し、人や時間のコストを削減できた事例もあります。
また、人事の領域もデジタル化をすすめています。
社員の人事情報をデータで管理することで、より社員の状況がわかりやすくなるので、適材適所などのような社員の活躍支援に役立てていきたいと考えています。単にテクノロジー開発だけでなく、その運用力も含めて、「21世紀を代表するブライダル会社」を体現していきたいと思っています。

美濃部:まだまだデジタルシフトが進んでいない部分も多くある業界ですから、小さなところからデジタルシフトを進めることで、改善される部分はたくさんありそうですね。業界の未来と日本人の幸せのために、ますますご発展していくことを願っています。本日はありがとうございました。
日紫喜誠吾(Seigo Hishiki)
1976年生まれ。1998年に同志社大学工学部エネルギー機械工学科を卒業後、(株)キーエンスに入社。その後、将来の起業を目指して急成長のネット業界へ転職を決意し、2000年に(株)サイバーエージェントに入社。インターネット広告代理事業のマネージャー、局長を経て、2004年にサイバーエージェントの100%子会社として設立された(株)ウエディングパークへ出向。2005年に代表取締役に就任し、現在に至る。
著書『僕が社長であり続けた、ただ一つの理由 ~ウエディング業界に革命を起こした信念の物語~』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

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