テレワークで家庭の電力消費量は2倍にも!? ENECHANGE(エネチェンジ)に聞く、電気料金見直しのポイントと、これからの業界のあり方。
2020/7/13
現在、新型コロナウイルス感染症の影響で家庭や企業での電力事情が大きく変化しています。例えば、人が家にいる時間が長くなり一般家庭の消費電力量が増えた一方、大量の電力を消費していた大型施設や工場の稼働が減少するなど、世の中全体で見ると消費電力の総量は大幅に減っています。
そこで今回は、家庭向け電力・ガス比較サイト「エネチェンジ」や、電力小売事業者向けにDXサポートを提供するENECHANGE株式会社にお話を伺いました。一般家庭にどんな影響があるのか、これからの電力業界はどう変わっていくのか、同社の代表取締役CEOをつとめる城口洋平氏にお話を伺いました。
Contents
https://digital-shift.jp/top_interview/191029
ざっくりまとめ
・緊急事態宣言下、社会全体の電力消費量が過去類を見ないレベルで落ち込んだ
・電気の需要が減少した影響もあり電気の市場価格が大幅に下落
・各電力会社がキャッシュバックや日中割引など様々なプランを提供している
・新型コロナ感染症の影響を受け、電力会社のDXソリューションへの需要は高まっている
・電力業界には過去に捉われず、現状を分析し、未来を描く力が求められるようになった
テレワークで家庭の電力消費量は倍に、法人の消費電力は半分以下に減少
一般家庭では、テレワークなどで家にいる期間が長くなったことにより電気使用量が約1.5倍に、テレワーク時間帯あたる午前9時から午後6時の間では約2倍に増えています。1カ月の電気代は4人家族のご家庭で平均10,000円程度なのですが、その金額も1.5倍程度増えています。
逆に法人の電気使用量は特殊な業界を除き、平常時より50%〜80%減りました。どの会社もほぼ営業ができない状態にあっても、最低限の電気代がかかり続けている状態です。
総じて、一般家庭でも法人でも電気代に関する意識が高まっています。電力会社の見直しも進んでおり、弊社へのお問い合わせは例年の倍ぐらいに増えています。
テレワークには「昼間の電気料金が安くなるプラン」の検討を
一般家庭の場合は、まずシンプルに、契約している電力会社を見直すのが良いと思います。最近は、2万円のキャッシュバックなどキャンペーンを行う会社が多く出てきています。年間の電気代が10万円だとすると、電気代の削減額と合わせて20〜30%の割引になるので、節約を考えるご家庭にとっては、結構大きいのではないでしょうか。
また、在宅応援として、昼間の電気料金が安くなるプランなどもあります。電気料金の場合は、最低契約期間などの縛りがなく違約金が発生しないことが多いので、少しでも安くなるならば、一時的な切り替えでも他社を検討するのは良いと思います。
電気代を抑えるための他の手立てとしては、細かい節電の積み重ねがあります。エアコンの温度設定を1℃高くしてみる、省エネ効果の高い家電に買い替える、照明をLED照明に変えるなど、使い方の工夫や、古い家電の見直しを行うと良いでしょう。
ーなぜ電力会社は今、キャンペーンや値下げを行っているのでしょうか?
工場や大型施設が止まるなどで、世界的に消費電力が落ち込んでおり、原油価格が下がっている影響が大きいのだと思います。一時的に原油価格がマイナスになったこともありました。また、季節的に太陽光発電による発電量が増え電力全体の供給量が増える中、電力需要が全体的に落ち込んだこともあり、電力の市場価格に安値がついたことも電力会社の原価圧縮に繋がっています。
電力会社からすると今はある種、顧客獲得のチャンスとも言えます。仕入れ原価が安ければ利益が出ることに加え、コロナ禍の影響で電力会社の見直しをするご家庭が増えているからです。だからこそこの時期にキャンペーンを打ち、新規顧客獲得をしようと動いている会社が多いのです。
ーキャンペーンなどを賢く使うには何をすれば良いでしょうか?
テレワークをされている方は、日中に電気代が安くなるプランを活用し、洗濯や掃除など家電を使う作業を日中に固めてやってしまうのも手だと思います。それ以外にも、電力会社によってはキャンペーンと合わせて初年度で40%割引を実現しているところもあるので、上手く利用すれば、生活に必要な固定費を抑えることができます。
ー法人が電気代を安くしようと思った場合は何をすれば良いのでしょうか?
オフィスビルの場合は、電気代より賃料の方が削減幅が大きいので、働き方をテレワークに移行できるような企業であれば、まずはオフィスの縮小を検討するべきだと思います。
ホテルや旅館など、場所代を削減することができない業種の場合は、一般家庭と同じく、電力会社の見直しを検討するのが良いのではと思います。とはいえ、一般家庭の場合とは違い、いろいろな条件を踏まえたうえで個別に契約を結んでることが多いので、場合によっては電力会社への交渉が必要になってきます。こうしたケースでは、ご相談を頂き、法人の代わりに我々が電力会社に交渉をする事例も増えています。
問い合わせ数の激増に対応すべくDX化を推進
大きく3つの変化がありました。
1つ目は先ほどもお伝えしましたが、例年に比べ圧倒的にご家庭からの問い合わせが増えたことがあります。その状況に対応するため、これまでも取り組んできたことではあります が、よりスピーディにサービスのデジタル化を進めました。一般的に電気やガスの契約を完了させるまでには、提携店を含めた店舗での営業、契約の締結に必要な書類の往復、など、対面を含め人海戦術で行う業務が多くありました。
パートナー企業経由での申込みの取り次ぎ業務などのフローなども、これまで以上にオンラインで電気やガスの契約に関わる全ての手続きが完結できるよう、プラットフォームの整備を進めました。
電力会社のDXサポート数も増加
そもそも、電力会社は、電気事業法に基づき「総括原価方式」で電気料金を算出していました。発電所の建設や電線の敷設とそれらの保守にかかる費用、電力販売費、人件費などすべての費用を算出し、それに一定の報酬を上乗せした金額を電気料金として販売していたのです。常に一定の利益が保証されるため、コスト削減のためにデジタル化という発想がなく、むしろ、たくさんの雇用を行うことで、地域を支える役割を担うのだという思想も強くありました。
しかし、電力の自由化を皮切りに、新規参入企業との競争が起こるようになり、業務効率化のためのデジタル化が求められるようになりました。その傾向は新型コロナウイルス感染症の流行でますます加速しています。
例えば、手続きに必要なあらゆる連絡を電話に頼り切っている状況があり、引越しに伴う解約・開始の手続き、、契約アンペア数の変更や料金プラン変更などの契約内容変更の手続きの多くをコールセンターで対応しているというのが現状です。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で三密を防ぐため、コールセンターの人員を削減する必要があり、電話が圧倒的に繋がりにくくなっていました。そこで、ユーザーに対するコミュニケーションをLINEのようなコミュニケーションアプリを活用するなど、Webで完結できるシステムづくりに着手する電力会社が増えています。
オフィスを縮小しフルリモート体制へ移行
お客さまに対してDXをご提供しているなかで、我々自身も率先して変わっていかなければ説得力がないと考えています。だからこそ、業界の中でも先陣を切り、デジタル化を進めていきたいと思っています。
これからも、業界全体のDXへ貢献したい
電力・ガス業界では、自由化の中で生き残るためにはデジタル化するしかないということは、もはや共通認識になっています。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行により、よりその傾向は加速していると言えます。そんな今の状況に、対応できているのかそうでないかで大きく差が付いてきているのも事実です。
また、発電会社も電力の販売会社も、過去にとらわれず現状を正しく分析し、これからの戦略を決める力が求められているのだと思います。これまで、電力業界では過去のデータを踏襲し、発電量や電気代を決めていました。しかし今、電力消費の傾向は前例のない状態で、過去のデータが通用しなくなっています。だからこそ、各家庭での使用電力など、現状の数字を正しく分析し、人々は今どんな生活をしているのか、第二波が来た場合どうなるのかなど、予測する必要があるのです。
我々は、電力自由化に伴って市場を段階的に拡大してきました。比較サイトからスタートしましたが、自由化2年目からは電力業界のデジタル化を加速させるため、電力会社さまのDXサポート事業にも着手し始めました。そんななか、外的要因によりデジタル化の波が一気に押し寄せ、会社として目指していた方向に業界が変革しつつあります。今後も、我々自身が率先して変化し続け、業界全体のDXに貢献していければと思っています。
HPはこちら:https://enechange.jp/
ENECHANGE株式会社
代表取締役CEO
東京大学法学部卒、ケンブリッジ大学工学部博士課程(現在、休学中)。ケンブリッジ大学在学中に電力データに関する研究所を設立。その研究成果をもとに、ENECHANGE株式会社(日本)とSMAP ENERGY社(イギリス)を創業。世界のエネルギー革命を加速させるべく、エネルギーデータのプラットフォーム企業として事業を推進する。2017年「Forbes 30 Under 30 Europe」 に日本人として初選出される。