中国最前線

中国テック業界の次世代を担う「TMD」の一社、美団点評 競争によって磨かれるプラットフォーマーとしての実力

中国を代表する巨大テクノロジー企業である百度(バイドゥ)、阿里巴巴集団(アリババ)、騰訊(テンセント)、華為技術(ファーウェイ)を、その頭文字をとって「BATH」と呼ぶのに対し、新たに注目を集めているのが中国テック業界で次世代を担うとされ「TMD」と呼ばれる3社だ。インターネットニュースアプリ「今日頭条」(Toutiao)や、日本でも浸透している「Tik Tok」を運営する字節跳動(バイトダンス)、出前や中国版食べログなど生活関連サービス全般を提供する美団点評(Meituan)、中国版Uberとも言われる配車アプリを運営する滴滴出行(Didi)である。今回は、その1社である美団点評に伺い、新興ベンチャー企業の今を探った。

美団点評の歴史

美団点評は、飲食店のクチコミ投稿サイトを運営する大衆点評と、クーポンサービスを提供する美団とが合併して誕生した。大衆点評は2003年に上海で創業。中国で初めてのインターネット×飲食業のサービスとしてユーザーを獲得し、規模を拡大していった。中国版食べログと評されることが多いが、食べログの創業は2005年。食べログができるよりも先に、中国ではこうしたサービスが誕生していたのである。

一方の美団は、2010年に北京で創業。オンラインクーポンの発行などを行い、インターネット×飲食業の領域に進出した。点評と美団は、特にインターネットから実店舗への送客を行うO2O(Online to Offline)ビジネスの担い手として、「北の美団、南の点評」と称されるようなライバル関係にあった。しかし、同じ領域のサービスを提供する会社として、両社は2015年に合併し、2018年には香港でIPOした。

美団点評のミッションは「We help people eat better, life better.」。良い食べ物、良い暮らしを提供することを掲げている。ちなみに、BATHのテンセントの資本が入っている。

提供サービスはとにかく幅広い。飲食店の検索と予約を行うサービスの他にも、映画館や遊園地のチケットの購入、ホテルや民泊などの検索や予約もできる。口コミ総数は55億を超えており、アクティブユーザー数は4億超。中国では3〜4人に1人が使っていることになる。2019年の四半期の第一四半期決算では、1日の平均取引額が1847万元(約2億7900万円)だったという。

データを活用した配達の最適化

多様なサービスを展開する中でも、特に認知され、使われているのが出前事業だという。飲食店の検索や予約をするアプリには、「出前を注文する」という選択肢も追加されており、アプリ内からフードデリバリーを頼むことができるのだ。

この出前サービスを実現するために、美団点評が集めるデータや開発するテクノロジーが活用されている。実際に、データを活用した配送システムの概要を見せてもらった。
地図上に現れている点が、現在配達中の配達員だ。一人ひとりがどこにいるのか、どう動いているのかリアルタイムに可視化されている。加えて、緑がオーダーがない人、黄色が少数のオーダーを抱えている人、赤がオーダーが多く忙しい人といった風に、一人ひとりの現状もわかるようになっている。

配達員が効率よく食事を届けるために重要なのが配達ルートである。美団点評では、配達員の状況によって最適な配達ルートを自動算出してくれるシステムを開発している。条件を入れると、どの道を通って配送するのがもっとも効率的かが算出されるのだ。その間、わずか1秒。単純に近道というだけでなく、交通状況や道の安全性なども総合的に考慮した上で割り出す仕組みだという。配達員はこのシステムを駆使して、速く安全に出前を届けているのだ。

配達の効率化としてもう一つ取り組んでいるのが、ドローンやロボットの開発である。出前用ロボットはすでに開発されていて、料理を保温したまま運べるという。エレベーターにも乗れるし人も避けられる。政府の許可がないため公道を走ることはできないが、百貨店の内部や店舗の敷地内では実装しているそうだ。

独自のPOS端末の開発

さらに、美団点評は、決済領域にも事業を広げている。独自のPOS端末を開発し、飲食店に導入しているのだ。中国ではQRコード決済が主流になりつつあるため、バーコードのスキャンではなくQRコードを読み取れる仕様になっている。

この端末の利点は2つ。1つは、アプリ経由でスマホと繋がっているため、遠隔で売上を確認できる点だ。顧客のQRコードを読み取るだけでいいので、決済時に店員は必要ない。店舗以外の場所で売上を管理することが可能になったのである。さらに、独自の管理システムで、店の仕入れや在庫状況も管理できるようになっている。

もう一つが、消費者データの収集だ。消費者が会計時にQRコードを使うと、アプリに登録されている個人情報が読み取れる仕組みになっている。このデータを、美団点評側は商品開発や消費者体験の向上に生かしているという。
話を聞いてみて驚いたのは、美団の事業の手広さだった。飲食、ホテル、映画館などいくつかの業界でシェアナンバー1をとるプラットフォームを作っているだけではなく、出前や決済にまで事業を広げ、独自のシステムを開発している。中国では、同じTMD企業の滴滴出行が出前市場に参戦するなど、競争が激化している。自社で垂直型のビジネスモデルを持たなければ、市場の覇権を握ることができないのだろう。

一方で、消費者視点に立ってみると、一つの企業のサービスで全てが完結するというのは、手間が少なく使いやすいだろうと感じた。日本は、各業界のプラットフォームを作る会社、出前サービスを提供する会社、決済システムを開発する会社とそれぞれが独立しており、消費者は用途に合わせてそれらを使い分ける必要がある。それでは獲得できる顧客にも、サービスのスケールにも限度がある。近隣領域の企業同士が意識し合い、より消費者視点にたったサービスの作り方を考えていく必要性を感じた。

美団点評は今後も、生活サービスプラットフォームとして事業を拡大していくと予想される。競争があるからこそ、圧倒的なスピードで進歩していく。BATHに次ぐTMDの実力の一端を感じた。

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最終回は、越境ECのパイオニア、Bolomeを訪ねる。日本でいうインフルエンサーに近い、拡散力のある「KOL(Key Opinion Leader)」によるマーケティング支援を行う同社から、次代の販売手法を学ぶ。

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