DX戦略

【書評】『GAFAに克つデジタルシフト』 経営者に警鐘を鳴らすデジタルシフトの実践的入門書

オプトグループCEO鉢嶺氏がまとめた、デジタルシフトの実践的入門書をデジタルシフト編集部が解説。

著者プロフィール

鉢嶺 登(Noboru Hachimine)
株式会社オプトホールディング代表取締役社長グループCEO。
1967年生まれ。千葉県出身。1991年早稲田大学商学部卒業。1994年、株式会社オプト(現・株式会社オプトホールディング)を設立。2004年、JASDAQに上場。2013年、東証一部へ市場変更し、現職。経済同友会幹事、新経済連盟理事。
デジタルシフト、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった言葉が登場して久しい。広義には、デジタル活用による生活の質の向上など、社会的な変化をとらえた言葉ではあるが、企業の経営課題として使われるケースが多いのではないだろうか。GAFAやBATHといった巨大プラットフォーマーが、グローバルに進出していく中で、日本企業も「デジタルシフト」を叫んで、新たなデジタル時代に即したビジネスモデルを生み出そうとしているのだ。

しかし、いったいどれほどの企業が、デジタルシフトを実践できているだろうか?実際に動きだしている企業は、ごく一部に限られている。その理由は、デジタルシフトに取り組むための具体的な手法がわからないというだけでなく、そもそも経営者がデジタルシフトの必要性を実感できていないことにある、と本書の著者で、オプトホールディング代表取締役、オプトグループCEOの鉢嶺登氏は述べている。

鉢嶺氏が起こしたオプトグループは、近年デジタルシフトカンパニーを標ぼうし、企業のデジタルシフトを川上から川下までサポートできるよう組織を整えている。鉢嶺氏自身も多くの経営者にデジタルシフトの必要性を訴えてきたが、中には、「アマゾンはEコマースの会社でしょ?」と高をくくる経営者もいるという。「経営者がデジタルシフトの必要性を実感できていない」というのは、鉢嶺氏が、現実に目の当たりにしてきた、日本の危機なのだ。

デジタルシフトしない企業は消え去る

本著では、経営者にデジタルシフトの必要性を知ってもらうために、GAFAをはじめとした巨大プラットフォーマーの参入によって起こりつつある産業構造の変化の解説から始まっている。

第1章「デジタルシフトしない企業は消え去る」では、近年、国内の自動車メーカーがこぞってMaaS(Mobility as a Service)に取り組み、業界再編の動きが加速していることに触れて、その背景にGAFAの存在があると指摘する。
…自動運転が次世代自動車の中核と言っても良いほど巨大な市場になるが、ここでもグーグル、アマゾン、アップルといったGAFAが存在感を強めている。…世界の自動車メーカーは相次いで自動運転分野で先行するIT企業と提携を発表しており、自動運転では既存自動車メーカーがトップランナーではないことを物語っている。(本文より抜粋)
鉢嶺氏がここで語っているのは、自動車業界のライバルが変わってきているという事実だけではない。自動車業界のみならず、様々な産業の変化を例に出して、「GAFAの影響は、今後すべての日本企業に及ぶ」と断言し、経営者に警鐘を鳴らしているのだ。

デジタルシフトを成功に導く方法

ところで鉢嶺氏は、株式会社オプト(現株式会社オプトホールディング)の創業者であり、日本のデジタルマーケティングをけん引してきた一人だ。実際に、日本のレガシー企業にデジタルを導入してきた経験があり、そのノウハウが本著に盛り込まれている。特に頷けるのは、デジタルシフトに失敗する企業に共通するとされる5つの要因だ。

ひとつ例をあげると、「デジタルを分かっていない人が、デジタルシフトの責任者になる」とある。ここでいう「デジタル」とは、IT技術などのテクノロジー知識を指すだけではない。企業のデジタルシフトをけん引するリーダーは、デジタルによって引き起こされる社会的変化を読み解き、ビジネスを創造・再構築できる人材でなければならない。近年CDO(Chief Digital Officer)といった役職を設ける企業が増えているが、本当に適した人材を抜擢することができているといえるだろうか?アメリカでは、外部のテック企業から引き抜かれた人材が、レガシー企業のCDOに就任することも珍しくないのだ。

また、鉢嶺氏は、失敗する要因だけではなく、デジタルシフトを成功に導く具体的な方法も示している。
1 トップが、デジタルシフトを戦略の中心に据える決意と覚悟を持つ
2 デジタルが分かっている人を、デジタルシフトの責任者に置く
3 デジタル事業を既存事業より優先させる
4 デジタルシフトの責任者に権限(カネやヒト)を与える
5 デジタルシフトによってもたらされるワクワクする未来を、トップが語る
6 組織を分ける
7 デジタル経営チームを組成する(CDO+CMO+CTO+CCO)
8 デジタル人材で固める
9 経営者がデジタルを学ぶ
10 社内の人材をデジタルシフトさせる
かなり具体的な言及だが、注目すべきは、そのいずれもが、経営者の決断が不可欠であることだ。経営者が、危機を感じ、行動を起こさない限り日本のデジタルシフトは進まないという鉢嶺氏の課題感を強く感じる10項目である。

書籍では、その課題感を反映するように、「経営者のデジタル力パーソナルチェックリスト」というアンケートが、基本編、応用編とふたつに分けて掲載されている。特に基本編は、「スマホを使っている」「SNSのユーザーアカウントを持っている」など、デジタルネイティブにとっては、当たり前のようなことがチェック項目に含まれている。しかし、言い換えるなら、企業経営者と対話を重ねている鉢嶺氏には、それすらできていない経営者がいるということが当たり前の事実なのだ。本著を手に取った人は、できるならば、自社の経営者にこのチェックリストを見せてみるとよい。思ってもいない結果が出るかもしれない。

デジタルシフトに必要な人材と育成方法

経営者の意識改革はもちろんだが、デジタルシフトを実行する上では、デジタル人材の育成も大きな課題となる。本著では、デジタル人材を4つの職種(マーケター、テクノロジスト、クリエイター、ビジネスプロデューサー)に分け、体系立てて必要なスキルセットを例示している。いずれも、名称としては従来からある職種に思われるだろうが、その認識は誤りだ。鉢嶺氏があげたエピソードを抜粋する。
私の知人に、大手出版社から新興ネットメディア企業の幹部として転職し、そこで大成功を収めた人物がいる。先日、その方から衝撃の発言を得た。私が「ネット企業で成功を収めた今、古巣の出版社から戻ってきてCDO(最高デジタル責任者)をやってくれ、と依頼されたらどうしますか?」と質問したところ、その方は「絶対戻らない。なぜなら、かつての出版社に必要だった人材と、これからの出版社に必要な人材は全く違うからだ」と語ったのだ。
つまり、従来の「デジタルシフト以前」の世界と、「デジタルシフト後」の世界とでは、人材が備えるべきスキルセットがまるで違うということだ。
鉢嶺氏は、四職種それぞれで、従来と比べ、どのようにデジタルな視点を持ち業務に臨むべきかを具体的に解説している。すでに鉢嶺氏の率いるオプトグループでは、この4職種に合わせた「デジタルシフト人材育成プログラム」を開発・運用していて、一部は他社への提供も始めているという。

『GAFAに克つデジタルシフト~経営者のためのデジタル人材革命~』は、経営者に警鐘を鳴らすだけでなく、実際の施策を提示する入門書といえるだろう。鉢嶺氏の想いをくむならば、この本を手にする人は、自らが読むだけでなく、この本を誰に手渡すべきか考えてみてほしい。
日本のデジタルシフトのリーディングカンパニー・オプトホールディング代表の鉢嶺登氏が、経営者やマネジャー層に向けてデジタルシフトの重要さを語ります。デジタルシフトの実践的な内容が書かれています。
GAFAに克つデジタルシフト 経営者のためのデジタル人材革命

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