DX戦略

これからの100年を見据えたデジタル時代の電子契約とは?クラウドサインが戦略とロードマップを発表

2015年にサービスを開始し、現在は導入社数が14万社を超えるまでに成長する、Web完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」。コロナ禍で「ハンコを押すためだけに出社」という商慣習の非効率が露呈したことにより、さらに注目を集めている。これから先、電子契約はどう変化していくのか。それを探るべく、弁護士ドットコムが1月21日に開催した新戦略発表会「これからの100年、新しい契約のかたち。」の模様をレポートする。

ざっくりまとめ

・契約締結のスピード化とコスト削減を実現できる「クラウドサイン」の導入企業は、2021年1月末時点で14万社以上、累計契約送信件数は400万件以上にのぼる。
・クラウドサインは、サービス開始当初より、電子契約を普及させるためには使いやすさが必須であり、あえて電子署名法に準拠した規格を採用せず、事業者が署名を代行して電子署名を行う「事業者署名型」契約を採用した。
・コロナ禍で、クラウド時代の電子署名法に対する新解釈を政府も発表し、「事業者署名型」に対応。
・クラウドサインは今後100年を支える電子契約インフラになるべく、「契約管理」「契約決裁」「実印の代替」に関する機能を追加予定。

明治から続く印章文化を変化させて、安心して利用できる契約インフラに

クラウドサインは、従来の「紙」と「印鑑」による契約作業をクラウドで完結し、契約締結のスピード化とコスト削減を実現できるWeb完結型のクラウド契約サービスだ。2015年にサービスを開始し、2021年1月末時点で導入社数が14万社を超えるまでに成長していると言う。

クラウドサインの電子契約機能には「いつ・誰が・どの契約に合意したのか」を証明するための電子署名とタイムスタンプが付与されており、契約書の証拠力を担保しながら、契約業務を円滑に進めることができる。

今回のコロナ禍において、電子契約サービスを導入していない企業は、緊急事態宣言下であっても押印するためだけに出社しなければならないケースがあり、思わぬところで非効率な日本の慣習が露呈してしまった。オフィスのDX化を進めるためには、まずはこういった足元の押印文化からの脱却が求められるだろう。

同社は今回、「契約をもっと早く・安全に。」から「これからの100年、新しい契約のかたち。」というタグラインに刷新したが、その背景には、明治から148年間続いてきた印章文化を新しい社会情勢にマッチした形に変え、クラウドサインを今後100年先でも安心して利用できるオルタナティブな契約インフラにしていきたい」という矜持がある。

あえて電子署名法に準拠した規格を採用せず、使いやすさを重視して電子契約の普及を目指したクラウドサイン

この25年の間で情報の伝達や保存の手段は、郵便・紙からインターネット・電子メールへと移り変わり、電磁的媒体やネットワーク、ディスプレイ上で取り扱われる情報が爆発的に増えている。

政府は電子契約を普及させたいという思いから、2001年に電子署名法に準拠した規格として「当事者署名型電子署名」を施行した。これは認証局と送受信者の間で、あらかじめ電子署名を取得していれば、民事訴訟裁判で「一定の証拠力を与える」というものであった。しかし、この方法にも課題が残っていた。

弁護士ドットコム株式会社 取締役 クラウドサイン事業本部長の橘 大地氏は「皮肉なことに認証局で電子署名を取得するには、実印と印鑑証明書、住民票が必要になります。証明の取得にも費用が平均1万円以上かかり、なおかつ1週間以上かかるというものでした」と語る。当事者署名型電子署名は、厳格な認証であるがゆえ、個人で普及するには至っていないのが実情だ。
そこで、あえて同社は電子署名法に準拠せずに「互いに同意していれば契約は成立する」という民法の原則に立ち返り、事業者が署名を記録して電子署名機能を持つ「事業者署名型(立会人型電子署名)」という契約のかたちを再発明して、5年前にクラウドサインをリリースしたという経緯がある。
その結果、PDFアップロード→メール通知→(先方)合意締結→自動保管という流れによって、わずか1分で契約を締結できるようになった。この方法であればリモートでも契約対応ができるため、上司が出張中でも契約締結可能となる。従来のビジネスが加速度的にスピードアップするという点で、まさにDXの文脈に寄り添うものだ。

もうハンコには戻らない。政府より発表されたクラウド時代の電子署名法に対する新解釈とは?

この事業者型の契約を採用したクラウドサインの契約者は、前述のようにすでに14万社を突破し、累計契約送信件数は400万件以上。(※2021年1月末時点)トヨタ自動車や三井住友銀行、サントリーホールディングスといった日本を代表する企業にまで採用されるに至った。とはいえ、クラウドサインは電子署名法に準拠しないチャレンジでもあったため、「電子署名法に則らなくて本当に大丈夫なのか?」という心配の声が聞かれたのも事実だった。

そのような状況のなかで、昨年から新型コロナウイルスが蔓延し始めた。橘氏は「我々が電子署名法をアップデートしなければならないという危機感を持っていたところに、昨年9月に政府からクラウド時代の電子署名法に対する新解釈(3条Q&A)が発表され、事業者署名型に真正性の推定効が示されました」と説明する。

今回の新解釈(3条Q&A)について、日本組織内弁護士協会の渡部 友一郎氏は、動画で次のようにコメントした。
同氏は「この新解釈が、クラウド型電子署名が法的に安心という、行政によるただのお墨付きのQ&Aの公表にすぎないという見解は誤解です。クラウドサービスができた20年前の古い法律が、今回の行政の解釈変更によって、実質的に法改正された、というのが正しい理解になります。かつて、クルマが決して馬車に戻らなかったように、契約インフラもクラウド契約からハンコに戻ることはないでしょう」と強調した。

そこで同社では、この電子署名法3条Q&Aの新解釈に沿って、高度な認証リクエスト機能をいち早く実現し、「2要素認証」のアップデートバージョンを昨年リリース。さらに新たな法制度と技術を活用し、今後100年を支える電子契約インフラになるべく、クラウドサインの新サービスロードマップも発表した。

クラウドサインに追加される3つの再発明~「契約管理」「契約決裁」「実印の代替」

橘氏は、このロードマップにおいて、3つの再発明として「契約管理」「契約決裁」「実印の代替」に関する機能を用意することを明言した。まだ世界中のどの電子署名サービスにもない機能や、新しいアプローチでの解決策も用意されていると言う。
まず一つ目に契約管理の再発明だが、契約締結した内容をどのように管理していくか?という点に配慮した機能をリリースする。

「契約書は通常とは異なる特殊な管理が求められ、法務だけでなく、事業部などが適宜閲覧できるように管理する必要があります。そこで契約に特化した新しい”キャビネット機能”を3月にリリースする予定です。」(橘氏)。

従来の書類管理サービスは、組織の階層構造に基づくフォルダ管理法が一般的だった。そのため、法務部に閲覧権限があって、その配下に存在する事業部などは閲覧しづらいという構造だったのだ。しかしキャビネット機能は、セキュリティを担保しながらも、1つのファイルに対し、さまざまな組織の部や課をまたいでフラットに紐づけて閲覧可能にすると言う。
二つ目に契約決裁の再発明とは、個人契約は自身で締結できるが、会社で結ぶ契約の場合は代表取締役や管理者が適切な権限に基づいて決裁しなければならない、という点に配慮したものだ。

クラウドサインは、社内稟議フローではなく、取引先と合意を結ぶためのサービスであり、誰が相手と契約を結ぶのかという点が重要となる。そこで、契約書類を受け取ったことを決裁者に知らせる「受信時ワークフロー機能」を年内に実装する予定とのことだ。決裁者を事前に設定することで、契約書類が自動転送され、その責任者が同意しなければ契約締結ができないという内部統制がかかる仕組みである。
「これまでクラウドサインでは、決裁権がないメンバーが契約書類を受信し、上長や法務の決裁なしに同意してしまうリスクがありました。これは世界中の電子契約サービスの共通課題でしたが、今回の受信時ワークフローという新しいアプローチによって解決できるのではないかと考えています」と、橘氏は説明する。

マイナンバーカード活用で、厳格な本人認証も可能に

最後に実印の再発明は、今回の最注目事項とも言えるものだ。従来の実印を用いた契約締結は、書類の手渡し・郵送→書類確認→押印・印鑑証明書を添付→書類送付・保管という流れだった。一方、クラウドサインでは、マイナンバーカードを活用することで、オンラインで完結できるデジタル時代の実印を再発明するという。
「まずメールやチャットでコミュニケーションを取り、スマホやPCで契約書の内容を確認します。さらに公的な証明として、マイナンバーカードに内蔵された電子証明書で本人を特定することで、すべてのプロセスがデジタルで完結できるのです」(橘氏)。

これによって事業者署名型のクラウドサインは、前出の当事者署名型電子署名に初参入することになり、マイナンバーカードによる厳格な本人認証が可能となるだろう。
同社では、「契約管理」「契約決裁」「実印の代替」という3つの主要機能をアップデートすることで、日本中で100年先まで続くような新しい電子契約インフラを築いていくという。同社のオフィスDXに対する果敢な挑戦に、引き続き注視していきたい。

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