富士通研究所とLARUS社、AIを活用し不正金融取引の解析性能を向上
2020/11/24
株式会社富士通研究所とイタリアのグラフデータに向けたソリューションベンダーであるLARUS Business Automation S.r.l.(以下、LARUS)は、富士通研究所が開発した説明可能なグラフAI技術「Deep Tensor(ディープ テンソル)」とLARUSのグラフデータベースプラットフォームを組み合わせることで、クレジットカードの決済サービスにおける不正を高精度に検出できることを共同で実証したと発表した。
今回、金融の分野で深刻な社会課題となっているクレジットカードの決済サービスにおける不正取引検知について共同で検証を行った結果、不正取引の分析を行うデータアナリストが手動で不正パターンのルールを定義する既存手法に対し、不正取引の検知率を72%から89%に向上させ、誤検知率を63%削減することができた。また、グラフAI技術により検知された不正事例の判断要因をあわせて提示することで、不正検知に関するルール作成の支援ができることを確認した。今後、両社で本技術の有効性について他の分野でも検証を進め、グラフデータ利活用に取り組んでいくという。
■背景
金融の分野においても、取引情報の関係性を解析することでより重要な情報を抽出することができるため、グラフデータベースの活用が進んでいる。特に、近年複雑化している不正取引を検知するためには、1件ごとの取引情報を解析するだけでは不十分で、取引間の関係をグラフ構造として解析する必要がある。例えば、不正取引のひとつである循環取引の場合、1件ごとの取引自体は通常取引のように見えても、グラフデータの中にループ構造が表れる。グラフデータベースを利用すると、こうしたループのようなグラフ構造のパターンから該当する不正取引を検出することができる。
これまでのデータアナリストの人手による不正取引パターンのルール作成には限界があり、見逃しや誤検知のリスクも懸念されているため、グラフAI技術による効率化が求められている。