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理研、ヒューマノイドロボットとAIによる自律細胞培養システムを開発

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センターバイオコンピューティング研究チームの髙橋恒一チームリーダー、落合幸治大学院生リサーチ・アソシエイト、網膜再生医療研究開発プロジェクトの許沢尚弘大学院生リサーチ・アソシエイトらの共同研究グループは、ヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)と人工知能(AI)ソフトウェアを組み合わせることで、人間の手と頭を介さない自律細胞培養システムを開発したと発表した。
本研究成果は、生物学実験の自動化による研究効率の向上、手法の標準化ならびに、遠隔実験・自動実験が要請されるコロナ時代の新研究スタイルの確立に資するものとして期待できるという。今回、共同研究グループは、これまで人間が行ってきた基礎研究における細胞培養の動作・判断を、ロボットとAIに置き換えるシステムを開発。これは、培養動作を行う「手」に相当する部分として既存の汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」を用い、細胞の観察結果を判断する「頭」に相当するAIソフトウェアを新たに開発し、結合させたものだ。本システムの性能の実証実験としてヒト胎児腎(HEK293A)細胞の維持培養を行い、実際に自律細胞培養が実行可能であることを示したとのことだ。
出典元:プレスリリース

■背景

再生医療で使用される組織や臓器の原料となる高品質な細胞の生産効率化は、再生医療の標準化と普及に向けた最重要課題の一つだ。しかし、現状では多くの場合、細胞の培養・製造は熟練細胞技術者による匠の技に依存している。この問題を解決する選択肢として、プロセスの機械化や自動化により、人間の判断や操作を減らしていく方法がある。これまでに、多くの自動培養装置が上市されているが、その多くは主に細胞製造や大量調製を指向した筐体(きょうたい)だった。これらのシステムでは、構成や用途が固定されていることが多く、決まった細胞を決まった手順で大量生産することに長けている一方で、手順が確定する前のいわゆる基礎研究や条件検討の段階での利用には向いていなかった。そこで、共同研究グループは、基礎研究における細胞培養の自動化に焦点をあて、ヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)と人工知能(AI)の統合による、自律的な細胞培養が実行可能なシステムの開発に取り組んだとのことだ。

■研究手法と成果

通常、人間による細胞培養では、細胞培養用プレートに播いた細胞を観察し、その増殖度合いに基づいた実験スケジュールの設定と判断を行い、細胞を新しいプレートに植え継ぐ操作(継代操作)を繰り返す。本研究では、この観察・判断・操作をロボットとAIに自律的に実行させることを試みた。
出典元:プレスリリース
将来的な動作の拡張性を検討し、ロボット筐体にはLabDroid「まほろ」を採用。LabDroid「まほろ」は人間のような双腕を備え、人間が使うピペットや細胞培養用プレートなどの実験器具をそのまま使用し、人間の実験操作を模倣することが可能だ。一方で、LabDroid「まほろ」は単なるロボットであり、人間による指示なしには動作することはできない。本研究では、LabDroid「まほろ」と、ロボットをコントロールする「頭脳」に相当するAIソフトウェアを組み合わせることで、自律細胞培養システムを構築した。今回開発したAIソフトウェアには、以下の五つの機能を実装した。
出典元:プレスリリース
これらのAIソフトウェアにより、以下の一連の繰り返し作業を人間の介入なしに自律的に実行することが可能になった。まず、AIソフトウェアは12時間ごとに顕微鏡による細胞観察をロボットに指示し、観察が実行される。顕微鏡画像から細胞面積値が算出され、細胞面積値から細胞の増殖曲線が予測される。この予測から、人間が事前に設定した細胞面積密度(プレート表面が細胞で占められている割合)の目標値に到達する至適継代操作実施時刻が算出される。至適継代操作実施時刻に到達すると、AIソフトウェアがロボットに継代操作を指示し、操作が実行される。

実際に本システムを用いて、ヒト胎児腎(HEK293A)細胞の自律培養を実行したところ、12時間ごとの細胞観察とその結果に基づいた指定細胞密度(80%)での継代操作が正しく実行されたという。9日間にわたる試験中に、重大なシステムエラーやコンタミネーションが発生することはなかったとのことだ。
出典元:プレスリリース

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