オフィスの空調をAIが制御する実証実験で「温度ムラの解消」と「約5割の消費エネルギー削減効果」を確認
2021/1/19
東京建物株式会社、株式会社TOKAIコミュニケーションズ、株式会社内田洋行は、東京建物八重洲ビル7階の東京建物ビル事業本部のオフィスフロアにて、AIによる空調制御の実証実験を実施した。今回の実証実験では、本フロアにおける温度ムラの解消と約5割の消費エネルギーの削減を達成しているという。
Contents
■実証実験の背景
■実証実験の今後の展開について
■実証実験の概要
・個別空調方式では、空調機とセンサーが1対1の関係で温度制御を行う方式が一般的だ。隣接する空調機がそれぞれに異なる設定温度を維持しようとした場合、相反する運転となり、空調費用が増加してしまう可能性がある。
・オフィスワーカーの人数やパソコン等の熱負荷の変化があった場合、即時に追従できない。
・AIを用いずに多数のセンサーデータで多数の空調機を制御しようとした場合、制御ロジックが過剰に複雑化してしまう。
②実証実験の詳細
本実証実験は第一段階として位置付け、夏と秋の空調を対象に実施した。下記の利点を享受できるAI技術により、AIの事前学習を行った後、2020年7月27日~11月27日の期間に、本フロア全体が26℃を中心に±2℃の範囲を維持するようにシステムを設計・運用した。なお、無線センサーは、ワイヤレス通信の技術を用いて、立って仕事をする場所や座って仕事をする場所などに合わせて、オフィスワーカーが温度を体感できる位置に設置している。
・室内に設置した多数の無線センサーのデータをもとに、多数の空調機をAIにて制御する空調機の群管理が可能
・無線センサーからデータを収集、インターネットを経由してクラウド上のAIへ送信、AIが空調機に対する操作指令を送信することで空調操作の自動化を実現
・大量のデータを基に統合的に空調機の群管理を行うことで、個人の感じ方の差に影響を受けず、データに基づいた制御を行うことが可能
・AIは強化学習モデルを利用しており、運用を続けることにより空調制御の精度が向上
■結果詳細
①「夏期における温度ムラの解消」(7月27日から8月31日まで実証)
AI制御の場合、室内の利用状況の変化等によって、一時的に26±2℃の目標温度帯を外れてしまう箇所が発生したケースでも、目標温度帯に速やかに復帰している。一方で、人が室温設定操作をした場合、暑く感じたオフィスワーカーが20℃に設定したケースでは、長時間にわたり26±2℃から外れたエリアが発生した。このように、AIが多量のデータを分析し、手動制御よりも高頻度(6分間に1回)での温度変更を行うことで、人が操作することを前提とした従来の空調制御では対応しきれなかったような環境変化にも追従できたものと判断している。
<表:手動制御とAI制御による温度調整差異>
下記グラフの通り、10月と11月の秋期において、AIによる空調制御を行った7階の空調消費電力は、東京建物が同規模の面積を利用している8-10階の平均と比べて消費エネルギーを50%程度に抑えることが出来た。早朝以外暖房を使わずほとんどの時間を冷房モードのみで26±2℃の目標温度帯を維持することが出来た。個人の感覚ではなく、データを基に不要な暖房を減らせたことが消費エネルギー削減の要因だという。
<東京建物八重洲ビルフロア別消費電力の変化(オレンジが本フロア消費電力)>