この取組は、政府の「AI戦略2019」に対応したものであり、モデルカリキュラムの内容の全てに対応した教材の公表は、全国で初めての試みだという。今後、東京大学が幹事校を務める数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムの活動の一環として、本教材を活用したワークショップ等を行い、具体的な活用方法も含めて広く全国に普及・展開する。これらの取組によって、日本の数理・データサイエンス・AI教育の底上げを図るとともに、教えることができる教員の不足を解消しデジタル改革の推進の一助となることを期待しているとのことだ。
IoT、AI等の情報科学技術の急速な発展、国際競争の熾烈化、デジタル改革の推進に伴い、数理・データサイエンス・AI人材の育成に対する社会的要請が高まっている。こうした中、東京大学は、2017年に複数の研究科が連携する全学的組織として「MIセンター」を設置。同センターは、東京大学全体の数理・情報教育の支援・促進に加えて、全国120(2021年4月時点)の国公私立大学・高等専門学校等からなるコンソーシアムの事務局として、会員校と連携・協力し、全ての大学が参照可能なモデルカリキュラムの策定、教材開発など、全国の数理・データサイエンス・AI教育の強化・質の向上に向けた取組を推進している。
今回、同センターは、コンソーシアムが2021年3月に策定した「数理・データサイエンス・AI(応用基礎レベル)モデルカリキュラム~AI×データ活用の実践~」に完全準拠した教材(スライド教材、実習用補助教材等)を開発し、ウェブサイトで公開した。
MIセンターでは、2020年4月にリテラシーレベルのモデルカリキュラムに準拠した教材を公開しており、今回開発された応用基礎レベルの教材と併せて、モデルカリキュラムの内容のすべてに対応した教材を完成させ、日本国内で初めて公開したことになるという。この取組は、コンソーシアムの主要な活動の1つであると同時に、政府の「AI戦略2019」に対応するものであり、人材育成規模に対する教員の不足などが課題とされる中、目標達成に資する重要な取組として位置付けることができるとのことだ。
コンソーシアムが策定したモデルカリキュラムには、獲得する知識・スキルをキーワードとして列記しており、その数はリテラシーレベルで84、応用基礎レベルで108に及ぶ。同センターが開発・公開した教材は、モデルカリキュラムの192のキーワードをすべて取り上げている。各大学の利便性を考慮し、キーワードと教材の対応等も掲載している。教材は、大学等での教育に当たり、クリエイティブ・コモンズ ライセンスの下で利用することができる。各大学等の授業内容に合わせてスライド教材をページ単位で使用できるなど、条件を設けずに自由に利用できることが特徴の1つだ。学生の自学自習での活用も期待される。コンソーシアムが策定したモデルカリキュラムについては、学修項目や知識・スキルが体系的・網羅的に整理されている一方で、実際の授業に際して内容や構成をどうすべきかわからない、モデルとなる教材がほしいなど意見が多くの大学等からあがっていたという。今回公開された教材は、こうした各大学の課題解決にも資するものであり、モデルカリキュラムを教材に落とし込むことでより一層の理解を図り、数理・データサイエンス・AI教育の全国への普及に貢献。また今後教材の利用者アンケートを随時行うことで、意見を反映して適宜改善する予定だという。