血糖モニタリングのProvigate、総額9.1億円の資金調達を実施

株式会社Provigateは、Sparx Group、ANRI、Coral Capitalより総額9.1億円の資金調達を実施したと発表した。

・社会問題としての糖尿病
糖尿病は、特に合併症が進展した場合などにQOLを著しく下げる疾患だ。その患者数は既に世界人口の6%(先進諸国では1割以上)に達しているというが、WHOによれば2030年にはさらに増加し、全人口の9%が糖尿病になると言われているとのことだ。糖尿病の直接的な医療費は世界83.6兆円(2019年)にも及び、77億人の世界人口一人当たりに換算すると、年間約1.1万円の負担となっている。この費用は特に先進諸国では大きく、米国や日本では年間の糖尿病医療費はそれぞれ約32.4兆円と約2.6兆円の規模であり、国民一人当たりにならせば、それぞれ約9.9万円及び約2.1万円の医療費となる。この糖尿病医療費の中で特に大きな割合を占めるのが、重症患者の治療費用だ。主に重症患者が必要とするインスリン薬剤費や糖尿病性腎症の透析費用だけでも世界で合わせて約7兆円の規模と見られるという。QOLの向上のみならず医療の持続性の観点からも、糖尿病の発症・重症化予防は喫緊の課題となっているとのことだ。

・隠れた「血糖測定難民」の存在
糖尿病の発症・重症化予防の重要な要素の一つは、日常的な血糖モニタリングだ。しかしその世界市場規模は約1.7兆円に留まり、実はほとんど重症患者にしか使われていないのが現状だという。これは今日の自己血糖モニタリングデバイスが「痛い」「高い」「難しい」という課題を抱えていることに加え、大半の糖尿病患者に対して保険適用外であることも要因の一つだという。国によって割合は異なるが、例えば日本では1千万人の糖尿病患者の9割程度は自己血糖測定が保険適用では無いと推察されるという。すなわち糖尿病患者の大半は、1~3カ月に一度の通院時にしか血糖を測定していないとのことだ。日々変動する血糖を測定することなく、血糖管理をしようとしているのが、今日の糖尿病患者の大半ともいえるという。株式会社Provigateでは、このような「血糖測定難民」ともいえる糖尿病のある人・予備群の人に、低侵襲・低コスト・簡便に使える在宅血糖測定の手段を提供する事を目指しているとのことだ。
出典元:プレスリリース
・課題解決のカギ:グリコアルブミン
Provigateが注目するのは血糖の管理指標の一つであるグリコアルブミン(糖化アルブミン、GA)だ。GAは日本で開発され普及したバイオマーカーであり、直近1~2週間の平均血糖や食後高血糖の変化をよく反映することが知られているという。今日では、主に病院や献血時検査で使われ、年間に約12百万回(うち約3百万回は献血時GA検査)ほど測定されていると推定されるという。

GAは、平均血糖指標のゴールドスタンダードであるHbA1c(糖化ヘモグロビン)と同様に、血中に存在する糖化タンパク質の一種。アルブミンやヘモグロビンは、血中でグルコースと出会うと糖化反応を起こしその表面にこれを保持するようになる。これらのタンパク質の表面にどのくらいのグルコースが結合しているかを調べると、その半減期に応じた平均血糖の指標とすることができる。赤血球に含まれるヘモグロビンの半減期は120日間程度と長いことから、HbA1cは特に直近1~2か月程度の平均血糖をよく示し、緩やかに変動する。一方、血中にむき出しで存在するアルブミンの半減期は14日間程度と短いうえ、グルコースとの反応性も高いことから、GAは直近1~2週間程度の平均血糖及び、食後高血糖の頻度も良く反映し、HbA1cに比し速やかに変動することが分かっているとのことだ。
出典元:プレスリリース
今日、GAはマイナーなバイオマーカーであり、HbA1cの補助的な診断指標として医療現場で使われているという。今日の糖尿病診療では通院間隔が1~3カ月であることもあって、糖尿病の長期的な状況を診断するにはHbA1cが優れている。HbA1cよりはるかにレスポンスが早いGAが用いられるのは、例えば治療の開始時や治療薬を変えた時など、短期的な血糖の改善を見たい場合や、透析患者等HbA1cが安定しない症例に限られていたとのことだ。

・「小テスト」としてのグリコアルブミン
しかし、改めてその原理を考えた時、GAは数日~1週間程度の血糖改善にレスポンス良く応答するため、週次で測定したときに初めてその真価を発揮するはずだという。Provigate・東京大学医学部附属病院・陣内会陣内病院の研究チームは、このGAの本質的な特長=週次平均血糖指標としての可能性に改めて着目し、GAをHbA1cの代替診断指標ではなく、家庭での「行動変容指標」として再定義した。

GAを用いれば、一般的な血糖計(SMBG)のように数時間おきに指先から採血をする必要はない。近年急速に普及してきた連続血糖計(CGM)のようにセンサ針を皮下に留置する必要もない。また数か月に一度通院してHbA1c等の血液検査を受けるのを待つ必要もないという。週に1度の在宅測定で週次血糖変動をモニタリングし、過去1週間の生活習慣を振り返ることができる。測定頻度が週1で良く、直近数時間の血糖値で大きく上下することなく、直近1週間の行動変容を反映して数値が滑らかかつ鋭敏に変化するので、低侵襲・低コスト・簡便な血糖測定の手段となることが期待されるという。HbA1cが病院で測定する「期末テスト」であれば、GAは家庭で週次の生活習慣の努力成果を計測する「小テスト」のような役割を持つことになるとのことだ。
出典元:プレスリリース
・開発するサービス
ProvigateではこのGAの特徴を活かし、糖尿病のある人及び予備群に対しIoT血糖モニタリングサービス「GlucoReview」の開発を進めている。低侵襲・低コスト・簡便にGA(週次平均血糖)を在宅測定できる本体・使い捨てカートリッジ・アプリを提供する事で、1~3カ月の通院間隔中の在宅自己血糖管理を力強くサポートするサービスの提供を目指している。
出典元:プレスリリース
Provigate・東大病院・陣内病院の共同研究開発チームでは、これまでにGAが血液のみならず涙液や唾液に含まれており相互に強い相関を持っていること、また、週次GA測定が糖尿病患者の行動変容を導き、GA値・体重・肝機能を改善する可能性を臨床研究にて検証し、有望なデータを得たという。また、従来GAは病院などに置かれる大型の臨床検査装置などでしか測定ができなかったが、これを技術革新によって小型化・低コスト化しクリニックや薬局の検体測定室、さらには在宅で測定することを目指し、コンセプト実証及びプロトタイプ検証を完了しているとのことだ。

今回の調達資金によって、GAセンサの量産化開発、臨床研究、製造販売承認の準備を進める。まずはクリニックや薬局向けの血液GA測定システムの製造販売承認を目指し、並行して家庭向けの開発も加速する。人材採用や、生産パートナー・販売パートナーなど業務提携・資本提携先の探索も進めているとのことだ。

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