矢野経済研究所、国内企業のIT投資に関する調査を実施

株式会社矢野経済研究所は、2022年度の国内民間企業のIT投資実態と今後の動向について調査を実施したと発表した。

国内民間IT市場規模推移と予測
出典元:プレスリリース
DXへ取り組む意欲~法人アンケート調査結果~
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■市場概況

国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、IT投資額ベースで、2021年度が前年度比4.5%増の13兆5,500億円と推計。新型コロナウイルス感染症の流行に伴うテレワークの普及で、テレワークに関するインフラへの投資が拡大した。本対応は、企業規模を問わず、緊急に対応を迫られたもので、市場に与えたインパクトも大きい。また、テレワークが難しい業種・業務においても、リモート対応を求められる機会が増え、ECの強化や、AIを活用したコールセンター向け投資、デジタルマーケティング関連への投資などが拡大した。2022年度もコロナ禍対策としての投資は一部継続すると予測。さらに、2021年度は、コロナ禍で停止していたプロジェクトが再開するなど、短期的なマイナスからも回復する傾向にあったとのことだ。

■注目トピック

・DXの意欲拡大

本調査ではDX(デジタルトランスフォーメーション)へ取り組む意欲を、革新的な取り組み(ITで新たなビジネスにチャレンジするなど)に対する意欲とIT刷新(基幹システムをSaaSにする、業務をクラウド中心にリニューアルするなど)に対する意欲の2つに分類し、国内の民間企業等512社に対し、アンケート調査(郵送・Web)を行った。

アンケートでは、革新的な取り組みへの意欲とIT刷新に対する意欲、それぞれについて8段階の数値(「8」が積極的、「5」が普通、「2」が消極的、初めて聞いたを「1」としている)で回答を得た。そのため、数値が大きいほど積極的であることを示している。

国内の民間企業等512社のうち、回答を得た488社の平均値は、それぞれ革新的な取り組みが4.39、IT刷新が4.57であった。どちらも「普通」に近い値を示している。また、0.18ポイントではあるが、IT刷新への意欲が革新的な取り組みへの意欲を上回っている。

​​2019年にも同様のアンケートを行い、国内の民間企業等543社のうち、回答を得た523社の平均値は、それぞれ革新的な取り組みが3.37、IT刷新が3.78だったという。2022年と2019年の平均値を比較すると、IT刷新に対する意欲は0.79ポイント、革新的な取り組みに対する意欲は1.02ポイント向上した。企業のDXに対する意欲は拡大しており、それは特に革新的な取り組みに表れている。

■将来展望

2022年度以降における国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、IT投資額ベースで、2022年度が前年度比4.0%増の14兆900億円、2023年度は同2.2%増の14兆4,000億円、2024年度は同1.4%増の14兆6,000億円と予測している。

​2022年度はデータを利活用し、競争力や顧客エンゲージメントを高める取り組みが目立つという。また、「電子帳簿保存法」や「インボイス制度」に対応するための投資も見込まれる。新型コロナウイルス感染症流行の影響を大きく受けたサービス業においても、業績に回復の兆しが見られ、人手不足、デジタルマーケティングに関する投資が伸びている。

また、好調なIT投資を支える要素には、セキュリティ対策やBCP(事業継続計画)対応も挙げられる。サイバー攻撃による被害が増加傾向にあることから、各規模・各業種で今後も投資が拡大していくと予測している。2023年度以降は、基幹システムやサーバーのリプレイス、セキュリティ対応などの他、データを活用した取り組みの必要性が高まるという。データを活用した取り組みに関しては、人材不足が課題に挙げられることも多く、ユーザ企業は、今後、IT人材の育成にも投資を行っていく。近年、リスキリングやリカレント教育が注目を集めていることもこの現れとのことだ。

調査要綱
調査期間:2022年6月~10月
調査対象:国内の民間企業等
調査方法:民間企業等に対するアンケートおよび文献調査併用

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