自動運転社会の到来に向けたトヨタの考え方や戦略について徹底解説!

自動運転は遠い未来の話ではなく、実現がすぐそこまで迫っていると考えることができます。どんな仕組みで動いているのか? あるいはどんな課題やメリットがあるのか把握することで、より理解が進むはずです。世の中を便利にする自動運転の動向に注目してみてはいかがでしょうか?

トヨタ自動車はフォルクス・ワーゲングループと世界販売台数を競い、1兆円を超える利益をあげる、文字通り、日本が世界に誇る大企業です。ハイブリッド車や燃料電池車にも積極的に投資し、技術力にも定評があります。ホンダやアウディが自動運転レベル3の量産車の販売に迫るなか、トヨタが自動運転に対して、どんな技術や戦略に打って出るのか、業界関係者でなくても気になるところではないでしょうか? そこでここではトヨタ自動車の自動運転技術や戦略について解説します。

トヨタ自動車の自動運転に対する考え方

トヨタ自動車は1990年代から交通事故死傷者ゼロを目標に、予防安全の技術とともに、自動運転の研究開発を行ってきました。現在は、「Mobility Teammate Concept」という考えに基づいて研究開発を進めていると言います。

コンセプトは「Mobility Teammate Concept」

「Mobility Teammate Concept」とは人と車が同じ目的を持ち、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係を築くという独自の自動運転の考え方をコンセプトにしています。

社会問題解消につながる自動運転

予防安全と自動運転の技術によって、すべての人の移動の自由が広がり、たとえば何らかの理由で運転に困難が伴い人に対して、運転をサポートすることで、より自立した生活を可能にします。これらの技術とトヨタが進めるコネクテッド技術を組み合わせることで、交通渋滞の軽減や排気ガスによる大気汚染の低減にも寄与すると同社は考えています。

認識技術やセンサー技術の研究・改善に注力

予防安全と自動運転については、トヨタグループで研究開発に取り組んでおり、シリコンバレーに本社のあるToyota Research Instituteが人工知能や自動運転・ロボティクスを、トヨタモーターヨーロッパでは認識技術を、豊田中央研究所ではセンサー技術の改善に注力しています。

トヨタ自動車の自動運転と安全へのアプローチ方法

トヨタでは「トヨタガーディアン」と「トヨタショーファー」と呼ばれる独自のアプローチで予防安全と自動運転システムを開発しています。

完全自動運転を目指す「トヨタショーファー」

人間による監視や緊急時の操作がなくても自律的に走行できる車両を目指しています。そして、それをとくに年齢や心身の健康状態などによって運転ができない人の移動に活用することを目標にしています。

安全性の向上を目指す「トヨタガーディアン」

「トヨタショーファー」と同じ基盤技術を使って、「Mobility Teammate Concept」のもとで「トヨタガーディアン」というシステムの開発も進められています。ドライバーの能力に代わるのではなく、拡充・強化することで安全性を向上させるという発想で設計されています。もし運転操作が能力の限界に近づいたとき、あるいは能力を超えたときにドライバーをシームレスにサポートします。

トヨタが会社として力を入れてる「CASE」戦略とは?

「CASE」は移動の未来を語る上で欠かせないキーワードのひとつで、2016年10月にフランス・パリで開催されたモーターショーの壇上でドイツのダイムラー社のCEOだったディーター・ツェッチェがはじめて口にした言葉です。CはConnected(接続性)、AはAutonomous(自動運転)、SはSharing(共有)、そしてEはElectric(電動化)を指しています。

Connected(接続性)はインターネットとの接続を意味し、車がリアルタイムでネットワークと繋がることで、事故情報や地図情報、気象情報など走行中に得られるあらゆるデータを送信したり、情報を受け取ることができるようになります。Autonomous(自動運転)は文字通り、人間の操作を必要としない自動運転です。Sharing(共有)は、車の新しい使い方のこと。これまでは車を個人で購入し利用するのが基本でした。これが必要なときだけ借りたり、みんなで共同所有するなど、車は所有するものから共有するものに変わることになります。最後のElectric(電動化)は、地球環境に優しいハイブリッド車や電気自動車(EV)を増やすことを意味します。

Connected(コネクティッド)

トヨタはConnected(コネクティッド)によって、あらゆるモビリティサービスをつなげることを目標にしており、その中心になるのが、統一プラットフォームの「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」です。トヨタは東南アジアでライドシェアを展開しているGrab社と提携して、ライドシェア車両向けのトータルケアサービスを行なっていますが、Grab社がドライバーに貸し出すレンタル車両をコネクティッド化して、MSPFに走行データを集約することで、メンテナンスの効率的に行うようなサービスを想定しています。

Autonomous/Automated(自動化)

Autonomous/Automated(自動化)の分野では、前述した「トヨタショーファー」と「トヨタガーディアン」によって、自動運転システムの開発が進められています。

Shared(シェアリング)

トヨタにおけるShared(シェアリング)がカーシェアリングサービスの「TOYOTA SHARE」です。スマホアプリで車の解錠や施錠を行い、15分から最長72時間まで車両を利用できるサービスです。また、無人版のレンタカーサービスとして「チョクノリ!」というサービスも展開しています。

Electric(電動化)

Electric(電動化)の分野では電気自動車の拡大が最大のプロジェクトです。2030年にはHVやPHV車両が450万台以上、EVとFCVで100万台以上、あわせて550万台以上の電気自動車を販売する目標を立てています。これによって、新車から排出される走行時のCO2が2050年には2010年の10%にまで削減されると言います。

トヨタのMaaS戦略に重要な「e-Palette Concept」とは?

トヨタは「自動車をつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」と宣言し、MaaSへの積極的な投資を行っていますが、どんなモビリティを開発していくのか、その理念を具現化したコンセプトモデルも発表しています。それが2018年1月にラスベガスで開催されたCES 2018で公開された「e-Palette(イーパレット)Concept」です。

MaaSのコンセプトカー

e-Palette(イーパレット)はAutonomous Vehicle(自動運転車)とMaaSを融合させたトヨタが掲げる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語「Autono-MaaS」を具現化するコンセプトカーです。そのため、車体には電動化、コネクテッド化、自動運転化が施されています。

なお、CES 2018で発表されたe-Paletteのサイズは全長が4800ミリ、全幅が2000ミリ、そして全高2250ミリで、低床の箱型デザインになっており、室内空間が広く取られています。また異なるサイズの車両を用意することも可能で、用途や乗車人数によって選択することができます。さらに用途は乗合を想定したライドシェア用のほか、ホテル仕様、リテールショップ仕様など複数のデザインがあり、移動だけではなく、物流や物販といった目的でも使用することができます。

すでに初期パートナーとしてアマゾンやファストフードチェーンのピザハット、ウーバー、中国ライドシェア大手のディディ、そして日本のマツダが参加しており、企画段階から実験車両による実証実験まで共同で開発を進めることが発表されています。

他社製の自動運転キットを搭載できる

e-Paletteの発表に際し、トヨタはこれまで培ってきた高い安全性で車両を制御する技術を使って開発した「車両制御インターフェース」を自動運転キット開発会社に開示しています。これによって自動運転キットを開発している会社は車両状態や車両制御に関する情報を得ることができ、自動運転制御ソフトウェアやセンサーなど自社で開発したキットをe-Paletteに搭載できることになっています。

ソフトウェアの自動運転システムを常に最新に保てる

OTAと呼ばれる無線通信によってソフトウェアの更新を行う仕組みを使って、ソフトウェアを常に最新の状態に更新することができます。さらに外部からのサイバーセキュリティ対策や高度安全運転支援機能(ガーディアン)も備えている点も特徴です。

モビリティ・カンパニーへの移行を示している

e-Palette Conceptの仕様や初期パートナーとして参加する企業の顔ぶれを見ると、トヨタが「自動車をつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」と宣言し、今後、どんなビジネスに注力していくのか、その戦力の一端をうかがい知ることができます。これまで培ってきた自動車づくりの技術やノウハウをハブにしながら、移動に付随するさまざまなビジネスに関わっていくでしょう。

トヨタ自動車も取り組む「MaaS」とは?

MaaSはMobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の頭文字を取った略語で、「サービスとしての移動」と訳されています。2016年にフィンランドではじまった実証実験を機に世界に広まった概念で、最先端の情報通信技術を使って移動を効率化することを目指しています。交通インフラの整備や新しい輸送モビリティの開発、自動運転なども関係するため、都市計画のアイディアだと捉えられがちですが、あらゆる交通手段の統合・最適化から予約・案内・決済までをシームレスに実現しようとするものです。

サービスとして移動を提供すること

現在でも、電車やバス、飛行機など自家用車以外の複数の交通機関を使って移動する場合には、ひとつひとつ時刻表を辿って行程を導き出さなくても、アプリのルート検索を使えば、目的地までの移動方法や所要時間を調べることができます。それでも、予約やチケット購入は、それぞれの事業者ごとに窓口やネットで行う必要があり、非効率だと考えられます。したがって、情報通信技術を活用し、ルート検索から予約、そして支払いまでをワンストップで提供し、ひいては都市部で発生している交通渋滞の緩和、自動車の削減や電気自動車の導入による排気ガスの低減、衰退する地方交通の再構築など、現代社会が抱える諸問題まで解決しようとするのが、MaaSの考え方です。

車を所有する必要がなくなる

自家用車は好きなときに移動に使え、利便性が高い一方で維持するためには非常にコストがかかる資産です。車両代、駐車場代、ガソリン代、保険料、メンテナンス費など、公共交通機関を利用する場合と比べると、何かとお金がかかります。MaaSによって、公共交通の利便性が飛躍的に高まり、自家用車と遜色のない利便性を獲得できれば、車を所有する必要がなくなります。駐車場として利用してスペースも別の用途に使うことができるでしょう。とくに高齢者は自分で運転することに不安を抱えています。それでも代替する交通機関がなく、やむを得ず自家用車を所有している人もいるはずです。MaaSが実現によって、車を手放すという選択肢も生まれてきます。

移動が効率化する

目的地まで移動する際に、ルート案内のアプリを使えば、最短のルートを案内してくれます。以前よりも効率的に移動することができるようになってきましたが、それはあくまで現状の交通網のなかでの話です。エリアによっては交通機関を使った直線的なルートがなく、大きく迂回しなければたどり着けないこともあるでしょう。MaaSでは自動車やバス、鉄道、飛行機などの各交通手段を、移動するためのサービス・コンテンツと捉えることで、より効率的な移動を目指します。パーソナルビークル、ドローン型輸送機など新たな移動体の開発も視野に入れながら、利用者により効率的な移動の選択肢を与えていきます。予約や決済なども一元管理する統一されたプラットフォームに乗せることで、いっそうの利便性をもたらすことになります。

交通渋滞の緩和につながる

MaaSでは電車の運行状況やバスやタクシーの現在地情報など、あらゆる交通データを取得しながら、移動の効率化を目指します。その結果、自家用車の利用が減り、遅延の少ない最適なルートをすべての車が通るため、渋滞が緩和されます。さらに自動運転も車に備わることで、交通事故の減少にもつながると考えられています。交通事故は渋滞原因のひとつのため、効率的な移動にとって大きな影響があります。

環境汚染を抑制できる

車やトラック、バスなどの排気ガスは渋滞が緩和されれば、当然、減少します。また車の台数自体も減ると考えられているため、排気ガスのいっそうの削減が可能となります。電気自動車やハイブリッドカーも導入されるため、環境汚染対策につながります。

トヨタの自動運転に対する戦略を知っておこう

トヨタは自動車産業のリーディングカンパニーだけあって、自動運転に対する戦略も独自の路線を突き進んでいます。今後もトヨタの自動運転に対する戦略から目が離せません。

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