エコシステムとは？ビジネスにおける意味や企業の成功事例を分かりやすく解説！

エコシステムとは？

元々は生態系に関する言葉であったエコシステムは、近年ではITやクラウドの領域で使用されることが増加してきました。エコシステムについて理解することで、市場への影響やIT・クラウド分野への理解を深めることができます。以下では、エコシステムの語源に加えて、ビジネスにおけるエコシステムが重要になっている理由について詳しく解説していきます。

エコシステムの語源

エコシステムという言葉は、本来であれば生態系に由来するものです。その意味としては、同じ領域に暮らしている生物が、互いに依存しあって生きている状態を表しています。

自然界において、ほとんどの生物は一つの種のみでは生きることができません。大気や気候、土壌といった環境から栄養を吸収している微生物、そしてそれを捕食する虫、さらにその虫を捕食する動物など、生物はお互いに依存しつつ生きています。もし、一つの種が滅んでしまえば、その種に依存している生物から連鎖し、生態系全体のバランスが乱れる可能性もあります。

このように、ある領域(地域や空間など)の生き物や植物が、互いに依存しつつ生態系を維持している関係のことをエコシステムと呼ぶのです。

ビジネス・ITにおけるエコシステム

上記をビジネスやIT分野に重ねて、プロダクトや業界、サービスなど、さまざま連携をすることによって大きな収益の構造となることをビジネス界においてのエコシステムと呼んでいます。
同じ分野の企業の製品同士が連携することもありますし、異業種がそれぞれのノウハウを共有しながら、収益を上げることもあります。

IT業界においては、例えばスマートフォン・メール・インターネットなど、各種機能が連携し合うことでサービスを発展させたり、生き残っていくことができるのです。また、複数の企業が協業を行うことで、領域を拡大させ、新たな価値を生み出すことにもつながります。

このように、エコシステムは他のサービスと連携することでそれぞれが利益を出すことを可能にし、お互いの存続と繁栄を支えることができるため、近年注目が集まっているのです。

エコシステムの形成が必要とされる背景

エコシステムが必要とされる背景には、テクノロジーが発達したことであらゆるサービスやプロダクトが単独の会社で成立しなくなったことが起因しています。現代においては、ビジネスモデルを形成するための技術が複雑化し、単独でサービスを開発したり販売したりすることが難しくなりました。

そうした状況もあって、近年では、一つの企業だけではなく複数の企業がお互いに協力することが必要になっています。

エコシステムを形成するメリット

上記のように、近年においては必要性の高まるエコシステムですが、エコシステムを形成することによって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか？

以下ではエコシステムのメリットについて詳しく解説していきます。

①スピーディーなサービスの開発・改良が可能となる
エコシステムのメリット
②時代に合わせた新たなビジネスモデルを生み出すきっかけが広がる

①スピーディーなサービスの開発・改良が可能となる

技術の高度化やテクノロジーの発展が続くこの時代において、プロダクトライフサイクルの短期化から、自社単独で革新的なサービスの開発や改良を行っていくことは難しくなっています。協業する企業が集まり、各々の企業の得意分野を掛け合わせることで、サービスやプロダクトのスピーディーなアップデートが可能となります。

②時代に合わせた新たなビジネスモデルを生み出すきっかけが広がる

エコシステムを形成することができれば、新たなビジネスモデルを生み出すことも可能になります。これは、社外の数多くのアイデアや技術を集めることで視野が広がり、新しいプロダクトやサービス、ビジネスモデルを作り出すことができるからです。
ユーザーの消費行動が変化するなかで、多様化するユーザーのニーズに対応できることや、斬新な構想は変革を起こす種となり、市場を創出していく可能性も広がります。

ビジネスにおけるエコシステムの具体的な成功事例

では、実際の事例としてはどのようなものがあるのでしょうか。実は、意外と身近なものでもエコシステムが形成されているサービスは多く存在しています。以下では具体的なエコシステムの事例を紹介していきます。

Apple社におけるエコシステム

Apple社においても、さまざまなサービスにエコシステムの実例が見られます。例えば、「iPhone」においてはその制作においてカメラやスクリーン、販売など、数多くの企業と連携しています。一つの製品に対して、複数の企業やデバイスが連動しているため、エコシステムの実例であると言えるでしょう。

また、Apple社では「iPhone」をはじめとして、「MacBook」や「iPad」など、製品それぞれの役割や提供価値によって一つのエコシステムとなっています。このように、ユーザーの視点からみて、それぞれのサービスが連鎖している例においてもエコシステムが形成されているのです。

どちらの実例においてもApple社が中心となりエコシステムを形成していることによって、ユーザーの満足度を高めることにつながっています。

Amazon社におけるエコシステム

Amazon社では、端末やOS、ネットワークなど各分野でエコシステムが形成されています。クラウドサービスやECを提供するプラットフォームを強化し、企業を呼び込むような戦略をとっているのがAmazon社の特徴と言えるでしょう。

特に、AIスピーカーである「Amazon Echo」においては、他社と比較しても先進的なシステム作りが行われています。「Amazon Echo」を中心として、小型スピーカーのEcho dot、スクリーン画面がついているEcho Show、カメラが搭載されているEcho Lookなど、幅広い商品開発が行われています。

企業がエコシステムを導入する手順・コツ

ここまでメリットや成功事例をあげてきましたが、導入にはコストや労力が必要になるのでしっかりと検討していくことが重要となります。以下では具体的にどのようにエコシステムを導入するかについて解説していきます。

（１）自社のポジションを把握する

エコシステムを導入する前に、まず行うべきは自社のポジションを正確に把握することです。

市場環境をみて、どのようなサービスやプロダクトがエコシステムにおける中心の役割を担っているのか、また、現在、自社で中核となっているサービスの周辺を固める存在は何になるのか
を分析することが大切になります。
それぞれを細かく把握しておくことで、自社の状態を理解することができるでしょう。

（２）適切なエコシステムを検討する

自社のポジションを明確にすることができれば、次にどのようなエコシステムが最も適しているのかを見極める必要があります。このような見極めを行うことで、自社へのシナジー効果を最大限高めることができるのです。

すでに提供されているエコシステムなどを検討しながら、協業する場合自社はどのように参画できるのかについて考えると良いでしょう。そのようにエコシステムに参画する場合には、無償で行えるわけではなく、一定の資金が必要になる場合もあるため、注意しておく必要があります。

もし、ある程度の資金が必要になるのであれば、その投資に対してどれほどの効果が得られるのかを検討しておくことも、最適なエコシステムを見極める上で非常に大切な要素となるでしょう。

（３）自社に生じるメリットを確認する

最適なエコシステムの見極めが終われば、そのエコシステムを導入することで得られるメリットはどのようなものなのかを確認しましょう。

エコシステムを導入する際には、多額のコストや労力が必要になります。そのため、導入には社内の協力が欠かせません。導入を周知した上で、コストの最適化や情報を共有するための手段の確認などを行いましょう。もし導入したにもかかわらず大したメリットが得られないのであれば、このような時間と労力は全て無駄になってしまうことになります。

また、社内だけではなく、協業する場合には企業間同士の連携も必要になります。効率的に業務を遂行するためには、わかりやすい業務フローを整える必要があるでしょう。社内外のどちらもスムーズに作業が行えるようにあらかじめ準備しておくことが大切です。

おわりに

今回は、デジタル時代に欠かせない協業のあり方としてエコシステムをご紹介しました。
不確実性が高い世の中であっても、エコシステムを検討することで、異なるプロダクトやサービスが新たな価値を生み、革新的なビジネスモデルを生み出す可能性につながるなど、メリットは大きいです。

一方で、導入する際には自社のポジションをしっかりと分析することが大切です。そのような注意点をあらかじめ理解した上で、エコシステムを形成していくかどうかを検討していきましょう。