イノベーション

デジタルシフト未来マガジン〜カスタマイズ・シャンプー〜

AIやIoT、VR/ARといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどだ。「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
今回は、国内外で登場している「カスタマイズ・シャンプー」です。カスタマイズ・シャンプーとは、消費者それぞれに成分を調整して提供されるシャンプーのこと。日本のヘアケア商品の市場規模は2018年で約1240億円で、シャンプーの商品数は1万点以上。商品が乱立している状態で、消費者が「自分に合うシャンプー」を探しにくい状況であると言えるでしょう。ここに目をつけ、各消費者の髪質や環境に合わせたシャンプーを提供する企業が出てきています。

・【概要】カスタマイズ・シャンプー

アメリカで有名なカスタマイズ・シャンプーのスタートアップは2社。「Prose(プローゼ)」と「Function of beauty(ファンクションオブビューティー)」です。

Proseは、ユーザーごとにカスタマイズしたシャンプーを届けるECブランドで、2017年に創業し、創業後2年で、約25億円の資金調達をおこなっています。商品は累計11万本を販売しています。Function of beautyは、2015年創業で、スタートアップ支援で世界的に有名な「Yコンビネーター」の卒業生です。今までに合計で12億円もの資金を調達。アメリカはもちろんのこと、カナダ・イギリス・オーストラリアなどグローバルに向けて展開していて、日本進出も準備中です。

日本でも、7つの質問に答えることでカスタマイズされたオリジナルシャンプー&トリートメントを届ける「MEDULLA(メデュラ)」、ユーザー自身が約2万通りのカスタマイズから選ぶシャンプー&コンディショナー「mixx(ミクス)」など、複数のD2Cブランドが立ち上がっています。

・共通する“デジタルシフト”なポイント

カスタマイズ・シャンプーを実現する重要なポイントは、「ブランディング」と「データ活用」、そして「ユーザー体験」の3つです。
■ポイント1:「ブランディング」
カスタマイズ・シャンプーを手がけるブランドは、他のD2Cブランドとも同じく、ブランディングを重視したマーケティング戦略を取っています。オンライン上で販売促進から刈り取りまでを実施する従来の戦略とは一線を画しているのです。

ブランドを確立するために、メディアやSNSを積極的に活用することはもちろん、様々なチャネルを駆使しています。例えば、美容院や美容師を通じた手法で、この連載でも紹介した「HEYDAY」とも連携しています。HEYDAYは大都市でサロンを展開していて、利用客に自社・他社の商品を販売しています。HEYDAYの店舗自体がひとつのチャネルになっていて、様々なD2Cブランドが活用しています。

■ポイント2:「データ活用」
商品をカスタマイズするために欠かせないのが、ユーザーの「データ」です。使用前のアンケートから使用後のフィードバックまで、すべての工程でデータを取得し、利用しています。いかにデータを活用するかが他のブランドとの差別化のポイントとなっています。

先ほど紹介したProseは、ユーザーにアンケートを行い、回答によって成分をカスタマイズしています。アンケート項目は「髪質、洗髪の仕方や頻度、理想像、生活習慣、居住地域の気候(気温、風、天候など)」などです。ブランドによっては、カスタマイズの工程にAIを活用しているところもあります。

■ポイント3:「ユーザー体験」
商品をユーザーに直接届けるD2Cブランドでは、商品そのものだけではなく、購入前から購入時、さらに使用後に到るまでの一連のユーザー体験が重要になります。商品が届いて箱を開けて、手に取るところから使用体験は始まっています。梱包や、開けたときの香りにまで力を入れているのです。また、使用後にはユーザーからフィードバックを得ることで成分をチューニングし、さらにカスタマイズの精度を上げていくのです。そして、こうした体験をユーザーがシェアすることで、商品の認知が広がり、確固たるブランドが築かれていきます。

・製造について

カスタマイズ・シャンプーの肝心の製造部分には、通販化粧品やヘアケア商品の製造を専門にする企業が存在しています。製造には許可が必要なため、生産は別の企業に任せることが多いのです。しかし、日本でも、製造を委託していた企業が、許可を得ずに生産していて、許可証も偽造していたことが発覚したケースもあります。D2CやOEMを始めることは、ハードルが低く感じられますが、思わぬところに注意しなければならないポイントがあることを覚えておかなければならないでしょう。

プロフィール

石原 靖士(Yasushi Ishihara)
株式会社オプト 執行役員
株式会社オプトホールディング 執行役員

ソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)にてネットワークエンジニアとして従事。2006年にオプト(現オプトホールディング)入社。2010年にデジミホ(旧オプトグループ)取締役に就任。2015年にオプト執行役員に就任し、テクノロジー開発・オペレーション・クリエイティブ領域を管掌。2019年からは事業開発領域を管掌。2019年4月よりオプトグループ執行役員を兼務しデジタルシフト変革領域管掌。