CES2020現地レポート② アマゾンVSトヨタVSソニー

米ラスベガスで開催されている世界最大級の家電・技術見本市CES(Consumer Electronics Show)の開催初日。今回特に注目されているブースがモビリティの未来を想起させた、アマゾン、トヨタ、そしてソニーだ。見どころを、立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏の解説で現地からお届けする。
※デジタルシフトタイムズでは、CES2020の開催期間中の模様を現地からリアルタイムで発信します。ぜひ、記事と合わせ、Facebookの公式アカウントをチェックしてください。

TOYOTA

TOYOTAは現地時間で1月6日に、2021年の初頭、静岡県裾野市の工場跡地に「コネクティッド・シティ」を建設するという非常に大胆なビジョンを発表した。驚いたのはそのビジョンだけでなく、着工が来年という社会実装の早さにある。

ブースではモビリティサービス専用のEV車「e-Palette」が展示されている。2年前のCES2018にて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの年に「e-Palette」を展開するという発表をしていた。その際発表されたのはコンセプトカー止まりだったが、今年の7月にお台場にて社会実装を始める「e-Palette」がそのまま展示されている。

ブース全体は静岡県裾野市にて着工される「コネクティッド・シティ」をイメージした雰囲気になっており、数あるブースの中でも注目を集めている。「コネクティッド・シティ」の名前に込められた意味として、静岡県裾野市から日本中、世界中につなげていくということで、スマートシティのエコシステムを構築しようという大胆なビジョンが感じられた。

Amazon

画期的なのは、Amazonのブースであるにも関わらず、出資先であるRivianの電気自動車を展示していること。昨年2019年の9月19日にAmazonはRivianの電気自動車を10万台購入することを発表し、すでに実施もしている。1月6日に、ソニーからも電気自動車の発表が行われ、米国で話題になっているものの、Amazonはすでに実用化段階に入っており、さらにその先を行っている印象がある。

今までAmazonは、CESではAlexaの発表などを行なってきたが、今回はEV自動車メーカーであるRivianを担いで、Amazonのブースの中で発表していることが画期的な点。Amazonはテクノロジー企業であり、EC小売企業であり、やはりロジスティクス企業である。ロジスティクス企業として自動運転車やEV車に展開するのは既定路線。その一方でAmazonはサステナビリティランキングでは非常に低評価にとどまっていたが、これからは地球環境問題にも会社の芯から取り組むのだという宣言をし、同時にRivianの電気自動車を10万台購入することを発表している。このタイミングでの導入には、地球環境問題に会社として取り組もうという姿勢が現れており、従来のAmazonとは違う姿勢を見せていて、高く評価できるポイントだと思います。

SONY

現地時間で1月6日に開催されたCES2020のプレカンファレンスの中で発表された「VISION-S」に度肝を抜かれた。米国のマーケットでも相当話題になっている。従来ソニーがCESで発表してきたのは、シーモスセンサーやテレビ、ロボットなどだったが、今年は自動運転機能付きの電気自動車を発表してきた。しかも試行車の展示を行なっている。昨年からすでにSamsung(韓国)などが、EV車や自動運転車などの展示をしていたが、あくまでもコンセプトカー止まりだった。そんな中、ソニーは水面下で準備して、その先の段階のものを持ってきたことで、本気度が伺える。

着目すべきは、ソニーがここまでの電気自動車を作ってきたということが、すでに自動車業界の業界構造が破壊されていることの示唆の一つであるということ。私自身、非常に度肝を抜かれたし、CESの中でも大きく話題になっている。

非常に嬉しいサプライズである一方、プラットフォーマーまでは狙ってないのかなと感じた。今のソニーの収益構造では、最大のセグメントはゲーム、音楽、金融、半導体となっている。スマホのシェアは1%しか取れなかった。どちらかというとデバイスメーカーや音楽、ゲームメーカーになっているのがソニー。電気自動車、モビリティの業界でどのような戦略を取ろうとしているのかを読み解くと、やはりCMOSセンサーなど基幹的な重要部品で収益をあげる、さらにハードのメーカーとして勝負をかけていくのかと思う。

ただ、次世代自動車であるオートノマスやコネクテドやEV車において、一番重要なのはいかにエコシステムやプラットフォームの領域を獲得できるのか。ソニーはスマホでシェアを取れなかっただけに、部品で儲ける、もしくはニッチな一部の消費者に向けたハードメーカーになるということしか、今回のブース展示ではうかがい知れなかった。日本人としては、日本の代表的な会社であるソニーには、プラットフォーマーとして頑張ってほしいと思う。部品やハードだけではなく、ぜひ次世代自動車のOSやプラットフォームの会社まで狙っていただきたい。

人気記事

TVer 取締役とテレ東名物Pが語る、テレビと配信の未来【前編】 YouTubeもNetflixも、テレビの敵ではない?

TVer 取締役とテレ東名物Pが語る、テレビと配信の未来【前編】 YouTubeもNetflixも、テレビの敵ではない?

テレビが「お茶の間の王様」とされていたのも今は昔。2021年5月にNHK放送文化研究所が発表した「10代、20代の半数がほぼテレビを見ない」という調査結果は大きな話題を呼びました。そんなテレビの今を「中の人」たちはどのように受け止めているのでしょうか。そこでお話を伺うのが、民放公式テレビポータル「TVer」の取締役事業本部長である蜷川 新治郎氏とテレビ東京のクリエイティブプロデューサーを務める伊藤 隆行氏。前編では、コネクテッドTVの登場によって起きた変化や、YouTubeやNetflixといった競合コンテンツとの向き合い方についてお届けします。

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

「8割以上の精度で、赤ちゃんが泣く理由が判明」CES2021イノベーションアワード受賞。注目の日本発ベビーテック企業とは

テクノロジーの力で子育てを変えていく。そんなミッションを掲げ、泣き声診断アプリや赤ちゃん向けスマートベッドライトなど、画期的なプロダクトを世に送り出してきたファーストアセント社。「CES2021 Innovation Awards」を受賞するなど、世界的に注目を集めるベビーテック企業である同社の強さの秘密とは。服部 伴之代表にお話を伺いました。

なぜ日本企業のDXはうまくいかないのか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO 石角友愛氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授が、要因を徹底解説

なぜ日本企業のDXはうまくいかないのか。シリコンバレーで活躍するパロアルトインサイトCEO 石角友愛氏と立教大学ビジネススクール田中道昭教授が、要因を徹底解説

緊急事態宣言の度重なる延長、オリンピック開催是非の議論と、依然混沌とした状況が続く日本とは裏腹に、シリコンバレーではワクチンの複数回摂取が進み、市民がマスクなしで屋外を出歩く風景が見られ始めているそうです。コロナ禍と呼ばれる約1年半の間、アメリカのメガテック企業、ベンチャー企業はどのような進化を遂げたのか。DXを迫られる日本企業は何を学ぶべきなのか。『いまこそ知りたいDX戦略』、『“経験ゼロ”から始めるAI時代の新キャリアデザイン』の著者であり、パロアルトインサイトCEO、AIビジネスデザイナーの石角友愛さんをゲストに迎え、立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

「銀行は将来、もはや銀行である必要がない」デジタル時代の金融に求められるものとは。SMBCグループ谷崎CDIO×東大・松尾教授×デジタルホールディングス 鉢嶺

「銀行は将来、もはや銀行である必要がない」デジタル時代の金融に求められるものとは。SMBCグループ谷崎CDIO×東大・松尾教授×デジタルホールディングス 鉢嶺

コロナ禍を経て、全世界のあらゆる産業においてその必要性がますます高まっているDX。DXとは、単なるITツールの活用ではなく、ビジネスそのものを変革することであり、産業構造をも変えていくほどの力と可能性があります。そして、全ての日本企業が、環境の変化を的確に捉え、業界の枠を超え、積極的に自らを変革していく必要があります。 今回は、AIの第一人者であり東京大学大学院教授である松尾 豊氏にご協力いただき、デジタルホールディングス代表取締役会長 鉢嶺 登氏と共に、金融業界大手の中でいち早くデジタル化に着手した三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)の谷崎 勝教CDIO(Chief Digital Innovation Officer)にお話を伺います。DXの必要性を社内でどう伝え、どのように人材育成を進めてきたのか、また金融・銀行業界はDXによってどう変わっていくのか。デジタルならではのメリットとは。SMBCグループの取り組みに迫ります。

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタルネイティブ企業が金融業に参入し、キャッシュレス化が加速するなか、アコムが描く未来戦略とは

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタルネイティブ企業が金融業に参入し、キャッシュレス化が加速するなか、アコムが描く未来戦略とは

2021年6月23日開催のアコム株式会社の株主総会および総会終了後の取締役会において、木下政孝氏が新社長に就任しました。1993年に業界で初めて自動契約機「むじんくん」を導入し、2016年に「イノベーション企画室」を設立するなど、金融業界でも積極的に新しい取り組みやデジタルシフトを推進してきたアコム。新社長である木下氏は今どんな想いで会社のトップに立つのか。激動のコロナ禍を経た上で見えた、デジタルでは担えない、人の役割とは何なのか。立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

コロナ禍でラジオが復権!? 民放ラジオ業界70年の歴史を塗り替えたradiko(ラジコ)の「共存共栄型 DX」とは

Clubhouseをはじめ、新勢力が次々と参入し、拡大を見せる音声コンテンツ市場。その中で、民放開始から70年の歴史に「大変革」を巻き起こしているのが“ラジオ”です。放送エリアの壁を取り払う、リアルタイムでなくても番組を聴けるようにするといった機能で、ラジオをデジタル時代に即したサービスに生まれ変わらせたのは、PCやスマートフォンなどで番組を配信する『radiko(ラジコ)』。今回は、株式会社radiko 代表取締役社長の青木 貴博氏に、現在までのデジタルシフトの歩みと将来の展望について、お話を伺いました。

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

世界のMaaS先進事例7選。鉄道・バス・タクシーなど交通手段を統合したサブスクモデルも!

国内でMaaS(Mobility as a Service)実証が活発化している。新たな交通社会を見据え、既存の交通サービスの在り方を見直す変革の時期を迎えているのだ。 交通社会は今後どのように変わっていくのか。MaaSの基礎知識について解説した上で、海外のMaaSに関する事例を参照し、その変化の方向性を探っていこう。

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタル時代においても求められる「お客さま第一義」とは何か

アコム新社長 木下政孝氏×立教大学ビジネススクール田中道昭教授対談。デジタル時代においても求められる「お客さま第一義」とは何か

2021年6月23日開催のアコム株式会社の株主総会および総会終了後の取締役会において、木下政孝氏が新社長に就任しました。1993年に業界で初めて自動契約機「むじんくん」を導入し、2016年に「イノベーション企画室」を設立するなど、金融業界でも積極的に新しい取り組みやデジタルシフトを推進してきたアコム。新社長である木下氏は今どんな想いで会社のトップに立つのか。激動のコロナ禍を経た上で見えた、デジタルでは担えない、人の役割とは何なのか。立教大学ビジネススクール田中道昭教授がお話を伺います。

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

Googleやビル・ゲイツも出資する“代替肉”スタートアップ「インポッシブル・フーズ」〜海外ユニコーンウォッチ#2〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてのfacebookやTwitter、現在ではUberがその代表と言われている。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回は欧米を中心に注目されている「代替肉」を扱う「インポッシブル・フーズ」を紹介する。