マイクロソフトからの買収固辞、新規株式公開も!? コミュニケーションツール「Discord」とは何か 〜海外ユニコーンウォッチ #5〜
2021/11/18
「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回はコミュニケーションツール「Discord(ディスコード)」を紹介する。
マイクロソフトも注目の急成長スタートアップ、Discordとは
CEOで共同創業者のジェイソン・シトロン氏は、Discordを立ち上げる前に「OpenFeint」というモバイルゲームプラットフォームを創業し、CEOを務めていた。このOpenFeintは、2011年にGREEが1億400万ドルで買収している。その後、シトロン氏は2015年にDiscordの提供を開始した。Discordを手掛け始めたきっかけは、「オンラインでゲームをしながら、世界中の友人と円滑にコミュニケーションをとれないだろうか?」という疑問だったという。その当時、オンラインゲームプレイ中のコミュニケーションに利用できるサービスは、低速かつ不安定なものばかりであったため、勝機があると確信したとのことだ。
Discordは、他のオンラインサービスと同様、新型コロナウイルス感染症の影響による「巣ごもり需要」を追い風にユーザー数を伸ばし、2020年には1憶4,000万ドルの資金調達を実施。会社評価額も大きく伸ばし、70億ドルに達した。さらに2021年、Discordに対してマイクロソフトが100億ドル以上での買収を提示し、交渉中であると報じられた。最終的に合意には至らなかったが、Discordへの注目の高さがうかがえる一件だった。
一方で、ソニーはDiscordの資金調達(シリーズH)に参加し、マイノリティ出資を行った。新たなパートナーシップを締結し、今後、Discordとプレイステーションの連携を深めるとのことだ。ゲームユーザーに人気のDiscordはメーカーにとっても重要な存在となっている。
ビジネスツールとしても利用される、Discordの特徴
また、Discordを使って友人と話すだけではなく、Discord上で話し相手を探すこともできる。他の人がつくったグループに入り、交流することができるのだ。そのため、Discord内でさまざまなつながりが生まれることも、ユーザーがDiscordを利用する理由の一つとなっている。Discordをビジネスツールとして利用している人もいるが、同じビジネス向けのコミュニケーションツールでも、不特定多数とつながることを前提としていないZoomやSlackとは大きく異なる側面だ。
ゲームユーザー向けから全コミュニティのサービスへ
さらに、2021年5月、Discordは6周年を迎えるとともに、ロゴやイメージカラーを一新。新しいスローガン「Imagine a Place(想像してみてください)」を掲げた。この新しいスローガンについて、Discordは「Imagine a Placeは、Discordが世界中にいるたくさんの人々にとって、多くの異なる意味を持つという事実を体現する、私たちの新しいスローガンです」と説明し、ゲームに限らないさまざまなユーザーに利用されることを目指すと明確に示した。
マイクロソフトからの買収提案を断り、資金調達を進めていることから、上場の可能性もささやかれているDiscord。今後、ゲーム以外にもユーザーの裾野を広げられるかが、さらなる成長の鍵を握りそうだ。