取引量世界No.1 NFTマーケットプレイス「OpenSea」〜海外ユニコーンウォッチ #10〜
2022/7/6
「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回はNFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」を取り上げる。
評価額100億ドルを超える、デカコーン企業となったOpenSea
OpenSeaではNFTが固定の価格やオークション形式などで販売され、誰でも自由に売買できる。ユーザーは60万人以上、扱うNFTは8000万点を超えているという。日本でも、アーティストやスポーツ選手といった有名人のNFTが販売されるなど、徐々に広がりを見せている。また、同社はNFTやWeb3(※1)業界の成長をサポートするための投資も始めている。
2021年3月、OpenSeaは2300万ドルの資金調達を発表した。さらに2021年7月、シリーズBとして1億ドルの資金調達を実施。そして2022年1月、シリーズCで3億ドルの資金調達を実施し、企業価値は133億ドルになったと発表した。2017年の設立から短期間で急成長し、評価額が100億ドルを超えるユニコーン企業、つまり「デカコーン企業」となったのだ。OpenSeaは、シリーズCで調達した資金の使い道として「プロダクト開発の加速」「カスタマーサポートと顧客の安全性の大幅な向上」「より広いNFTやWeb3コミュニティへの意味のある投資」「チームの成長」という四つの目標を挙げている。
※1 Web3:デジタルシフトタイムズでは、「Web3」と「Web3.0」を文脈に応じて表記をわけております。Web1.0、Web2.0など、Webトレンドとしての延長線上の場合は「Web3.0」、仮想通貨や暗号資産、ブロックチェーンのリブランディングとして用いられる文脈の場合は「Web3」としております。
OpenSea創業の背景
OpenSeaで発生した「インサイダー取引」
アメリカ司法省が「史上初のデジタル資産インサイダー取引で起訴される」と表現するなど、デジタル資産に関するインサイダー取引への対応は前例がなく注目された。連邦検事のダミアン・ウィリアムズ氏は、「NFTは新しいかもしれないが、この種の犯罪スキームはそうではない」「今日の起訴は、株式市場であろうとブロックチェーンであろうと、インサイダー取引の発生を根絶するための当局のコミットメントを示している」と、本件もインサイダー取引とみなすコメントを出した。今後、NFTやOpenSeaがさらに普及すれば、同様の事件が発生する可能性がある。一方で、このような事件が起こることこそが、NFTやOpenSeaが広く知れ渡り、使われるようになった証左かもしれない。OpenSeaを含め、NFTやデジタル資産を扱う企業には、市場が急成長しているからこそ、企業としての責任と対策が求められる。