取引量世界No.1 NFTマーケットプレイス「OpenSea」〜海外ユニコーンウォッチ #10〜

「ユニコーン企業」ーー企業価値の評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を、伝説の一角獣になぞらえてそう呼ぶ。該当する企業は、ユニコーンほどに珍しいという意味だ。かつてはFacebookやTwitterも、そう称されていた。この連載では、そんな海外のユニコーン企業の動向をお届けする。今回はNFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」を取り上げる。

評価額100億ドルを超える、デカコーン企業となったOpenSea

OpenSeaは2017年に創業されアメリカに本社を置く、NFTの作成や売買ができるNFTマーケットプレイスだ。NFTを扱うマーケットプレイスとしては先駆けで、同社も「OpenSeaは、世界初で最大のNFTマーケットプレイスだ」と謳っている。

OpenSeaではNFTが固定の価格やオークション形式などで販売され、誰でも自由に売買できる。ユーザーは60万人以上、扱うNFTは8000万点を超えているという。日本でも、アーティストやスポーツ選手といった有名人のNFTが販売されるなど、徐々に広がりを見せている。また、同社はNFTやWeb3(※1)業界の成長をサポートするための投資も始めている。

2021年3月、OpenSeaは2300万ドルの資金調達を発表した。さらに2021年7月、シリーズBとして1億ドルの資金調達を実施。そして2022年1月、シリーズCで3億ドルの資金調達を実施し、企業価値は133億ドルになったと発表した。2017年の設立から短期間で急成長し、評価額が100億ドルを超えるユニコーン企業、つまり「デカコーン企業」となったのだ。OpenSeaは、シリーズCで調達した資金の使い道として「プロダクト開発の加速」「カスタマーサポートと顧客の安全性の大幅な向上」「より広いNFTやWeb3コミュニティへの意味のある投資」「チームの成長」という四つの目標を挙げている。

※1 Web3:デジタルシフトタイムズでは、「Web3」と「Web3.0」を文脈に応じて表記をわけております。Web1.0、Web2.0など、Webトレンドとしての延長線上の場合は「Web3.0」、仮想通貨や暗号資産、ブロックチェーンのリブランディングとして用いられる文脈の場合は「Web3」としております。

OpenSea創業の背景

OpenSeaの創業は、2017年にリリースされた「CryptoKitties」に端を発する。CryptoKittiesとは、ブロックチェーン技術を活用した、猫を育成するゲームで、育成した猫は仮想通貨を使って売買でき、場合によっては1000万円を超えるほどの高値で売れることもあった。ブロックチェーンや仮想通貨を利用するデジタル資産のゲームとして、当時は珍しいものだった。そのムーブメントに魅了されたのが、OpenSeaの創業者であるデビン・フィンザー氏とアレックス・アタラ氏だ。CryptoKittiesについて、フィンザー氏は「どこでも見られて、オープンに交換でき、そして、デジタル世界で今までにない方法で本当に所有できるようになった」と評価している。二人は2017年12月にOpenSeaのベータ版をローンチした。このとき、イーサリアムブロックチェーン上のNFTに向けたオープンマーケットプレイスが初めて誕生したのだった。

OpenSeaで発生した「インサイダー取引」

2022年6月、OpenSeaの元従業員でプロダクトマネージャーだった人物がインサイダー取引の容疑で起訴された。アメリカ司法省によると、少なくとも2021年6月から同年9月ごろまで、どのNFTがOpenSeaに掲載されるかに関する同社の機密情報を使い、OpenSeaに掲載される直前にNFTを秘密裏に購入し、掲載後に購入価格の2倍から5倍の利益で売却したという。この件が発覚してからOpenSeaは、「OpenSeaのチームメンバーは、機密情報を使用しNFTを売買することを禁じられている」などのポリシーを追加するといった対応を行った。

アメリカ司法省が「史上初のデジタル資産インサイダー取引で起訴される」と表現するなど、デジタル資産に関するインサイダー取引への対応は前例がなく注目された。連邦検事のダミアン・ウィリアムズ氏は、「NFTは新しいかもしれないが、この種の犯罪スキームはそうではない」「今日の起訴は、株式市場であろうとブロックチェーンであろうと、インサイダー取引の発生を根絶するための当局のコミットメントを示している」と、本件もインサイダー取引とみなすコメントを出した。今後、NFTやOpenSeaがさらに普及すれば、同様の事件が発生する可能性がある。一方で、このような事件が起こることこそが、NFTやOpenSeaが広く知れ渡り、使われるようになった証左かもしれない。OpenSeaを含め、NFTやデジタル資産を扱う企業には、市場が急成長しているからこそ、企業としての責任と対策が求められる。

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