EUREKA PARK(エウレカパーク)とは?
世界中の名だたる企業が出展するCESだが、注目されるのは彼らだけではない。参加者がこぞって足を運ぶのが、ベンチャー企業が出展する展示会場「EUREKA PARK」だ。実際、CESが優れたプロダクトを認定する「CES Innovation Awards」に選ばれるプロダクトの大半は、この「EUREKA PARK」に出展する企業から選ばれている。
依然として存在感を高めるフレンチテック
EUREKA PARKの特徴として目立つのは、国ごとにブースを固めた出展である。地図を見てもらえば一目両全だ。
これは、CESに出展するベンチャー企業を各国の政府が支援し、一団体としてブランディングを図っているためだ。
代表的なものでは、近年その名称も浸透しつつある「フレンチテック」がある。これはフランス政府が注力するスタートアップ企業支援策のことで、自国内でのベンチャー企業の活性化だけでなく、国外からの企業やエンジニアも受けいれている。大規模なインキュベーション施設を増やすなど、国を挙げて行なっている手厚いベンチャー支援が功を奏し、CESのEUREKA PARKでは、一昨年頃からその勢いが話題となっている。
今回人気だったデモンストレーションは、フランスのPollen Roboticsが開発中のロボット「Reachy」だ。YouTubeで紹介ムービーも公開されている。
CES2020 - Introducing Reachy the new open source interactive robot
特徴的なのは、これが単なるロボットではなく、オープンソースの開発プラットフォームである点だ。制御システムは、プログラミング言語のPythonを使って誰もが開発できるようになっているうえに、
AIが実装されているため、簡単な機会学習機能も組み込むことができる。腕などのパーツはモジュール式で、求める機能に応じて交換が可能だ。ロボットの導入にかかる費用の低減が期待できるほか、ロボットが活躍できる場を個人商店などへも広げることができるだろう。
また、フレンチテックで目立ったのは、「
エドテック」と言われる教育に通じるテーマだった。
こちらは数学に用いられる幾何学模型を、スマホアプリと簡易な投影装置を用いることで、立体視することができるというアイデア。子どもたちの集中力を高めるための、上質な体験を教育現場に導入することを目的に開発しているという。
そしてこちらは子どもたちの創造性を育むことを目的としたアプリ。
Euraka Parkに出展する企業は、ベンチャーだけに、出展企業はどこもこだわりぬいたプロダクトやアイデアを持ち寄っている。ここからは、フレンチテックに限らず、編集部が注目したベンチャープロダクトを紹介していく。
家庭の排水を再利用するHYDRALOOP
オランダのHydraloop Systems BVが発表した、こちらの筐体は、コンパクトな家庭用水リサイクルシステムだ。シャワーや風呂、洗濯機から出る生活排水を洗浄・消毒して、洗濯水やトイレの洗浄水、園芸、プールの水として再利用することができる。
サイズは一般的な冷蔵庫の奥行を短くした程度で、既存の家やアパートに後付けすることができる。小さなユニットながら、家庭での水の消費量を45%、下水排出量を45%、二酸化炭素排出量を6%削減できるという。
さらに画期的なのは、洗浄した水をどこに利用するかアプリを通じて指定できる点にある。節約した水の量に関するレポートを受け取り、季節に合わせ適切に再利用することができる。
食品開発だけがフードテックではない
CES2020では、大豆を主原料とした人工豚肉が注目を浴びたが、食品開発だけが食文化を豊かにしてくれるわけではない、ベルギーのInvineoは、ワインに関する野心的なプロダクトを展示していた。
従来、ワインといえばガラスのボトルで出荷、保管されるのが一般的だが、これをチューブに置き換えてしまうというものだ。写真には、ワインを含んだチューブが3本、紙製の筒に包まれ、Invineoのワインディスペンサーに収められている。
このディスペンサーでチューブからワインを抽出すると、チューブの中身は常に真空状態に保たれ、ワインの酸化を防ぐこともできる。また、ワインごとに適切な温度管理を行っていて、自動販売機の役割も果たしている。
管理者は、このディスペンサーをアプリで操作することができ、販売費や管理する温度も遠隔で設定することが可能だ。さらに販売データを記録して、管理者に商品の入れ替えなどを提案することもできる。
出展社は従来常識とされてきたワインの流通と販売を根本から変えたいと熱く語っていた。
次回は、同じくEUREKA PARKに出展していた日本企業を紹介する。