加賀市がネオキャリアと「DX推進パートナー連携協定」を締結。進まない行政DXの壁を乗り越え、地方自治体のロールモデルを目指す!

石川県加賀市は2月25日、同市の行政DXを加速するために、総合人材会社のネオキャリアと「DX推進パートナー連携協定」を締結した。この4月より、ネオキャリアが提供する人事業務を一元化できる人事向けクラウドサービス「jinjer(ジンジャー)」を導入し、出退勤時間の登録や記録・管理などをスマートフォンやタブレット上から行えるようにすると言う。自治体初の導入となるこの取り組みについて発表された、オンライン記者会見の模様をレポートする。

HR Tech企業のネオキャリアと連携し、地方行政のDXを加速!

加賀市は、全国有数の温泉地として知られ、毎年200万人程の観光客が訪れる日本屈指の観光地だ。その一方で、マイナンバーカードの普及率が全国市区No.1という地方自治体でもある。実は同市は、宮元 陸市長のリーダーシップのもと、「ブロックチェーン都市」や「スマートシティ加賀」を宣言し、最先端技術を有する民間企業と積極的に連携を図っている。今回のパートナー連携協定もその一環で、地域社会や住民サービスの向上につなげるスマートシティの実現に向けたものである。

これまで加賀市は、職員の勤務時間の記録や超過勤務申請の一部を、旧来型の紙書類や押印で処理していた。こういったアナログな業務が残っているのは、なにも加賀市だけではなく、全国の自治体も同様だ。そのような状況に風穴を開けるかのごとく、加賀市はネオキャリアが提供する人事業務を一元化できる人事向けクラウドサービス「jinjer」を導入し、職員の出退勤時間の記録などをスマートフォンやタブレット上から行えるようにすると言う。

これにより、コロナ禍での「在宅勤務」や「サテライト勤務」などでも、職員の勤務状況をリモートで管理することが容易になる。また、超過勤務や休暇手続きなどの処理も順次強化していく予定だと言う。将来的には人事業務全体を「jinjer」でクラウド化し、経費や労務の分野についても、DXによる利便性や効率化を図ることを検討しているそうだ。

地方自治体におけるDX推進のお手本になることを目指す!

このDXパートナー連携協定にあたり、宮元市長は「ここ数年、スマートシティ加賀の実現のために、さまざまな取り組みを積み重ねてきました。しかし、行政業務の中でも人事業務は、煩雑なアナログ作業が多く残っている分野であり、事務作業の効率化の妨げとなっていました。今回、「jinjer」を導入することで削減できた時間を、別の業務へと投入していきたいと考えています。」と述べ、連携先のネオキャリアに対する期待を膨らませた。

ネオキャリアは、いわゆるHRを中心としたTech領域において、ソリューションの開発から企画、セールスまで、すべてに対応できるため、地方自治体の細かな要望に応えられると言う。代表取締役社長の西澤 亮一氏は「日本の地方都市が抱える、人口減少や少子高齢化の問題によって、地域の活力が低下するなど多くの影響が出ています。そのような状況で加賀市は、テクノロジーの力で地域課題を解決していくという強い意思を表明しています。推進力のある加賀市とタッグを組んでロールモデルを作ることで、他の地方自治体にもDX推進を促していきたいと思います。」と抱負を語った。

「jinjer」の「笑顔打刻」機能で、職員のコンディションを把握

ネオキャリアのHR Techサービスである「jinjer」は、入社手続きから、入社後の人事管理、勤怠管理、給与計算、ワークフロー、経費精算、労務管理、雇用契約、コンディション管理など、従来まで多くの企業でバラバラに管理されていた人事業務を一気通貫で管理できるSaaS型プラットフォームサービスだ。これまでブラックボックス化されてきた人事データを集積・分析することで、人事戦略の最適解を導き、人事業務の効率化やコスト削減、企業経営に必要な可視化されたデータを提供できる。

加賀市は、まず「jinjer勤怠」を皮切りに、同市の勤怠周りのデジタル化に着手する。
「jinjer」には「誰でも使いやすいシンプルなデザイン」「ID単位の一律料金で、追加料金なしで使える多彩な機能」「打刻率や残業時間のランキングなど、ユーザーの管理効率を向上させる機能」という三つの大きな特徴がある。
前述のように「jinjer」は多くの機能を有するが、特にユニークなのがAIを搭載した「笑顔打刻」機能だ。職員が出勤の打刻時にカメラで顔写真を撮影することで、その表情によって笑顔を点数化、AIが職員のコンディションを把握してくれると言う。加えて、打刻状況や勤怠状況なども分析し、職員のエンゲージメント指数を算出できる。これにより、職員の離職リスクを事前にキャッチできるようになり、離職率低下の仕組みづくりに貢献するようだ。

地方自治体に横たわる「LGWAN」の課題も浮き彫りに

加賀市では、これまで行政の管理部門で難しいとされていた課題に対して、フロントランナーとして果敢にチャレンジしてきた。今後も行政DXに向けた取り組みの手を緩めることなく、邁進していく意向だ。しかし、その一方で自治体ならではの規制が多くあるのも事実だ。

たとえば、都道府県や市区町村など、地方自治体のコンピュータネットワーク(庁内LAN)を相互接続して運用されている行政専用ネットワークの「LGWAN」(総合行政ネットワーク)もハードルの一つだ。LGWANは、高度なセキュリティを維持するために、インターネットのパブリックネットワークとは切り離された閉域ネットワークとして構築されているが、逆にセキュリティが強すぎることによって、運用の障壁となってしまう側面もある。

今回のようなクラウドサービスを地方自治体が導入する際には、さまざまな工夫が必要だ。加賀市では、この4月からの導入に向け、「jinjer」の打刻サービスのみをLGWANネットワークと切り離して運用することにしていると言う。LGWANネットワーク内で運用している他の人事関連システムの移行や連携についても、本協定に基づいてネオキャリアと共に研究・開発を進めていくとのことだ。これも地方自治体としての先進的かつ挑戦的な試みの一つになるだろう。加賀市の行政DXへの取り組みが代表的なロールモデルになり、遅れがちだった地方自治体のDX化の起爆剤になることを期待したい。

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