ホンダ、モビリティ・ロボット・宇宙領域などコア技術を生かした新領域への取り組みを発表
2021/10/1
Hondaは、すべての人に「生活の可能性が拡がる喜び」を提供する2030年ビジョンの実現に向け、自身の持つコア技術を生かした新領域におけるチャレンジとして、現在取り組んでいる技術開発の方向性を発表した。
Contents
■コア技術を生かした新領域へのチャレンジ
■空の移動を身近にする「Honda eVTOL」(電動垂直離着陸機)
・ハイブリッド化により航続距離を伸ばし、今後の市場拡大が見込まれる都市間移動に対応
・Honda eVTOLをコアに、地上モビリティとの連携により新たなモビリティエコシステムを創造
Hondaは、独創的なHondaJetで実現した空の移動をさらに身近なものとするため、さまざまなコア技術を生かして、eVTOL(electrical Vertical Take Off and Landing:電動垂直離着陸機)の開発に取り組んでいる。eVTOLは、電動化技術によるクリーン性はもとより、シンプルな構造で推進を分散化することで、民間旅客機同等の安全性を保ちつつ、比較的小径なローターにより、街中で離着陸しても騒音とならない静粛性を実現できることから、開発競争が活発化しているという。一方で、オール電化によるeVTOLには、バッテリー容量による航続距離の課題があり、その現実的な稼働範囲は都市内移動に留まっているとのことだ。
これに対しHondaは、より航続距離が長く使い勝手の良い都市間移動を実現するため、電動化技術を生かしたガスタービンとのハイブリッドによるHonda eVTOLの開発に取り組み、市場拡大が見込まれる都市間移動の実現を目指す。また、Honda eVTOLには、電動化技術のほかにも、燃焼や空力、制御技術といった、これまでHondaがさまざまな領域で培った技術が生かされている。Hondaは、このHonda eVTOLをコアに、地上のモビリティと連携し組み合わせることで、新たなモビリティエコシステムによる新価値の創造を目指すとのことだ。
■バーチャルな移動を可能にする「Hondaアバターロボット」(分身ロボ)
・ロボティクス技術を生かした多指ハンドと、独自のAIサポート遠隔操縦機能を搭載
・2030年代の実用化を視野に、2023年度中の技術実証開始を目指して開発中
Hondaはこれまで、人の可能性を拡げ、人生を自由で豊かにするため、ASIMOをはじめとするロボティクス研究に継続的に取り組んできた。次世代に向けては、時間や空間の制約に縛られず、バーチャルに自己能力を拡張するHondaアバターロボットの実用化に向けた開発を進めている。
人の分身となるアバターロボットの最大のメリットは、リモートでありながら、あたかもその場にいるようにモノを扱えるなど、自身がその場にいなくても作業や体験ができることだという。そうしたアバターロボット実現の核となるのが、Hondaが強みとするロボティクス技術による多指ハンドと独自のAIサポート遠隔操縦機能だ。多指ハンドを通じて人のために作られた道具を使いこなし、AIのサポートにより、複雑な作業をより直感的な操作で早く正確に行えることを目指した。
これまでのロボティクス研究を通じて長年の課題であった、小さなものをつまむなどの繊細さと、固い蓋を開けるなどの力強さを「人並みに」両立できる手を多指ハンドとして実現。また、多指ハンドが一連の動作の中で物をスムーズに把持したり、細やかな力の制御で道具を操ったりできるようにHonda独自のAIサポート遠隔操縦機能の進化にも取り組んでいるとのことだ。Hondaは現在、ハードウェアの小型化とともに「把持する」「操る」といった動作のさらなる精度の向上に取り組んでおり、2030年代の実用化を視野に、2023年度中のHonda アバターロボットの技術実証開始を目指している。
■宇宙領域への挑戦
・燃料電池や高圧水電解技術を生かした、月面での循環型再生エネルギーシステムの構築
・多指ハンドやAIサポート遠隔操縦機能、高応答トルク制御技術などの月面遠隔操作ロボットへの応用
・若手技術者の発案による、燃焼・流体・制御・誘導技術などの応用による「再使用型の小型ロケット」の研究開発
Hondaは、宇宙領域をコア技術を生かした“夢”と“可能性”への新たなチャレンジの場ととらえている。燃焼・誘導制御技術、燃料電池技術、ロボティクス技術といったHondaならではのコア技術を生かし、宇宙という究極の環境で新たな価値の創造を目指して技術開発に取り組んでいる。
■月面でのチャレンジ ~循環型再生エネルギーシステム、遠隔操作ロボットへの技術応用~
また、宇宙飛行士の危険を最小化したり、地球に居ながらにして、月に居るかのような体験を可能としたりする月面での遠隔操作ロボットにおいては、アバターロボットで開発中の多指ハンドや、AIサポート遠隔操縦機能、衝突軽減のための高応答トルク制御技術など、Hondaのコア技術の多くの応用が見込まれる。これらはJAXAの宇宙探査イノベーションハブにおける研究テーマとして採択され、今年2月に共同研究を開始している。