日本取引所グループ、日立、野村證券ら、デジタルな仕組みを用いた環境債「ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンド」の発行に関する協業を開始

株式会社日本取引所グループ、株式会社日立製作所(以下、日立)、野村證券株式会社、株式会社BOOSTRYは、BOOSTRYが提供するブロックチェーン基盤を活用した社債型セキュリティ・トークン(以下、デジタル債)のスキームを利用し、公募ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンドの発行に向けて協業を開始すると発表した。

■本取組みの特徴

・ホールセール向けデジタル債
本デジタル債は、日本取引所グループが発行会社となる公募STO(セキュリティ・トークン・オファリング)だ。STOとは、発行会社が従来の株式や社債等に代わり、ブロックチェーン等の電子的手段を用いて発行するトークンに株式や社債等を表示する「セキュリティ・トークン」により資金を調達するスキームだ。日本では2020年5月1日の金融商品取引法改正及び関連する政省令の改正施行により「電子記録移転有価証券表示権利等」として規定され、法令に準拠した取扱いが可能となった。

・グリーン・デジタル・トラック・ボンド
グリーンボンド等のESG債市場において、投資されるプロジェクトが生み出す環境・社会への効果を測定かつ比較可能な指標の形で示すことが出来れば非常に有用であると考えられている。グリーン・デジタル・トラック・ボンドとは、これまでのグリーンボンドで発行会社・投資家双方から課題と認識されているグリーン投資にかかるデータの透明性やデータ収集にかかる作業の煩雑性に対し、ブロックチェーンなどデジタル技術を活用して、透明性の向上及びデータ収集の効率化を目指す債券だ。本スキームを多くの発行体・投資家に利用される利便性の高い商品とすることで、社会全体のカーボン・ニュートラルへの貢献を目指すとのことだ。

■デジタル債を発行するプラットフォームの概要

本デジタル債では、従来の証券保管振替機構による管理に代わり、BOOSTRYが主導するコンソーシアム型ブロックチェーンネットワーク「ibet for Fin」を用いて発行・管理を行い、発行から期中管理、償還までの業務プロセスを電子的方法により完結させる。ibet for Finに係るシステム上で社債原簿の管理を行うとともに、従来型の社債では困難であった発行会社による社債権者の継続的な把握等を可能にしている。

■グリーン・デジタル・トラック・ボンドの概要

日本取引所グループは、本デジタル債によって調達した資金使途の透明性を高めるため、日立のデジタル技術を活用して、資金充当した発電設備の発電量を自動的に計測し、CO2削減量に換算する仕組みを構築する。こうしたデジタル技術を活用することで、投資家がいつでも外部からモニタリングできる仕組みを構築し、年次のレポーティングだけではない高い透明性を目指す。また、BOOSTRYへのデータ連携を行い、ibet for Fin上に発電量/CO2削減量を記録することで、データの透明性・適時性を高めることが可能となる。これらにより、将来的にはサステナビリティ目標の達成状況によって利率などの条件を自動的に変更させるサステナビリティ・リンク・ボンドへの応用が検討可能になるものと考えているという。なお、投資家が発電量をモニタリングできる仕組み(デジタル・トラック機能)については、各発電設備において稼働後速やかに実装される予定で、調達資金は開発する発電設備に対し充当する。

本デジタル債は、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりグリーンボンドフレームワークに対するセカンド・パーティ・オピニオン及び調達資金が環境問題の解決に資する事業に投資される程度について5段階の評価を行う「R&Iグリーンボンドアセスメント」の予備評価で最高評価である「GA1」を取得。なお、本デジタル債は環境省による「令和3年度グリーンボンド等促進体制整備支援事業」及び東京都による「東京都グリーンボンド等促進体制整備支援事業補助金」の補助金交付対象となっているとのことだ。

■各社の役割分担

各社がそれぞれ以下の役割を担い、ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンドの公募に向けた協働を行う。日本取引所グループ、日立、野村證券及びBOOSTRYは、本取組みから得られた学びや洗い出された課題を共有していくことで、社会全体のカーボン・ニュートラルへの貢献を目指す。
出典元:プレスリリース
グリーン・デジタル・トラック・ボンドのスキームイメージ図
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■発電設備の概要

日本取引所グループは、本グリーン・デジタル・トラック・ボンドで調達した資金について、JPX総研への貸付けを通じて、以下のバイオマス発電設備及び太陽光発電設備に充当する予定だ。
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