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アスタミューゼ、量子コンピュータに関する研究資金と論文の最新動向を発表

アスタミューゼ株式会社は技術の用途展開・新規事業探索ツールであるイノベーションマトリックスを用いたグラント(競争的研究資金)および論文データの分析を行った結果、サイバーセキュリティ・暗号 、製薬・化学、金融・フィンテック、物流の分野で量子コンピュータの分野での具体的な活用と展開の可能性が見つかり、その結果と技術動向、事例について発表した。
近い将来に量子コンピュータが活躍する可能性が高い技術領域として、
サイバーセキュリティ・暗号
製薬・化学
金融・フィンテック
物流
の4分野に関係する情報を、アスタミューゼのデータベースから抽出し、その推移を調査した。

また、グラント(競争的研究資金)と論文のデータを用いた。グラントとは、大学や研究機関などに配賦される研究資金だ。その採択の可否は、専門家を含む複数の人が、提案された研究プロジェクトを科学的・技術的観点から評価することで決定される。採用されたグラントから「資金を投入する」という判断が下された技術が何かを考えることができるという。論文が研究成果の発表であるのに対して、グラントは、これから研究成果が期待できるプロジェクトのため、グラントには先行指標としての役割も期待できるとのことだ。
出典元:プレスリリース
上の図は、2000年以降の量子コンピュータに関連する世界のグラント件数(=資金を獲得した研究プロジェクトの数)の推移を示している。2000年以降に開始されたグラント4,674件の中から、用途が明記されているものが集計されている。2010年代半ばまではサイバーセキュリティ・暗号に関するグラントが最多だったのに対し、2010年代後半から製薬・化学に関係するプロジェクトがトップに躍り出て、さらなる増加を示していることがわかる。金融・フィンテック、物流に関係するグラントも漸増しているが、サイバーセキュリティ・暗号と製薬・化学には及ばない。
出典元:プレスリリース
2000年以降に発表された量子コンピュータに関する論文の数は約3万3千本だった。そのなかで、用途についてabstractで言及されている論文の推移が上の図で示されている。縦軸は、その年に発表された論文の数だ。2021年までサイバーセキュリティ・暗号が首位を保っているが、製薬・化学の追い上げもある。金融・フィンテック、物流に関係する研究も着実に進められているようだが、爆発的な伸びは、まだ見られない。

量子コンピュータの特徴は、その計算スピードだ。例えば、日本のスパコン「富岳」だと1万年かかるような計算が量子コンピュータでは、4分弱で終わるという研究結果もあるという。ただし、量子コンピュータは、ごくわずかな調整のずれで計算結果が変わり、誤りが発生する。この誤りを訂正しながら計算を進める量子コンピュータの開発は、内閣府が2020年に定めた「従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)」に挙げられている。

膨大な数を検証して、その答えが一定の範囲に収まっていく(収束していく)ような問題が、現在の量子コンピュータの得意とするものだ。典型的なものとして、いろいろな組み合わせの中で妥当な結果を見出していく「組み合わせ最適化問題」がある。代表的な例として、
・セールスマンがある都市から出発し、全ての都市を訪問して、出発地点に帰る場合、どのような順番で回るのが最短経路になるのか(巡回セールスマン問題)
・ナップサックに大きさと値段がまちまちな荷物を詰めるとき、どう組み合わせれば合計金額が最大となるか(ナップサック問題)
などが挙げられる。その応用問題として、
・材料の物性と構造のデータを全て組み合わせ、薬や化学品としての最適解を導出するマテリアルインフォマティクス
・離島、宇宙ステーションや災害地など輸送キャパシティが不十分な状況での物資輸送の最適化
など、製薬・化学や物流には、組み合わせ最適化問題として解かれる問題が幅広くあるとのことだ。例えば、2021年にNew Journal of Physics誌で発表された論文では、量子コンピュータを用いた数値計算によってタンパク質のフォールディング(おりたたみ)の構造を立体的に把握する試みを報告しており、分子生物学、創薬、触媒設計などへの応用が期待されている。

膨大な組み合わせの中から迅速に最適解を探し出す、という量子コンピュータの能力をもってすれば、現在使われている暗号は短時間で解かれてしまう、という危険性が指摘されている。悪用されれば、金融システムなどが根本から覆ってしまう可能性すらあるため、量子コンピュータでも解読できない暗号技術が開発されている。その一つが「量子暗号」で、光子(光の粒子)の状態で暗号鍵を送るものだ。光子の暗号鍵は傍受されると状態が変わるので、当事者に知られることなくハッキングすることはできないという。パデュー大学(米国インディアナ州)のパデュー量子科学工学研究のグループは、2021年、Physical Review Research誌で、量子状態に基づいて暗号文のブロックを生成する量子暗号化プロトコルを提案した。暗号鍵の一部が公開された場合でも解読は困難で、その他の攻撃も防御を破ることはほぼできないとしているとのことだ。

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