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フードテック(FoodTech)とは?重要視される背景や事例を紹介

食品生産や食品にテクノロジーを活用するフードテックが、人びとの食生活を変えると注目されています。世界的な飢餓・飽食問題から生産加工現場の人材不足まで、フードテックが与える影響を知っておきましょう。代表的なフードテックサービスも紹介します。
発展途上国を中心とした世界人口の増加や地球温暖化による気候の変動により、食糧不足や飢餓問題が問題視されています。一方で、先進国では、環境に優しいサスティナブルな食事へ対する注目を集めています。さらに、2020年は世界的な感染症拡大を受けて、人びとの食へ対する関心が一層強まりました。

このような状況の中、「フードテック」の活用が期待されています。テクノロジーの力で食の新しい可能性を広げようという取組みは、全世界で多くの企業が本格的に開始しています。テクノロジーにより私たちの食卓にどのような影響があるでしょうか。今回は、フードテックについて詳しく説明するとともに、フードテックの導入で起こる変化や代表的なサービスもご紹介します。

そもそもフードテックとは?

「フードテック」とは、フード(Food)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。

これは、最先端のテクノロジーを活用し、新しい食品や調理方法、食に関する環境を変えることを意味します。IT技術の発展により、従来では考えられなかった取り組みや技術が、食材の生産・調理現場に加わることで、新たな付加価値を生み出しています。

たとえば、牛や豚といった肉を一切使用しない植物由来の「大豆のお肉」は、欧米を中心に新たな選択肢として受け入れられつつあります。このような「食×テクノロジー」は、徐々に私たちの身近なものとなっているのです。

フードテックの市場規模

フードテックの市場規模は大きく、2025年までに世界で約700兆円規模にのぼるという試算もあります。

植物由来の成分で作られた「代替肉」や肉の細胞を増殖させて作る「培養肉」など、食品そのものだけがフードテックではありません。ITテクノロジーを駆使した農業・酪農や、消費者の食に関するデータ収集・解析など、さまざまな場面で食とテクノロジーは融合しています。世界中でこの動きは活発になってきており、フードテック関連のスタートアップ企業は次々と成長しています。

フードテックはSDGsにも関係している

SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられている目標のひとつに、フードロス対策があります。2030年までに世界全体の一人あたりの食料廃棄を半減させて、収穫後の損失など、いわゆる食品ロスを減少させるというものです。日本でも「SDGsアクションプラン2018」が発表され、フードロスへの啓蒙や、フードバンク活動の推進、サプライチェーンの商習慣の見直しといった取り組みがはじまっています。フードテックは、こうしたSDGsを達成するためのテクノロジーとして注目を集めています。

フードテックが重要視される背景とは?

「食」は、世界のどこでも生活に欠かせない巨大マーケットです。また、今後も拡大していく市場として私たちの生活に密着した存在でもあります。しかしながら、世界情勢や気候などさまざまな要因で、食に対する課題が生まれているのも事実です。

いまフードテックが重要視されている背景に、世界中で食に対して持っているいくつかの共通課題があります。その解決策のひとつとして、フードテックの活用が大いに期待されています。以下では、フードテックが解決を目指す課題を6つ、解説していきます。

食糧不足への懸念

最初の課題は、食糧不足です。世界人口増加に伴って、食糧の需要に対し供給が追いつかなくなる危険性があります。地球の総人口は、現在の75億5,000万人から10年後の2030年には85億5100万人に達するといわれています。すべての人々が豊かな食生活を送るためには、膨大な食糧が必要となります。

また、温暖化に伴う気候変動により、農業や酪農において収穫量のばらつきや減少が生まれることも懸念されています。具体的には、台風や干ばつの影響で作物の生産性が低下したり、平均気温の上昇によって野菜の生育不良が起こることなどが挙げられます。

このような、十分な食糧を生産できない状況に対し、テクノロジーの力が生産量増加や生産性向上に寄与すると期待されているのです。

飢餓問題の深刻化

国連は、飢餓に苦しむ人は8億人以上、実に人口の9人に1人にも上ると発表しています。その多くは発展途上国の貧しい人びとであり、今日の食べ物にも困っている状況だといわれています。そのうえ、今後人口増加も発展途上国が中心になるといわれており、飢餓問題はさらに深刻化していくかもしれません。

飢餓問題を抱える原因は、人々が食糧を入手できる十分なお金を持っていないだけではありません。栄養のある食糧が入手できない、温暖な地域にも関わらず保冷・保存ができる設備や食糧にアクセスがしづらい、といった原因も挙げられます。このような課題を解決するためにも、フードテックでは栄養バランスの取れた食糧や、長く保存ができる食糧の開発が求められています。

フードロスの増加

発展途上国では飢餓に苦しむ人がいる一方で、先進国ではフードロス(食品廃棄)の増加が問題となっています。大量生産された食糧は小売店など流通過程で売れ残り廃棄される量が多く、消費者も余らせた食品を廃棄することに躊躇しない傾向があるためです。

また、人口の3人に1人は栄養過剰で太り気味だといわれています。飢餓とフードロスという正反対の事象は、発展途上国と先進国の間で食のバランスが保たれていないことを表しています。世界的な食糧均衡を保つためにも、フードテックの活用が期待されているのです。

安全な食事へのニーズが高まっている

また、安全な食事へのニーズも高まっています。その背景としては、次の3点のような懸念材料が挙げられます。

・企業の努力にもかかわらず、異物混入などの問題が発生しうる
・細菌などによる食中毒や幼児・高齢者における誤飲で、毎年多くの人が犠牲となっている
・外国産農産物の残留農薬や産地偽装など、表示されている情報が正しいとも限らない

このような問題に対応するべく、製造工程のオートメーション化や異物判定で安全な製造を可能としたり、食品の成分分析や傷み具合を診断するツールを導入して消費者が安心して手に入れられる環境を整えるなど、さまざまな場面でフードテックの活用が求められています。

菜食主義への対応

ベジタリアンやヴィーガンと呼ばれる菜食主義も広がり、肉や魚からタンパク質を摂取しない人が増えているのも、フードテックが重要視される背景のひとつです。菜食主義の人々も、栄養バランスの取れた食生活を送る必要があります。

フードテックの普及にともない、植物由来の肉(代替肉)が開発され、野菜を主食としながらもタンパク質を取ることができるようになってきています。今後は、さまざまな食生活にあわせて栄養バランスを考慮した食品が誕生していくかもしれません。

人材不足の深刻化

近年、食品の生産過程では、人口減少に伴って人材不足が深刻化しています。特に、農業・酪農・漁業などの分野では生産者の高齢化が進んでおり、食材加工工場や流通、外食産業では、慢性的な人員不足で経営が厳しくなっている事業も多いです。

フードテック領域では、生産加工の現場にロボットやIoTを導入し省人化を進めることで、少ない人数でも効率よく生産や事業運営ができる技術が開発されつつあります。AIなどを活用した最適な人材配置や食材調達をおこなるようになれば、労働者の負担軽減や食品廃棄ロス削減にも役立つでしょう。

フードテックの導入で変わる領域

私たちの生活に密接した「食」の分野で、今後ますますテクノロジーが世界的に重要視されきます。それでは、フードテックが導入されることで、具体的にどのような変化が現れるのでしょうか?

以下では、消費者が手にする食品がつくられる過程や、食品そのものがフードテックによりどう変化するのかを詳しく説明します。

食品の製造

フードテックの導入により、食に関するさまざまな領域でフードロボットが普及すると考えられています。フードロボットは、ロボットアームをつかって調理や配膳、皿洗いなどをおこなう機械のことをいい、すでに外食産業では実用化しているところもあります。フードロボットが、注文受付から商品提供までを一貫しておこなううカフェも登場しており、今後もさまざまな事業でフードロボットが普及していくでしょう。

食品工場やセントラルキッチンでは、ロボットを利用した大量生産が一般的となっていますが、飲食店での活用はまだ限られているのが現状です。なぜなら、飲食店での作業は多岐にわたるため、人間が作業したほうが効率が良い場面がまだ多いからです。しかし、ミス防止や衛生面からもフードロボットの需要は高く、フードテックの発展により、今後はさらに改良されたフードロボットが飲食店に導入されることになるでしょう。

代替肉の製造

フードテックが食品そのものに与える変化として、人口肉の製造が挙げられます。水や小麦、自然由来の油などを用いた植物由来の肉が開発され、牛や豚などを食べることなく、栄養を摂取することが可能になりました。

大豆ミートは、その名の通り100%大豆からつくられており、低糖質・低カロリー・高タンパク、しかも美味しい食品として知名度が上りつつあります。最近は、スーパーでは精肉売場にも並べられており、牛・豚・鶏に続く「第4の肉」として認知され始めています。このようにフードテックでは、今までになかったような食品を生み出しているのです。

効率的な生産

食品の生産現場では、AIなどによる生産の効率化が進められています。具体例として、次の3つが挙げられます。

・ビニールハウスの温湿度確認や異常検知といったクラウドによる一元監視で、広大な土地を管理する
・ドローンを水やりや農薬物の散布に活用、限られた日照時間や労働力で管理する
・農機を自動運転させ、労働者の負担軽減や効率の良い生産につなげる

このように、フードテックは農業や酪農の分野でも労働力不足を補い、効率的な生産に寄与しています。テクノロジーを積極的に活用していくことで、不安定な気候や天候の中でも安定した生産が可能になっていくでしょう。

環境変化に強い栽培

気候や天候に左右されないフードテックの代表が、植物工場です。これは単なるビニールハウス農業ではなく、太陽光をLED・土を培養土などで代用することによって、内部の環境を徹底管理して野菜や苗を育てることをいいます。屋内での栽培が可能になることで、生産量が天候や害虫の影響を受けにくくなると期待されています。

植物工場であれば、本来であれば植物の生長が難しい寒冷地域や砂漠地帯でも、農業を営むことが可能。農業に関する知識、経験、勘などが求められにくくなるので、一定のクオリティの野菜を計画的に栽培・収穫でき、あらゆる地域で安定的な食糧が得られるようになるでしょう。

ニーズにあわせた流通

フードテックを導入すれば、食糧を必要とする人のニーズにあわせた流通も可能になります。従来は、小さな飲食店などの小口注文には、費用や手間が多くかかっていました。しかし、ICTにより生産者と飲食店を直接結ぶことで、市場や商店を介することなくタイムリーに受発注と配送が可能になると期待されています。

ICTネットワークを活用すれば、生産者から必要な食材を必要な量だけ仕入れることができるだけでなく、配送状況を確認することも可能となります。食材ごとに市場に足を運ぶ必要がなくなれば、大量仕入れができない飲食店や個人でも質の良い食材を手軽に手に入れられるようになるでしょう。

新食材の開発

人工肉だけではなく、新食材の開発・生産をおこなうフードテックもあります。たとえば、次のような新しい食材が挙げられます。

・ミドリムシを粉末にしたクッキーやドリンク
・必要な栄養がすべて採れるグミ
・原材料が100%野菜のシートをつかった生春巻きや天ぷら

見た目や味が変わっているものもあるようですが、新食材が開発されれば、高い栄養価がある食品や環境に優しい食品など、画期的な食材が増えることにつながります。今後は商品開発やレシピ研究を進める企業も増えていくでしょう。

モバイルオーダーの普及

感染症の影響もあり、世界的に外食から中食への需要が高まっており、モバイルオーダーが飛躍的に普及しました。このモバイルオーダーこそ、フードテックが活用されている代表例です。

フードテックは、家にいながらメニューの注文や決済を完了させ、商品の配送依頼や引取りをおこなうことを可能にしました。これにより飲食店でのフードロスが大幅に削減され、注文者は待ち時間の確認やスムーズな受け渡しなどのメリットを享受できるようになると期待できます。

フードテックで注目されているサービス・製品の事例

これまで、フードテックがどのような変化をもたらすかを説明してきましたが、「いまいち具体的なイメージを持てない」という人もいるかもしれません。

フードテックをより明確にイメージできるよう、以下では、フードテックの代表的なサービスを4つご紹介します。

BEYOND MEAT

BEYOND MEAT(ビヨンド・ミート)は、2009年にアメリカのカリフォルニア州で設立されたフードテック企業です。ハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオやマイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツが出資していることでも知られています。大豆などの植物由来の原料で代替肉を製造開発しており、代替肉を使ったパティや代替肉ソーセージなどを販売しています。2019年には代替肉製造会社として、世界で初めてNASDAQに上場しています。

Ovie

アメリカ企業の提供する「Ovie」は、食品の消費期限を管理するスマートタグです。食材と関連付けたIoTタグを専用の容器などにつけて冷蔵庫で保管し、消費期限が近づくとタグが光って知らせてくれるのが特徴です。

ただ消費期限を管理するだけではなく、専用アプリを利用して、冷蔵庫にある食材を一覧表示させたり、その食材をつかった料理のレシピが見れるのも魅力となっています。

ロボットトラクター

ヤンマーが開発している無人走行テクノロジーを使った農業用トラクターが「ロボットトラクター」です。タブレットで遠隔操作でき、農業の省力化や効率化に貢献すると言われています。これまで経験と勘に頼っていた作業を自動化でき、人間の操作が最小限で済む「オートトラクター」はすでに発売されています。

ベースフード

ベースフード株式会社は「完全栄養主食」を生産・販売しています。パンやパスタが代表的で、1日に必要な栄養素の1/3を摂取できるのが特徴です。

いつでも手軽に栄養価の高い食品を摂取できることから、仕事や家事などで忙しい人にはうってつけの商品といえます。真空包装した上で加熱殺菌すれば、添加物を使わず長期保存することもできるので、非常食としての備蓄にもおすすめです。

Uber Eats

日本でも定着したフードデリバリーサービスのUber Eatsもフードテック企業だといえます。電話をかけることなく、専用のアプリだけで注文や決済が完了します。アプリから注文を受けた配達員が直接、飲食店に出向き、希望した地点まで届けてくれます。コロナ禍になり、飲食店の料理を自宅で食べる「中食」の需要が伸びたのは、Uber Eatsの功績でもあります。

Eatsa

「Eatsa」は、アメリカの無人レストランです。サラダをメインに提供するなど、メニューを絞ることで全自動の営業を可能にしています。注文はタブレットでおこなえるようになっており、AIにおすすめメニューを提案してもらうこともできます。

商品は店内の棚から自動で提供されるため、従業員はタブレット端末に問題が発生したときにサポートするだけです。調理室内は大半がロボットで運用されているため、ロボット主体のレストランだといってよいでしょう。効率性の高いオペレーションとユニークさが高い評価を得ているため、今後は、ロボットを活用するレストランが増えていくかもしれません。

CHOWBOTICS

自動販売機文化が根付いている日本と異なり、あまり自動販売機が設置されてこなかったアメリカで急速にシェアを伸ばしているのが、CHOWBOTICS(チョウボティクス)です。サラダを販売する自動販売機で、20種類以上の食材とドレッシングを組み合わせることで、1000種類以上のサラダが提供できると言います。アメリカではレストランの店舗数が増える一方で、人材の確保が難しくなっていると言います。そのため補充スタッフが巡回するだけで良い、CHOWBOTICSが重宝されているようです。

ARTHYLEN

「ARTHYLEN」は、スーパーマーケットに陳列されている食品の鮮度や生産情報を、スマートフォンを通して確認できるサービス。ディープラーニングと拡張現実を組み合わせることによって実現されており、食品の画像から鮮度やダメージなどを判定しているのが特徴です。

スーパーマーケットでリアルタイムに食材の情報を確認できるため、食の安全・安心を得ることも可能。食材の情報は、部門別、店舗別に把握できるので、効率的な店舗運営にも役立つでしょう。

ソイルプロ

ソイルプロはニップンが開発したフードテックの新素材です。日本古来の豆腐加工技術を活用し、これまでの植物たんぱく素材では表現できなかった弾力のある食感とクセのない風味を実現しています。今後、世界の人口が増加することによって、食料需要も増え、タンパク質が不足するプロテインクライシスが起こると警告する学者もいます。その対策として、あるいはフードロスの削減、持続可能な生活を実現するための食材としてソイルプロは注目されています。

フードテックの推進を阻害する要因

食に関する世界的な問題を解決するテクノロジーのひとつとして、フードテックは注目されていますが、課題はお金がかかることです。開発費用はもちろんのこと、代替肉を生み出すための化学品や豊富な栄養が入った栄養液はもちろん、太陽光の代わりに植物に当てる光を調達するための電気代など、さまざまなコストがかかり、製品の代金も高くなってしまうのが現状です。

今後のフードテックの普及に期待しよう

ここでは、フードテックが重要視されている背景や、フードテックがもたらす変化について説明するとともに、代表的なフードテックのサービスを紹介しました。

フードテックの導入によって、安心・安全な食品を誰でも手軽に手に入れられるだけでなく、食に関する生産や加工現場の課題も改善できるようになると期待されています。また、新食材が一般的になる日も遠くないでしょう。ここで説明したフードテックの内容やサービスを参考にして、今後の「食」がどのように変化していくかを注視できるようにしておきましょう。

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