フードテック(FoodTech)とは?重要視される背景や事例を紹介
2022/2/6
食品生産や食品にテクノロジーを活用するフードテックが、人びとの食生活を変えると注目されています。世界的な飢餓・飽食問題から生産加工現場の人材不足まで、フードテックが与える影響を知っておきましょう。代表的なフードテックサービスも紹介します。
Contents
- そもそもフードテックとは?
- フードテックの市場規模
- フードテックはSDGsにも関係している
- フードテックが重要視される背景とは?
- 食糧不足への懸念
- 飢餓問題の深刻化
- フードロスの増加
- 安全な食事へのニーズが高まっている
- 菜食主義への対応
- 人材不足の深刻化
- フードテックの導入で変わる領域
- 食品の製造
- 代替肉の製造
- 効率的な生産
- 環境変化に強い栽培
- ニーズにあわせた流通
- 新食材の開発
- モバイルオーダーの普及
- フードテックで注目されているサービス・製品の事例
- BEYOND MEAT
- Ovie
- ロボットトラクター
- ベースフード
- Uber Eats
- Eatsa
- CHOWBOTICS
- ARTHYLEN
- ソイルプロ
- フードテックの推進を阻害する要因
- 今後のフードテックの普及に期待しよう
このような状況の中、「フードテック」の活用が期待されています。テクノロジーの力で食の新しい可能性を広げようという取組みは、全世界で多くの企業が本格的に開始しています。テクノロジーにより私たちの食卓にどのような影響があるでしょうか。今回は、フードテックについて詳しく説明するとともに、フードテックの導入で起こる変化や代表的なサービスもご紹介します。
そもそもフードテックとは?
これは、最先端のテクノロジーを活用し、新しい食品や調理方法、食に関する環境を変えることを意味します。IT技術の発展により、従来では考えられなかった取り組みや技術が、食材の生産・調理現場に加わることで、新たな付加価値を生み出しています。
たとえば、牛や豚といった肉を一切使用しない植物由来の「大豆のお肉」は、欧米を中心に新たな選択肢として受け入れられつつあります。このような「食×テクノロジー」は、徐々に私たちの身近なものとなっているのです。
フードテックの市場規模
植物由来の成分で作られた「代替肉」や肉の細胞を増殖させて作る「培養肉」など、食品そのものだけがフードテックではありません。ITテクノロジーを駆使した農業・酪農や、消費者の食に関するデータ収集・解析など、さまざまな場面で食とテクノロジーは融合しています。世界中でこの動きは活発になってきており、フードテック関連のスタートアップ企業は次々と成長しています。
フードテックはSDGsにも関係している
フードテックが重要視される背景とは?
いまフードテックが重要視されている背景に、世界中で食に対して持っているいくつかの共通課題があります。その解決策のひとつとして、フードテックの活用が大いに期待されています。以下では、フードテックが解決を目指す課題を6つ、解説していきます。
食糧不足への懸念
また、温暖化に伴う気候変動により、農業や酪農において収穫量のばらつきや減少が生まれることも懸念されています。具体的には、台風や干ばつの影響で作物の生産性が低下したり、平均気温の上昇によって野菜の生育不良が起こることなどが挙げられます。
このような、十分な食糧を生産できない状況に対し、テクノロジーの力が生産量増加や生産性向上に寄与すると期待されているのです。
飢餓問題の深刻化
飢餓問題を抱える原因は、人々が食糧を入手できる十分なお金を持っていないだけではありません。栄養のある食糧が入手できない、温暖な地域にも関わらず保冷・保存ができる設備や食糧にアクセスがしづらい、といった原因も挙げられます。このような課題を解決するためにも、フードテックでは栄養バランスの取れた食糧や、長く保存ができる食糧の開発が求められています。
フードロスの増加
また、人口の3人に1人は栄養過剰で太り気味だといわれています。飢餓とフードロスという正反対の事象は、発展途上国と先進国の間で食のバランスが保たれていないことを表しています。世界的な食糧均衡を保つためにも、フードテックの活用が期待されているのです。
安全な食事へのニーズが高まっている
・企業の努力にもかかわらず、異物混入などの問題が発生しうる
・細菌などによる食中毒や幼児・高齢者における誤飲で、毎年多くの人が犠牲となっている
・外国産農産物の残留農薬や産地偽装など、表示されている情報が正しいとも限らない
このような問題に対応するべく、製造工程のオートメーション化や異物判定で安全な製造を可能としたり、食品の成分分析や傷み具合を診断するツールを導入して消費者が安心して手に入れられる環境を整えるなど、さまざまな場面でフードテックの活用が求められています。
菜食主義への対応
フードテックの普及にともない、植物由来の肉(代替肉)が開発され、野菜を主食としながらもタンパク質を取ることができるようになってきています。今後は、さまざまな食生活にあわせて栄養バランスを考慮した食品が誕生していくかもしれません。
人材不足の深刻化
フードテック領域では、生産加工の現場にロボットやIoTを導入し省人化を進めることで、少ない人数でも効率よく生産や事業運営ができる技術が開発されつつあります。AIなどを活用した最適な人材配置や食材調達をおこなるようになれば、労働者の負担軽減や食品廃棄ロス削減にも役立つでしょう。
フードテックの導入で変わる領域
以下では、消費者が手にする食品がつくられる過程や、食品そのものがフードテックによりどう変化するのかを詳しく説明します。
食品の製造
食品工場やセントラルキッチンでは、ロボットを利用した大量生産が一般的となっていますが、飲食店での活用はまだ限られているのが現状です。なぜなら、飲食店での作業は多岐にわたるため、人間が作業したほうが効率が良い場面がまだ多いからです。しかし、ミス防止や衛生面からもフードロボットの需要は高く、フードテックの発展により、今後はさらに改良されたフードロボットが飲食店に導入されることになるでしょう。
代替肉の製造
大豆ミートは、その名の通り100%大豆からつくられており、低糖質・低カロリー・高タンパク、しかも美味しい食品として知名度が上りつつあります。最近は、スーパーでは精肉売場にも並べられており、牛・豚・鶏に続く「第4の肉」として認知され始めています。このようにフードテックでは、今までになかったような食品を生み出しているのです。
効率的な生産
・ビニールハウスの温湿度確認や異常検知といったクラウドによる一元監視で、広大な土地を管理する
・ドローンを水やりや農薬物の散布に活用、限られた日照時間や労働力で管理する
・農機を自動運転させ、労働者の負担軽減や効率の良い生産につなげる
このように、フードテックは農業や酪農の分野でも労働力不足を補い、効率的な生産に寄与しています。テクノロジーを積極的に活用していくことで、不安定な気候や天候の中でも安定した生産が可能になっていくでしょう。
環境変化に強い栽培
植物工場であれば、本来であれば植物の生長が難しい寒冷地域や砂漠地帯でも、農業を営むことが可能。農業に関する知識、経験、勘などが求められにくくなるので、一定のクオリティの野菜を計画的に栽培・収穫でき、あらゆる地域で安定的な食糧が得られるようになるでしょう。
ニーズにあわせた流通
ICTネットワークを活用すれば、生産者から必要な食材を必要な量だけ仕入れることができるだけでなく、配送状況を確認することも可能となります。食材ごとに市場に足を運ぶ必要がなくなれば、大量仕入れができない飲食店や個人でも質の良い食材を手軽に手に入れられるようになるでしょう。
新食材の開発
・ミドリムシを粉末にしたクッキーやドリンク
・必要な栄養がすべて採れるグミ
・原材料が100%野菜のシートをつかった生春巻きや天ぷら
見た目や味が変わっているものもあるようですが、新食材が開発されれば、高い栄養価がある食品や環境に優しい食品など、画期的な食材が増えることにつながります。今後は商品開発やレシピ研究を進める企業も増えていくでしょう。
モバイルオーダーの普及
フードテックは、家にいながらメニューの注文や決済を完了させ、商品の配送依頼や引取りをおこなうことを可能にしました。これにより飲食店でのフードロスが大幅に削減され、注文者は待ち時間の確認やスムーズな受け渡しなどのメリットを享受できるようになると期待できます。
フードテックで注目されているサービス・製品の事例
フードテックをより明確にイメージできるよう、以下では、フードテックの代表的なサービスを4つご紹介します。
BEYOND MEAT
Ovie
ただ消費期限を管理するだけではなく、専用アプリを利用して、冷蔵庫にある食材を一覧表示させたり、その食材をつかった料理のレシピが見れるのも魅力となっています。
ロボットトラクター
ベースフード
いつでも手軽に栄養価の高い食品を摂取できることから、仕事や家事などで忙しい人にはうってつけの商品といえます。真空包装した上で加熱殺菌すれば、添加物を使わず長期保存することもできるので、非常食としての備蓄にもおすすめです。
Uber Eats
Eatsa
商品は店内の棚から自動で提供されるため、従業員はタブレット端末に問題が発生したときにサポートするだけです。調理室内は大半がロボットで運用されているため、ロボット主体のレストランだといってよいでしょう。効率性の高いオペレーションとユニークさが高い評価を得ているため、今後は、ロボットを活用するレストランが増えていくかもしれません。
CHOWBOTICS
ARTHYLEN
スーパーマーケットでリアルタイムに食材の情報を確認できるため、食の安全・安心を得ることも可能。食材の情報は、部門別、店舗別に把握できるので、効率的な店舗運営にも役立つでしょう。
ソイルプロ
フードテックの推進を阻害する要因
今後のフードテックの普及に期待しよう
フードテックの導入によって、安心・安全な食品を誰でも手軽に手に入れられるだけでなく、食に関する生産や加工現場の課題も改善できるようになると期待されています。また、新食材が一般的になる日も遠くないでしょう。ここで説明したフードテックの内容やサービスを参考にして、今後の「食」がどのように変化していくかを注視できるようにしておきましょう。