イノベーション

デジタルシフト未来マガジン〜超人気サイクルエクササイズが自宅で受けられる革命「PELOTON(ペロトン)」〜

AIやIoT、VR/ARといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどです。「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介していきます。
今回は、フィットネス業界の課題を解決するアメリカの企業「PELOTON」です。PELOTONは、スタジオさながらのフィットネス機器の販売とオンラインのレッスンコンテンツを提供し「いつでもどこでもフィットネス」を実現するフィットネスクラブで、2012年に創業され、現在の合計資金調達額は994億円になります。

PELOTONは、既存プレーヤーが抱える課題から独自のビジネスモデルを作り出した好例です。また、コンセプトをターゲットへ伝えるメッセージ性や、インストラクターと契約し、彼らを通したマーケティングの実施、インストラクターのファン達によるコミュニティの形成も注目するべきポイントです。

・【概要】PELOTONのビジネス

「PELOTON」は、2012年に創業したフィットネスサービスの企業です。創業者はIT業界出身ですが、フィットネス好きだったことからPELOTONを創業しました。2012年に4,000万円を調達したところから始まり、2017年に325億円、18年550億円と調達規模を拡大し、海外展開も進めています。

PELOTONは、フィットネス用バイクの販売と、サブスクリプション型でオンラインレッスンの提供を行っています。従来のフィットネスクラブが施設内で提供していた機材とレッスンを、場所や時間を問わない形に置き換えたのです。ここから、従来の施設型フィットネスクラブへ通う人が抱えていた、「時間がない」や「近くにない」、また「1人ではモチベーションの維持が難しい」という課題を解決しました。

・“デジタルシフト”なポイント

PELOTONのポイントは、既存企業の課題を打ち破る独自のビジネスモデルです。ただし、PELOTON創業当時には同様の企業は複数存在していました。その中でもPELOTONの強みは、明確なブランドメッセージと所属インストラクターを通したマーケティングです。

■ポイント1:「ビジネスモデル」
PELOTONのビジネスモデルは前述の通り、フィットネス用バイクの販売とサブスクリプション型のオンラインレッスンです。従来の施設型フィットネスは、収容人数の限界と収益の最大化から、幽霊会員を黙認している面もあるかと思われます。しかし、PELOTONは収容人数の限界もない上にサブスクリプション型のため、ユーザーが続ければ続けるほど収益につながります。だからこそ、ユーザーにフィットネスを続けさせるインセンティブがあり、ユーザーも続けられると効果が出るという循環が生まれるのです。

■ポイント2:「ブランドメッセージ」
PELOTONのビジネスモデルが秀逸なのは事実ですが、同業者は存在しています。そこで重要なのは明確なブランドメッセージを打ち出していることです。
ウェスティンホテルグループと連携している体験コースでは、「モチベーションを維持しませんか?たとえ忙しくても。仕事・家事・子育て、フィットネスに通えない理由をPELOTONはオンデマンド・フィットネスで解消。」 と掲げています。従来の施設型フィットネスに、時間と場所の制約を感じている人たちを対象に、加入意欲を刺激しているのです。

■ポイント3:「インフルエンサーマーケティング」
独自のビジネスモデルを明確なブランドメッセージによってターゲットに伝えるPELOTONですが、サブスクリプションを開始したユーザーが短期で離脱してしまうと、収益性は上がりません。
ユーザーがサービスを継続するのに一役買っているのが、PELOTON所属のインストラクター達です。PELOTONはインストラクターと契約し、彼らの見た目や服装、イメージ作りまでをトータルサポートしています。ユーザーにとってインストラクターはインフルエンサーであり、彼らのレッスンを受けたいからPELOTONに加入し、フィットネスを継続するモチベーションも維持されるのです。

・オンラインサービスだからこその「オフラインコミュニティ」

最後にPELOTONが取り組む、ユーザーのモチベーション管理をひとつご紹介します。時間や場所の制約が無いとはいえ、フィットネスへのモチベーションを維持し続けることはなかなか難しいことです。そこでPELOTONでは、ユーザー同士が実際に会う機会を作っています。オフ会のようなものです。

ユーザー同士に繋がりができることでコミュニティ意識も生まれます。これが、サービスへのモチベーションにも結びつくのです。実際にSNSでは「たくさんやることがあって自分のケアを忘れていた。PELOTONコミュニティとトレーナーが私をやる気にしてくれました」という声もあがっています。日本でも施設型のフィットネスジムが増加していますが、徐々にオンラインへと移っていくかもしれませんね。

プロフィール

石原 靖士(Yasushi Ishihara)
株式会社オプト 執行役員
株式会社オプトホールディング 執行役員

ソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)にてネットワークエンジニアとして従事。2006年にオプト(現オプトホールディング)入社。2010年にデジミホ(旧オプトグループ)取締役に就任。2015年にオプト執行役員に就任し、テクノロジー開発・オペレーション・クリエイティブ領域を管掌。2019年からは事業開発領域を管掌。2019年4月よりオプトグループ執行役員を兼務しデジタルシフト変革領域管掌。