電話会議ソフト「Zoom」〜デジタルシフト未来マガジン〜
2019/7/29
AIやIoT、VR/ARといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどだ。「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
石原 靖士 -Yasushi Ishihara-
㈱オプトホールディング グループ執行役員
㈱オプト 執行役員
SaaS系の新規事業を立ち上げ・グロース後、事業売却。2015年にオプト執行役員に就任し、エンジニアとクリエイティブの組織を拡大。2019年4月、オプトグループ執行役員に就任し、レガシー業界のデジタルシフトを狙った、顧客との共同事業開発を推進中。
・【概要】Zoomのビジネス
電話会議ソフトの市場はプレーヤーが多く、SkypeやGoogleなど大手も参入しています。Zoomは全くもって一強ではなく、後発でもあります。ビジネス的な成功は、必ずしもイノベーターではなく、後発プレイヤーこそが市場を独占しやすいことを、Zoomは物語っています。
また、Zoomは典型的なSaaSサービスですが、最近の世界的な潮流として、「Adobeクラウド」をはじめソフトウェアサービスがSaaS型に切り替えることで成功しています。このSaaS型のビジネスモデルは、ソフトウェア企業のみならず全ての法人向けサービス企業が参考にすべきビジネスモデルです。
・“デジタルシフト”なポイント
Zoomは顧客満足を高めるために、NPS(ネットプロモータースコア)を導入しています。NPSとは、推奨者・中立者・批判者をスコアリングして点数を算出するもので、顧客からのサービスの評価を確認する手法として利用されています。NPSを導入することで、自社のサービスを客観的に評価し、顧客満足の上昇を徹底させているのです。実際に、ZoomのCMOはインタビューで「当社のNPSスコアは72です。これは、非常に高いスコアで、エンドユーザーのZoomへの満足が高いことを示しています」と自信をみせています。
■ポイント2:「競合を排除しないサービス連携」
競合が多いことは先ほど述べた通りですが、Zoomは競合サービスとも積極的に連携しています。例えば、大手のSkypeとも一部で連携し、SkypeユーザーはZoomも使えるようになっています。ユーザーは、自分の好きなサービスを組み合わせて使うことができるのです。開発面でも、APIを解放することで、他のアプリとの接続を可能にしており、パートナーを拡大しています。その中にはGoogleが提供する「ハングアウト」も含まれています。
■ポイント3:「ターゲット別の顧客開拓」
Zoomは基本的に企業向けの機能開発を重視しています。日本もそうですが、SIerとのパートナー販売などを活用することで導入企業数を伸ばした結果、年間1000万円以上の売上になる企業アカウントは400を超えます。
もうひとつのターゲットは利用者が10名ほどの中小企業や個人です。こちらは、ネットワーク効果やコミュニティの活性化を重視しています。ユーザーからユーザーへ広げるためのコミュニケーションやブランディングを展開することで利用者を獲得しているのです。年間売上は15万円程度ですが、アカウント数は約5万8500に至ります。
成長率では、前者が120%、後者も86%で成長しています。
・Zoomを貫く、強い「企業文化」
プロフィール
株式会社オプト 執行役員
株式会社オプトホールディング 執行役員
ソフトバンクIDC(現IDCフロンティア)にてネットワークエンジニアとして従事。2006年にオプト(現オプトホールディング)入社。2010年にデジミホ(旧オプトグループ)取締役に就任。2015年にオプト執行役員に就任し、テクノロジー開発・オペレーション・クリエイティブ領域を管掌。2019年からは事業開発領域を管掌。2019年4月よりオプトグループ執行役員を兼務しデジタルシフト変革領域管掌。