AIで労働集約的な電話営業やコールセンター業務に革命を。RevComm(レブコム) 會田氏が目指す音声解析プラットフォームの未来

ビジネスに欠かせない、電話営業やコールセンターでのお客さま対応。どちらも成果を左右する重要な領域であるにもかかわらず、マーケティングなど他の分野に比べてデータ活用や、成功の秘訣が可視化されておらず、今だに属人的で労働集約的な側面がある。

そんな定量化の難しいコミュニケーションを、AIを使って解析、可視化するサービスが「MiiTel(ミーテル)」である。サービスのリリースから1年で、スタートアップから大企業まで250社以上に導入され、導入企業は加速度的に増え続けている。手掛けたのは株式会社RevComm。コミュニケーションのデジタル化が何をもたらしたのか。そして今までに例がなかったサービス開発をどのようにして実現したのか。同社代表取締役の會田 武史氏にお話を伺った。

ブラックボックスだった電話対応をオープンに

―御社の提供しているサービスについて教えてください。

MiiTel(ミーテル)という音声解析AIを搭載したIP電話を提供しております。

AIで電話内容を解析・定量化しており、「何を」「どのように」話しているか可視化しています。「何を」という側面では、文字起こし並びに文章要約をして振り返りや共有を容易にしています。「どのように」という側面では、話速、沈黙回数、会話の被せ率、相手とのラリー回数など独自の指標を用いて話し方を定量的に評価しています。

電話営業やコールセンターの担当者は共通して、電話内容のニュアンスを上司や関係者に正確に伝えられないという悩みを抱えていました。例えば、担当者のバイアスがかかった状態で上司に報告し、それを聞いた上司は間違った判断を下してしまい失注になる、といったケースは少なからずあります。

問題の根本的な原因は、電話の内容がブラックボックス化されていることです。担当者と顧客が何をどのように話しているか分かれば失注や顧客満足度低下の理由、担当者毎のパフォーマンスのばらつきの要因など、あらゆる「なぜ」が解明できます。逆に、ブラックボックスのままにしていると、いつまで経っても労働集約型の生産性が低い営業や顧客対応から抜け出せません。

―具体的にはどんな形で可視化するのか教えてください。

まず、MiiTelで電話をすると、会話がすべて録音・文字起こしされ、どの担当者がいつ、誰と、何分何秒間話したのかがデータとして残されます。そのうえでAIが会話の内容から「話し方」と「話した内容」の大きく2点を分析します。

1点目の「話し方」については、担当者が話している時間と聞いている時間の比率、沈黙の回数、相手の話に被せて発言した回数、会話のラリー数、話すスピードなど複数項目の解析結果が表示されます。例えば、営業の世界では、お客様が話している速度と同じくらいの速度で話すのが望ましいと言われていて、早く話しているとご理解頂けないですし、遅く話してしまうとイライラされて聞いてもらえなくなります。会話の速度だけでなく、上記の項目において、どのように話していて、どこに課題があるのか定量的に可視化されます。そのため、上手くいっている人とそうでない人との差が数字で具体的にわかるようになっています。

2点目の「話した内容」については、特定のキーワードを何回、どのタイミングで言っているのかが確認できるようになっています。重要なキーワードを言えているか、コンプライアンス的に良くない言葉を避けられているかなどを検知することが可能です。

また、電話内容が文字に起こされ、記録として残ることも重要です。要約文を関係者にそのまま共有することでレポートやメモの作成時間が削減され、生産性向上につながりますし、担当者自ら振り返って課題を認識し、改善につなげることができます。更にコンプライアンス上も全文文字で残っている事で安心できます。私たちがMiiTelで提供している価値は「ブラックボックス化問題の解消」と「セルフコーチングの実現」の2点です。これにより、営業生産性を向上させ、労働集約的な営業からの脱却ができるようになります。
また、最近では上記2点に加えて「リモートワークの実現」も価値提供できるようになっています。多くのお客様がMiiTelを活用して、リモートワーク環境を起ち上げられているのはうれしいですね。リモートコールセンターや、リモート営業に加えて、内線を使った社内会議でもご利用戴いており、ご利用シーンはどんどん広がっています。
―MiiTelの導入企業は、どの業界が多いのでしょうか。

特定の業界に限らず、幅広い業界の企業さまに導入いただいています。

ブラックボックス化が解消できることやセルフコーチングが可能になることにより、教育期間とコストを削減できる為、ご導入頂くケースが多いです。MiiTel導入企業さまの一社である大手人材派遣会社のパーソルさまからは、もともと8ヶ月以上かかっていた新卒社員教育が、MiiTelを使って3ヶ月まで短縮できたとの声をいただいています。

また、ハイキャリア層専門の転職サービスなど手掛ける株式会社ビズリーチさまは、とくに喜んでもらえたお客様の一社です。これまで実施していた電話対応のロールプレイングなどは一切やめ、毎朝3つ、トップパフォーマーの電話応対を全メンバーに聞いてもらい、夕方にその日の自分の電話応対を振り返ってもらうようにしたそうです。その結果、MiiTel導入4ヶ月でアポイント率が64%向上。ご担当者の方には大変喜んでいただけました。

AIを電話営業に活用すると言うと、やり方の変更に手間がかかると、現場から反発されるのではと思われます。しかし、その逆で、これまで見えなかったことが定量化され、自ら振り返って改善すると結果が出るので皆さん楽しみながらご利用戴いております。MiiTelはマネジメントツールではなく、セルフ・コーチングツールなので、人から指導されるのではなく、自ら振り返るようになり個人のエンゲージメントが向上するんです。人は誰しも成長意欲を持っていて、それが数字として表れると楽しく感じるのです。それに、ただ電話で話すだけで勝手に解析・可視化されるので導入に際して手間が掛かるということもありません。

先ほども少し述べましたが、最近は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響で、リモートワーク体制作りを進める企業様からお問い合わせいただくことも多いです。通常、コールセンターをリモートにしようと考えると、電話機の手配やシステム・サーバーの整備などで膨大な時間とお金がかかります。一方で、MiiTelは導入して直ぐにリモート対応が可能になると共に、ブラックボックス化も防げて、リモートでのチームマネジメントも容易になります。また、子育て中の女性に在宅でインサイドセールスをしてもらうために導入したという例もあります。現在はCSRの一環として、無償提供を行っていることもあり、3月は1ヶ月だけで60社以上のお申し込みがありました。ちなみに、無償提供は5月末まで続ける予定です。

ビジネスシーンにおける音声解析のプラットフォームを作る

―起業までの経緯を教えてください。

尊敬していた父や祖父が経営者だった影響で、小学生のときから自分も経営者になりたいと思っていました。小学校4年生のときには、起業を決めてましたね。ただ、何のビジネスがしたいのかが見つからず大人になり、社会人6年目を迎えました。

このままではいつまで経っても、決めたことができないと思い、独立することにしました。挑戦をリスクと捉える人もいますが、私は挑戦しないことの方がリスクだと感じていました。将来、若い時代を振り返って「なんであのときに挑戦しなかったんだろう」と後悔するのがすごく怖かったんです。

具体的に何をやるのかは、2つの軸から決めました。1つ目は今後大きな波になる要素技術、もう1つは日頃自分が課題感を持っていたこと、の2点です。

1つ目の軸について、3つ思い浮かびましたが、その中で自分が一番ワクワクし将来性を感じたのがディープラーニングでした。

2つ目の軸について、決めるうえで原体験になったのは会社員時代に感じていた課題感でした。それは、何を言ったかではなく誰が言ったかが優先される、ある種身分社会のような慣習でした。すなわち、日本社会におけるコミュニケーションコストの高さです。

それらの軸を掛け合わせたのが、AI(ディープラーニング)×ボイスコミュニケーションだったんです。

―コミュニケーションの中でも音声に着目してサービスを立ち上げたのにはどんな背景があるのでしょうか。

世の中の流れを見ると、文字より音声を使ったコミュニケーションがより一層広まり、当たり前になっていくと感じたことが大きいです。

入力方法一つとっても、世界では手入力(GUI:Graphical User Interface)から音声入力(VUI:Voice User Interface)に移行しています。前職でサウジアラビアやウクライナに住んでいた際に、現地人がWhatsAppを使って声を送り合っている姿に衝撃を受けたのを覚えています。音声入力は手入力の1/3ほどの時間で済むので非常に楽です。人間はより楽な方向に向かう傾向がありますので、音声入力の市場は今後も伸びていくと感じましたね。

VUIが伸びるのは間違いないとして、ディープラーニングでは結局データ量がモノを言うので、音声データをいかに溜めるかがポイントになります。これからの時代において、膨大なデータは石油や石炭にとって変わる資源となり得ます。GAFAが巨大企業に成長したのもデータという資源を膨大に持ったからです。

スマートスピーカーを提供するGoogle、Amazonなどは既に膨大な音声データを持っていますが、全てプライベート領域における会話データで、ビジネス領域における会話データはどこも持っていないことに気がつきました。そこに着目し、ビジネスシーンでの音声会話を集めるプラットフォームを作れないかと考え、生み出したのがMiiTelでした。

MiiTelは一見すると「音声解析AIを搭載したIP電話というソフトウェア」に見えます。しかし本質的にはDropbox音声版とも言える、音声ストレージサービスなのです。膨大かつ良質なビッグデータがあるからこそ解析エンジンが作れています。後々は、我々が開発した音声解析エンジンがプラットフォームとしてあらゆるサービスで使われるようにしたいです。

クライアントのP/Lにコミットする

―サービスを提供するうえで心掛けていることはなんですか。

クライアントのP/L(損益計算書)に貢献することです。

資本主義経済の中で、株式会社という形態で事業運営をしている限り、重要な命題は利益を上げることだと思います。だからこそ、MiiTelも提供価格以上にPを上げるかLを下げることに貢献できなければならないと考えています。

Pに関しては、セルフコーチングの機会を提供し、実際に成果を上げる会社さまも多いので貢献できている実感があります。Lに関しても、研修期間短縮による教育コストの削減、ハードウェアコストの削減、通話料等のランニングコスト削減などでコミットできていると思います。

「人間を電話営業から解放する未来」を実現する

―最後に、今後の展望を教えてください。

まず機能面の拡充を進めたいです。美声モードや自動スクリプト生成、2~3年後には自動アポイントAIを提供して、人間を電話営業から解放するところまで実現できればと思っています。

MiiTelはリリースされて1年ほどですが、これまでで八百万件以上の電話営業のデータが蓄積されています。データの所有権はお客様のものですので、各社の営業トークのビッグデータ化に寄与できています。近い将来には、音声認識に加えて合成音声も提供する事で、各社毎の自動アポ取りAIを提供できると思います。恐らくアルゴリズムは色々出てきますので、MiiTelでビッグデータ化した営業データを色々なサービスに活用頂ければ、多面的に貢献できると考えています。従って、先ほども申し上げましたが、我々はMiiTelというSaaSを提供しているというよりも、「お客様の営業トークをビッグデータ化して、お客様の資産にする音声ストレージサービス」を提供している、という方が本質的です。

また、20年1月には音声解析APIを公開したので、色々な企業さまに利活用戴きたいと思っております。具体的には、ミーティングやリモート会合の解析、医療・介護現場での解析、面接や面談の解析などなどです。一部の企業様には既にご利用いただいており、着々とプラットフォーム化は進んでいます。

さらに、グローバル展開も進め、世界中の企業さまにご活用いただきたいと考えています。新型コロナウイルス感染症の影響で延期していますが、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどの国々への展開も模索しています。状況が改善次第、現地での商談を再開したいです。

これからも、コミュニケーション領域で起きている課題を解決し、新たなコミュニケーションの在り方を創造して、社会に変革をもたらしていきたいと思っています。
※本文掲載中の写真は、株式会社RevCommより提供を受けた物です。実際の取材中の写真ではありません。

※本文掲載中の写真は、株式会社RevCommより提供を受けた物です。実際の取材中の写真ではありません。

株式会社RevCommのHPはこちら https://www.revcomm.co.jp/

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