DX戦略

コロナの脅威が消えても、外食産業の回復は良くて9割。外食業界をDX で刷新する、KooJoo 代表・松田公太氏の挑戦!

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、外食産業にとっては厳しい環境が続いています。そんな中、パンケーキブームの先駆けとなったEggs 'n Thingsでは、withコロナ時代の飲食業界におけるDX「Customer Along Service構想」を発表。「事前注文システム」「テーブルオーダーシステム」「カスタマートラッキングシステム」など、新しいシステムのテスト導入を開始しています。

これから飲食店舗経営はどう変わるのか。これらのシステム開発やEggs 'n Thingsなどの飲食店も運営をする、クージュー株式会社代表取締役松田 公太氏にお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- コロナ終息後もコロナ前対比100%に客足が戻ることはないと予測される
- これからの飲食店にとって、お客さまが減っても利益が出る仕組みを作ることがテーマになる
- 業務効率化に特化し全てを自動化すると、これまで提供していた「おもてなし」が失われてしまう
- 作り手とお客さまが直接コミュニケーションを取れる仕組みが鍵になる
- DXが進むと、外食産業が求める人材のレベルは上がる

お客さまの戻りが8~9割でも利益を出せるかがテーマに

――松田さんは「Customer Along Service構想」を発表するなど、withコロナ時代に向けた取り組みを始めておられます。コロナによる危機感を強く感じるようになったのはいつ頃からなのでしょうか?

2月末頃ですね。Eggs 'n Thingsは日本に進出して10年が経ちますが、今年2月の3週目まではずっと順調に売り上げを伸ばしてきました。しかし2月最終週で売り上げがガクンと落ちたんです。中国でのコロナによる死者が一気に増え、国民全体の消費意欲が落ちたことが要因だと思っています。4月には緊急事態宣言が発令され、一気に前年比から約90%も売上が減りました。

6月から緊急事態宣言自体は解除されていますが、客足がこれまで通りに回復するとは思っていません。コロナの脅威が完全になくなったとしても、良くて9割しか戻らないと思っています。リモートワークが当たり前になり、消費者のライフスタイルは大きく変わっていくからです。

しかし多くの外食産業は、これまでの9割しかお客さまが戻ってこなかった場合赤字になります。業界の上場企業の平均営業利益率は4~5%ほどしかなく、売上が10%下がれば利益は出ません。

お客さまの戻りが8~9割でも、利益が出せる体制づくりは、今イートイン型の外食産業に課せられている最大の命題だと思います。

店舗運営のDXのため、サービス開発や実証実験を進める

――客足が減っても利益が出る体制づくりのため、取り組んでいることを教えてください。

昨年設立したクージュー株式会社にて、外食産業をDX化するためのシステム開発に取り組んでいます。実はもともと、オリンピック景気が過ぎれば外食産業全体の売上が落ち込むという危機感がありました。さらには産業全体のレベルアップを促すため、クージュー株式会社を立ち上げたのです。

とくに懸念していたのは人件費の高騰です。そもそも、最近の外食産業の有効求人倍率は5~6倍で、例年どんどん高くなっている現状があります。このままでは時給も高騰し、人材採用が難しい店舗が増えるでしょう。また、不動産価格も上がってきており、ますますの家賃高騰も予想されます。

飲食店にとって厳しい環境になりつつあるなか、追い討ちをかけたのは昨年10月の消費増税でした。外食産業は、例え10円料理の値段が上がっただけでも、お客さまが来なくなる世界です。2%の増税であってもお客さまの消費意欲は減少してしまいます。

そこでクージュー株式会社では、次世代デバイスやAI、RPAの技術開発を行うウェルヴィル株式会社さまと共同出資し、飲食店・小売店、その他サービス業向けITシステムの企画販売を始めています。事前注文システム、テーブルオーダーシステム、カスタマートラッキングシステム、AIアバターレジなど最新技術を駆使したさまざまなシステムを開発・運用中です。Eggs 'n Thingsなどの店舗を活用し実証実験も行っています。

行き過ぎた業務効率化は「おもてなし」を失わせる

――飲食業界の変革を進めていく中で大切にされていることを教えてください。

そもそも外食産業全体の生産性は、今非常に低いと思っています。最後に革新的な発展があったのは1980年代初頭のPOSシステム導入で、以来40年、目立った進展はありません。

基本的には人に頼ったオペレーションが中心で、今も大変な状況を乗り越えるために、アルバイトや社員に負担がかかっている現状があります。たまに、飲食業界がブラックだと叩かれることがありますが、その背景には業務効率化のためのデジタル化やDXが進んでないことがあるのです。

我々としては、そんな効率化が進んでいない外食産業にDXをもたらしたいと考えています。分かりやすく言うと、目指すところはRaaS(Robotics as a Service)の外食産業バージョンだと考えています。

しかし、業務効率化に特化し、全てを自動化することが必ずしも良いとは思っていません。例えば今一番デジタル化が進んでいる中国では、料理を作るのもロボットがやっています。お客さまは事前に料理をオーダーし、出来上がったものを取りに行くだけで、その間に人は介在しません。しかし私は、それでは小売と変わらなくなってしまうと思うのです。

欠けているのは、いわゆる「おもてなし」と呼ばれる部分だと思います。例えば商品を渡す最後の瞬間に人が介在すれば、コミュニケーションが生まれお客さまの満足度向上につながりますし、より多くのデータ収集もできるのではと思います。我々側の都合だけでなく、お客さまに心が通じる形での仕組み作りを意識しています。

シェフとお客さまが直接コミュニケーションを取れる店舗に

――具体的にイメージしている、DX後の理想の形があれば教えてください。

目指している一つの形として、作り手とお客さまが直接つながるサービスの形があります。例えば、コーヒーショップの場合、お客さまがバリスタと直接コミュニケーションをとり、自分の好みなどを伝えて作ってもらえるようにするのが理想だと考えています。

今、お客さまがコミュニケーションを取っているのはキャッシャーです。それだとお客さまは自分の好みを伝えようと思えませんし、キャッシャーも要望を伺ったところで実現できるかどうか判断できません。寿司屋でダイレクトに職人さんへ注文をするように、たくさんのお客さまが来店される飲食店でも、作り手とお客さまが、直接コミュニケーションをとれるシステムを作りたいのです。最終的に目指すのは、シェフ一人でお店が成り立つようにすることですね。

また、現在キッチンカーを都内で実験的に走らせていますが、キッチンカーのような形で人がお店に行くのではなく、お店が人のもとに行く仕組みづくりにも取り組みたいと考えています。お客さまが気分に合わせて食べたい料理をアプリで選ぶと、シェフを乗せた車が自動運転で近くまで来て、できたての料理が買える、というサービスをイメージしています。

とはいえ最初からすべてを作り上げることはできません。徐々に既存の仕組みをアップデートしていき理想に近づいていければと思っています。

DXが進むにつれ、求められる人材のレベルは上がる

――外食産業の革新に伴って、求められる人材のレベルも変わってくるのでしょうか?

変わると思います。

これまでは基本的に人が足りていなかったので、引く手あまたの状態。ワーカーにとっては完全な売り手市場でした。しかしこれからDXが進むにつれて募集枠自体も少なくなり、さらに高いスキルを求められるようになるのだと思います。

先ほどもお伝えしましたが、お客さまは味さえよければ喜んでくれるわけではありません。例えばお店の人と目を合わせながら注文を伝えるだけで、「あの人ちゃんと私のことを見てくれて、私のために料理を作ってくれるんだな」と感じます。そうするとお客さまの満足度は高まると思うのです。

だからこそ、料理や飲み物を作る人はただ黙々と作業をしていれば良いわけではなく、お客さまの目を見て注文を聞き、笑顔で良い印象を与え、そして心を込めて作る、ということが求められるようになるのです。

やっぱり最後は人の温かみを提供するのが外食産業の価値だと思います。これからもサービス業としての本来のあり方は大切にしながら、DXを進めていければと思います。


HPはこちら:
▼EGGS 'N THINGS JAPAN
https://www.eggsnthingsjapan.com/
▼KooJoo
https://koojoo.co.jp/
松田 公太
クージュー株式会社 代表取締役 CEO
EGGS 'N THINGS JAPAN株式会社 代表取締役

1968年生まれ。5歳~高校卒業まで殆どを海外で過ごす。筑波大学卒業後、銀行員を経て97年にタリーズコーヒー日本1号店を創業。翌年タリーズコーヒージャパン(株)設立。2001年株式上場。320店舗超のチェーン店に育て上げ、07年同社社長を退任。同年、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーに選出。2010年、参議院議員選挙で初当選。2016年、議員任期満了後は、Eggs 'n Thingsの世界展開や自然エネルギー事業など精力的に活動中。2019年、飲食チェーンの運営やシステム開発のため、クージュー株式会社を設立。上場企業2社を含め、多くの企業の社外役員、アドバイザー、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の顧問も務める。

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