デジタルシフト未来マガジン〜電話会議ソフト「Zoom」〜

AIやIoT、VR/ARといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどだ。「デジタルシフト未来マガジン」では、オプトグループで新たな事業を創造しデジタルシフトによる変革を推進している石原靖士氏が捉えた国内外のデジタルシフトの最新事例を紹介する。
今回、ご紹介するのは電話会議ソフトの「Zoom」です。Zoomは、2011年にコンピューターネットワーク機器のCISCOの電話会議ソフトを開発していた責任者のエリック・ユアンが創業しました。2019年5月にNASDAQに上場しており、時価総額は32億ドルです(6月20日時点)。

・【概要】Zoomのビジネス

「Zoom」は、電話会議ソフトの企業です。ブラウザやスマホアプリ、PC用アプリでサービスを提供しており、時間や場所を選ばず、手軽に会議に参加できるところに特徴があります。日本では、NECや日商岩井などのSIerが販売代理をしており、近年注目されている「働き方改革」を理由に導入する企業も増えています。

電話会議ソフトの市場はプレーヤーが多く、SkypeやGoogleなど大手も参入しています。Zoomは全くもって一強ではなく、後発でもあります。ビジネス的な成功は、必ずしもイノベーターではなく、後発プレイヤーこそが市場を独占しやすいことを、Zoomは物語っています。

また、Zoomは典型的なSaaSサービスですが、最近の世界的な潮流として、「Adobeクラウド」をはじめソフトウェアサービスがSaaS型に切り替えることで成功しています。このSaaS型のビジネスモデルは、ソフトウェア企業のみならず全ての法人向けサービス企業が参考にすべきビジネスモデルです。

・“デジタルシフト”なポイント

Zoomのポイントは、後発サービスとしての戦い方です。競合が多い中で、後発のZoomがどのように独自の強みやブランドを構築したかに、今回は着目します。具体的には、「顧客満足にフォーカスした開発」、「競合を排除しないサービス連携」、そして「ターゲット別の顧客開拓」です。
■ポイント1:「顧客満足にフォーカスした開発」
Zoomは顧客満足を高めるために、NPS(ネットプロモータースコア)を導入しています。NPSとは、推奨者・中立者・批判者をスコアリングして点数を算出するもので、顧客からのサービスの評価を確認する手法として利用されています。NPSを導入することで、自社のサービスを客観的に評価し、顧客満足の上昇を徹底させているのです。実際に、ZoomのCMOはインタビューで「当社のNPSスコアは72です。これは、非常に高いスコアで、エンドユーザーのZoomへの満足が高いことを示しています」と自信をみせています。

■ポイント2:「競合を排除しないサービス連携」
競合が多いことは先ほど述べた通りですが、Zoomは競合サービスとも積極的に連携しています。例えば、大手のSkypeとも一部で連携し、SkypeユーザーはZoomも使えるようになっています。ユーザーは、自分の好きなサービスを組み合わせて使うことができるのです。開発面でも、APIを解放することで、他のアプリとの接続を可能にしており、パートナーを拡大しています。その中にはGoogleが提供する「ハングアウト」も含まれています。

■ポイント3:「ターゲット別の顧客開拓」
Zoomは基本的に企業向けの機能開発を重視しています。日本もそうですが、SIerとのパートナー販売などを活用することで導入企業数を伸ばした結果、年間1000万円以上の売上になる企業アカウントは400を超えます。
もうひとつのターゲットは利用者が10名ほどの中小企業や個人です。こちらは、ネットワーク効果やコミュニティの活性化を重視しています。ユーザーからユーザーへ広げるためのコミュニケーションやブランディングを展開することで利用者を獲得しているのです。年間売上は15万円程度ですが、アカウント数は約5万8500に至ります。
成長率では、前者が120%、後者も86%で成長しています。

・Zoomを貫く、強い「企業文化」

Zoomは、前職時代に電話会議ソフトを開発していた創業者によって、理想を追求するために設立されたという背景があります。そのため、品質にとことんこだわり、コツコツ改善するという企業文化が創業時からずっと維持されています。これは、NPSの導入にも表れているでしょう。ビジネス的な戦略はもちろんですが、その後ろに流れる企業文化もまた、Zoomから学ぶべき大きな特色だと思います。