Instagramの活用事例から見る「モバイル時代の消費者トレンド」
2020/4/6
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化が待ったなしの状況を迎えている中、2020年2月7日に東京・渋谷で、5GとDXをテーマとしたカンファレンス「DX Drive 2020」が開催された。今回は「5G時代の動画最前線」というテーマで行われたセッションから、Instagramの変化と活用から見える、モバイル時代の消費者トレンドについて、Facebook Japanの丸山祐子氏が解説した模様を紹介する。
※この記事は、セッションの内容を一部、編集、抜粋してお届けしています。
Contents
8割のユーザーは動画でもスマホを横にしない
時代の変化に応じて、みなさまが使われるデバイスは変わってきたと思います。同じようにFacebook、Instagramというサービス自体も、みなさまの生活の変化に応じて変わってきました。テキストのやり取りがスマートフォンの台頭でイメージ中心になり、さらに動画、今ではAR・VRの世界に入ってきています。そこでFacebook、Instagramにおいても事業の拡大を行っております。
現在、発表させていただいているFacebookのファミリーアプリの月間利用者は、グローバルで約29億人です。ファミリーアプリにはAR・VR事業のOculusもございます。今日はその中でInstagramがどのように消費者のトレンドを捉えているのか、についてお話します。
デジタルの大きな流れで言うと、デスクトップからモバイルへとトレンドが移り、動画もテレビからモバイルビデオへとシフトしました。さらに我々が次に捉えているトレンドは、「フィードからストーリーズへ」というものです。以前はコンテンツを流し見する「フィード(Feed)」が主に使われていましたが、今では「ストーリーズ(Stories)」という早く手軽に投稿できる形態をネットトレンドと捉えています。
もうひとつのトレンドは、「GO VERTICAL」 。つまり、モバイルのクリエイティブが圧倒的に縦型になってきました。数字を見ていただければわかるように、モバイルユーザーがデバイスを縦型のまま使用する割合は、現在では90%に達しています。動画を見る際にデバイスを横にしないモバイルユーザーの割合も、82.5%となっています。
ここまではグローバルのトレンドですが、特に日本のInstagramの使われ方の特徴は、検索がテキストからビジュアルになってきている点です。日本はグローバルと比較してもハッシュタグ検索が非常に使われている国であり、これをいかにマーケティング活動で使っていくのかがポイントになっています。
つまり、今の時代は「“ググる”から“タグる”へ」ということで、イメージでの検索が増えています。Instagramは今まで「発見のメディア」という意味合いが強かったですが、現在は商品やサービスを検索するとか、購入の検討に使うというような、発見だけでなく、さまざまな購入フェーズで使われるプラットフォームになってきております。消費者のデジタルの使い方も変わってきているので、Instagramの使われ方も変わってきているということでございます。
Instagram内で試着や決済もできるようになる
Instagramには「大好きな人や大好きなことと、あなたを近づける」というミッションがあります。すべてのプロダクト開発は、このミッションのもとに行われています。
Instagramに「アーティスティックな写真メディア」というイメージを強く持っている方も少なくないと思いますが、2010年にサービスをローンチしたときは、実際に画像だけをアップできるプラットフォームでした。しかし、スマートフォンが台頭するにあたり、ユーザーの「よりニッチなイメージも上げたい」という要望に応えるべく、動画サービスも始めました。
さらにInstagramは2016年、「ストーリーズ」と呼ばれる24時間だけコンテンツを表示できる全画面表示のサービスもスタートしました。こちらは爆発的な人気となっておりまして、日本ではデイリーアクティブユーザーの70%が毎日使っている機能となっております。
また、商品展開をさらにリッチにして参りまして、今では「IGTV」という長尺の動画をアップできる機能であったり、「Instagram Shopping」という実際にお買い物ができる機能もローンチしております。みなさまのニーズの変化に合わせて、ユーザーがより好きなこと、より好きな人に近づけるサービスを展開してきました。
例えばInstagram Shoppingでは、投稿写真の中の商品にタグを付けることができまして、それをクリックしていただくことで、それぞれの商品詳細ページに飛ぶことができます。こちらの機能も我々が非常に注力しているもので、実際に買える方法をよりリッチにしていくために新しいサービスを始めております。
現在、Instagram内で購入まで完結する、「チェックアウト」の機能をアメリカでテスト中です。近い将来、日本でもInstagram内で決済ができるようになる予定です。
もうひとつご紹介させていただきたいのは、Instagram内でノーティフィケーションを送る機能になります。例えば、靴が何月何日に発売されますと広告を出して、それにノーティフィケーションを付けると、「間もなく発売されますよ」と送ることができます。
そして最後はInstagram内で実際に商品を選び、それを試していただける機能です。例えばリップであれば、どの色がいいか選ぶと、その商品をカメラのAR機能を使って付け替えすることができ、気に入ったらその場で購入もできます。これも現在テスト中の機能で、日本でも導入予定でございます。
我々は画像メディアから始まり、今では買い物もInstagramで終えることができるというように、サービス内でやれることが複雑化していきました。それもユーザーを大好きな人、大好きなことにより近づけるというミッションを実現するための展開です。
オフィシャルで発表しておりますが、Instagramは本当に日本で大人気のプラットフォームとなっておりまして、US以外にも日本にプロダクトチームを設けております。日本のみなさまにたくさん使っていただき、たくさんの要望をいただくことで、さらに使っていただける機能を開発していく所存です。ですので、たくさんのフィードバックをいただければと思っております。
Instagram Liveで商品を紹介すると売れ行きが変わる
最初にクイズをさせていただきます。2018年、もっとも使われたストーリーズのスタンプは何だと思いますか? ハートスタンプ、質問スタンプ、ロケーションスタンプ。どれもストーリーズでよく使われるスタンプですが、この中の1位は、実は質問スタンプです。
ユーザーに簡単なアンケートもできることもあって、質問スタンプはかなり多くの企業様に利用していただております。企業が一方的に発信するだけではなく、消費者の声を吸い上げてコミュニケーションしていくことが求められるようになってきた時代の変化も背景にあると思います。
その中でクライアント様の事例をひとつ紹介します。「COHINA(コヒナ)」様というアパレルのD2Cブランドです。Instagramを非常にご活用いただいておりまして、質問スタンプやアンケートスタンプを使うことによって、より顧客との距離を縮めているお客様になります。
ショッピング機能だけでなく、オーガニックのストーリーズで質問をする、ストーリーズの広告を出す、IDTVという長尺の動画も使う、といったように、Instagramの機能を複合的に使うことによってブランドビルディングを行われています。
しかもCOHINA様は、新商品の紹介を実際の店員さんが行う「Instagram Live」を400日以上ずっと上げ続けています。「なぜ、そんなに長く?」と聞くと、「Liveで出した商品と出さなかった商品で売れ行きが全然違ったので、辞めるに辞められなくなった」とのことでした。そうやってCOHINA様は顧客と深いエンゲージメントを築き、売り上げも伸ばされています。
Instagramの広告にはFacebook社のデータが活用されている
その課題を解決するため、インフルエンサーの起用を検討される方も多いかと思います。しかし、そこでリーチできるオーディエンスは、インフルエンサーのフォロワーの中で、ターゲットと重複する部分のみになります。
その中で我々がおすすめしているのが、広告の活用です。
InstagramはFacebook社の広告データを活用しており、ユーザーの年齢や性別をしっかり把握しております。もし、みなさまが広告出稿する場合は、ターゲットしたいユーザー層に、ほぼ100%に近いかたちでリーチすることができます。
このように企業様のInstagramの活用の仕方としては、「オーガニックだけやってください」「広告だけやってください」というのではなく、「機能を上手く使い分けしましょう」とお伝えさせていただいております。それぞれの使い分けについては、COHINA様の事例のように、オーガニックのページはファンになってくれている方とのつながりを深めていただくためのものだったり、ホームページのようにタグ検索で流れてくるユーザーのランディングページとして活用していただくのがいいと思います。
しかし、オーガニックだけに頼っていては、「そもそもブランドを知っている人しか来てくれない」という課題があるので、そこを広告によって上手く補完し合うことがポイントになります。
モバイル世界での1秒間は、とても長い
先ほど時代はどんどん変遷しているというお話をさせていただきましたが、みなさま日々、たくさんの情報をモバイルで処理していると思います。もともとはデスクトップサービスとしてスタートしたFacebookですが、現在はモバイルがほぼ100%に近いかたちで使われています。さらにInstagramはスマートフォンのみで使われてるサービスなので、Facebook社としてスマートフォンでどのようにコンテンツが見られているのか、ということは非常に研究をしております。
そこでわかってきたのは、「モバイルの世界での1秒間は、とても長い」ということです。実際の調査によると、2001年の人間の脳の情報処理能力速度の平均値は0.3秒だったのですが、これがスマートフォンが普及した2014年になると、0.03秒にまで上がっています。つまり、スマートフォン以前はかなり咀嚼してデータ処理をしていた人も、今は一瞬でコンテンツを見るか見ないか決めているということになります。
人々の行動がそんなふうに変化してきているので、モバイルのクリエイティブもかなり変化してきました。例えば、テレビCMはオチが最後にあるものがほとんどですが、一瞬で判断されるモバイルのストーリーテリングでは、伝えたいメッセージを冒頭に持ってくることがポイントとなっています。
ほかにもユーザーのアテンションを捉える方法としては、「スピードで捉える」「伝えたいメッセージを繰り返す」といったことがあります。この会場のような大画面では目がチカチカするかもしれませんが、スマートフォン上だと、思わず「あっ」と指を止めるクリエイティブになります。
また、モーションで動きを強化することも効果的です。静止画を単に貼るより、ちょっとでも動きを加えるとユーザーの目を捉えやすくなり、指が止まるといったTIPSになります。
最後にCTA(Call To Action=行動喚起)の強化を紹介します。特にストーリーズは「SWIP UP」といって、画面の下にランディングページを設定することができます。これはクリエイティブに「SWIP UP」の文言を入れることで、ユーザーに起こしてほしいアクションを促すことが期待できます。これも広告としてパフォーマンスが高くなるTIPSだと思います。
さらに最近では通信データ容量の増加もあり、ARフィルターの活用も広まっております。スターバックスさんがハロウィンの際に行ったストーリーズでは、ユーザーがフィルターを選ぶと、自分の顔に合ったハロウィンマスクが付けられるというサービスを提供していました。
普段、たくさんのブランドがある中でユーザーと触れ合う機会を作るのは難しいと思います。そこでARフィルターなどを活用すれば、ブランドと触れ合う時間を長くすることができ、ブランディングを行うことができる。そういう事例になります。
モバイルでのブランディングは、いかにコンテンツを見てもらい、いかにユーザーとつながるか。その仕組みづくりがポイントになります。ストーリーズにはたくさんのクリエイティブ事例がございますし、我々のホームページでもさまざまな事例を紹介しております。
Instagramは現在、グローバルで約10億アカウントが登録されています。多様な要望に応えるべく機能もどんどん拡張しておりますので、画像や動画だけではなく、ショッピングやIGTVなど、さまざまな機能をご利用ただいて、みなさまのブランドビルディングにご活用いただければと思います。
駆け足になってしまいましたが、今日の私の講演は以上になります。ご静聴ありがとうございました。
丸山 祐子
Facebook Japan
Client Solution Manager Lead
大学卒業後、人材会社で法人広告営業担当に就き、その後、広告会社でソーシャルメディア営業を担当。主に、Twitter、Facebookをはじめとする新規海外メディアの日本での広告ローンチに従事。2013年5月より、FacebookのClient Solutions ManagerとしてFacebookやInstagramの広告主に対してメディアプランニング、ソリューションの提案を行う。また、広告運用に関してのサポートを行うことにより、配信の最適化などを行う。現在Instagramのスポークスパーソンでもある。