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デジタルは課題解決のためのツール。O2Oビジネスモデルで、レジャー業界に新風を

デジタル化が遅れていたレジャー産業に果敢に飛び込んでいったベンチャー企業がある。サーファー向け波情報サイト『波通』や、スキー業界で独占状態のイベント申込サイト『デジエントリー』、全国BBQ場検索サイト『デジキュー』などのサービスを運営する株式会社デジサーフだ。Webサービスを起点にリアル店舗へと事業を拡大していった同社は、どのような道のりをたどったのか。今回は株式会社デジサーフの代表取締役社長を務める高橋佳伸氏に、デジタルシフトの経緯や戦略、事業の裏にある信念について、株式会社オプトベンチャーズ代表取締役の野内敦氏がお話を伺った。

全ては趣味をデジタル化することから始まった

野内:まずは、デジサーフの事業内容について教えてください。

高橋:レジャー業界でネットとリアルを融合したO2O(Online to Offline)サービスを展開しています。具体的には、サーフィン市場で波情報を提供する『波通』や、ウィンタースポーツのイベント告知からエントリーまでをサポートする『デジエントリー』、都市部からアクセスしやすい場所で、機材の準備なしでBBQを楽しめる『デジキュー』などです。それぞれの業界で、すでにサービスを提供している会社と競合するのではなく、パートナーとして協働し、レジャー産業全体の活性化を目指しています。

野内:高橋さんは様々な事業を作って来られましたが、それぞれどうやって事業化してきたのですか。

高橋:2000年頃までは、エンジニアの人材派遣事業をしていました。エンジニアの仕事は場所を問わないので、湘南に住んで趣味のサーフィンばかりやっていましたね。ちょうどインターネットが普及し始めた時期で、ホームページを作ろうと思い立ち、海岸をランニングがてら撮影した海の写真を、ホームページにアップしていました。毎朝続けていると、その日の波の情報がわかるのでいつの間にかサーファーの間で人気サイトになっていて、有名芸能人が選ぶお気に入りサイトとして雑誌にも載るようになったのです。

写真をアップしない日には、見ず知らずの人から「今日はアップしないのですか」と大量にメールが来るようになり、さすがに困りました。雨や雪の日まで撮りにいくのは面倒ですが、期待には応えたかったので、海岸に定点カメラを設置することにしたのです。

当時のサーフィン情報系のメディアはテキストだったので、波の映像情報はサーファーにとても喜ばれました。その後、携帯電話に写メール機能が付くと、映像はキラーコンテンツになったんです。各波情報会社がこぞって定点カメラの映像を買いに来ました。そこで、定点カメラの設置費用より安い価格で、全社に映像を売りました。1社に高額で売るのではなく、全社に安く売ることで、定点カメラの映像は業界のスタンダードになりました。趣味のためにやっていたコンテンツが、サーファーの波観測の必須ツールになったんです。

野内:それで『波通』ができたんですね。
高橋:波通は映像を買ってくれている会社から譲渡を受けました。これらの収入だけで生活できましたね。夏はサーフィン、冬はスノーボードをして遊んで暮らしていました。冬シーズンの約半年間、山にこもって滑り続けていたのですが、大会の申し込みに麓の郵便局まで降りなければならないのが面倒で。そこで、スノーボード大会のWeb予約システムを作ろうと思ったんです。

毎日1ページずつシステムを開発していって、大会情報の掲載から決済までできる仕組みを作りました。でも、イベントが載っていないと人が見に来てくれませんから、まず大会を主催するスノーボード協会やスキー連盟に使ってもらう必要がありました。それぞれと交渉し、バックマージンを払って導入してもらえることになったんです。どんどん利用者が増えて、3ヶ月で5億円がサービス上で動くようになりましたね。

BBQ会場のWEB予約システムを初期費用0円で開発 県や市の公園にもデジタルを導入

野内:サーフィンもウィンタースポーツも、既存の業界に先んじてデジタルを導入することで事業化していかれた。自分で開発までしていたんですね。バーベキュー事業はどうやって始めたんですか。

高橋:スキー連盟の中にいた自治体の公園管理者の方から、BBQ場のWeb予約システムを作ってくれないかと依頼されたんですよ。潮干狩りができる県内屈指の人気BBQ場で、シーズンになると予約が殺到し、電話一本では対応できなくなっているということでした。

ただし、市の公園なので入札で依頼先が決まると言われました。1000万あたりが相場だという話でしたが、僕はすぐに「0円でいいのでやらせてください」と言ったんです。システム開発だけを請負うのではなく、パートナーとして取り組み、売上をシェアして渡す。コンテンツプロバイダのやり方を真似しようと思ったんですよね。初期費用0円で、随意契約となり、レベニューシェア契約を結ぶことにしました。

システム開発と並行して予約状況を見直すと、1ヶ月分の予約を1日で受けていたことがわかりました。そこで、まずは1日ごとに予約を受けられるようにして負荷を分散させました。加えて、収益が必要なので食材も販売することにしたんです。食材セットを購入すると2ヶ月前から優先的に予約できるルールを作りました。そうすると予約が分散するし、みんな席を取るために食材を買うんです。その結果、客単価が上がり、月400万の売り上げを上げれるようになりました。

市の公園で結果を出せたので、他でも同じように課題解決できると思い、県の公園のBBQ場にWeb予約システムの導入を打診されました。当時は、電話対応せず直接事務所で申込書に書かないと予約できないBBQ場もありました。デジタル化してルールを変えれば市民にももっと使いやすくなるはずだと思ったんです。しかし、担当者に「公園は全市民に使えるものであるべきだから、アナログな予約方法が必要。アナログ予約とWeb予約両方あったら二度手間になり、運営の仕事が減らない」と言われてしまったんです。

そこで、コールセンターを自前で用意して運営側の負担を減らし、住所確認をオペレーションに組み込んで、市民が優先的に利用できるシステムを自前でつくりました。これによって県立公園のBBQ場にも、Web予約システムを導入することができました。

予約システムだけではなくリアルにもサービスを展開 O2Oで事業をスケール

野内:これまでは各業界のデジタルシフトをして、オンラインでビジネスを展開されていますよね。オンライン中心からO2Oにシフトされたタイミングはいつですか。
高橋:BBQ事業を始めてから、予約システムだけではなく施設自体の運営もできないかと声がかかったことがきっかけです。もともとリアルにもサービスを展開したいと思っていたので、すぐに引き受けました。

サーファー向けの波映像情報システムもスノーボードのweb予約システムも、各業界で認知は獲得しましたが、市場がニッチすぎて大きくスケールするビジネスにはなりませんでした。そこで、BBQ事業はリアルにも進出する事で客数が少なくても客単価を上げてスケールさせられると、ずっとチャンスを伺っていたんです。

そんな時、当社が譲渡を受ける前に波通を運営していた会社がショッピングモールでハワイアングッズを店舗展開したことで、急激に業績を伸ばしたのです。この事例を見て、ニッチな市場ではITとリアルとを絡めた、O2Oビジネスを展開すべきだと確信していました。

実際にやってみると、ユーザーの導線を丁寧に作りこまないといけないWebと比較して、最初から集客できているリアルの施設の運営は簡単でしたね。Web上の見せ方を応用し、使いやすい施設を設計し直した結果、オープンした月に前年同月比で売り上げを2倍にすることができました。その事例をみて、他のBBQ場からも、運営を依頼されるようになったんです。

その中で、ある商業施設から屋上BBQ施設の立ち上げを依頼されました。そこではもともと農園を運営していましたが、他のフロアが黒字の中、屋上だけが赤字だからテコ入れしたいということでした。屋上農園の運営会社と共同でBBQ場を立ち上げることになり、ここでもIT的なレベニューシェアの形を取りました。

これまでの運営と違って0からの立ち上げだったので、まずBBQ場の認知獲得から始める必要がありました。しかし、共同でやっている運営会社の広報がしっかりしており、テレビ各局に取り上げてもらえることができたので、すぐに予約が殺到しましたね。広告宣伝費にお金をかけずに取材という形で集客できたことが大きく、あっという間に黒字化しました。

リアル店舗の運営はWeb予約サービスよりも客単価が大きいのがメリットです。これは狙い通りで、リアル店舗を運営したことで売上が拡大しました。しかも、リアル店舗の販促で、オフラインからオンラインの予約でそのエリアの会員獲得を果たしていたのです。

一つのBBQ施設に来てくれた人が会員になり、その人たちにまた近くのBBQ施設を宣伝できる。商業施設の販促で広告費をかけなくても会員を吸い上げられるO2Oの仕組みを作ることができました。

デジタルは課題解決の手段

野内:これまで、デジタル化が進んでいない業界に参入して来られていると思います。前例がない中で、デジタルの導入は大変ではなかったですか。

高橋:僕はもともとシステムエンジニアなので、常にデジタルをリアルの問題解決の手段として提案しています。だから、業界からの抵抗はなかったですね。ニーズがあるところに、デジタルを入れて解決するだけですので。

ビジネスは、ニーズをつかむことが大切です。ニーズがあれば、いつリターンが得られるかわからなくても赤字覚悟で飛びこみます。その覚悟がないと先行者利益は得られなかったと思いますね。

野内:どの事業でも、最初は自前でスタートしていますよね。

高橋:ビジネスでは目の前のお金を追わないことを意識しています。目的は利益の追求ではなく、社会課題の解決だからです。BBQ事業をやっていて思うのは、お金よりもお客さんの笑顔こそが一番の価値だということです。ものを買うことは、お金を渡すことでその会社を応援しているのと同じなんですよ。だからたくさんのお客さんが価値を感じ喜んでくれるようになったら、応援してくれる人が増え、自然とお金は集まると考えています。

だから、開発の初期費用はいただかないようにしていますし、提携先企業とパートナーになって、事業の成果とともに収益が上がるようなWinWinの仕組みを横展開しています。

先行事例がなくても、収益化の見通しが立っていなくても、求められていることをやってきて良かったと思います。誰もやりたがらなかったことに最初にチャレンジすると、いろんなところから思いがけないチャンスが舞い込んでくるんですよね。

ニッチ市場をデジタルで繋ぎ、レジャー業界を制覇する

野内:先義後利、素晴らしいと思います。最後に、今後の展望を教えてください。

高橋:今後は、リアル店舗を横展開し、サービス会員の基盤を強化していきたいですね。

それから、新しくキャンプ事業を手がけるつもりです。キャンプには行きたいけれど、虫が嫌だし夜はベッドとエアコンがある部屋で快適に眠りたいというニーズは多いと思うんです。そこで、春から秋の使用されていない時期のスキー場を使って、『デイキャンプ』というサービスをやりたいと思っています。

昼間みんなでキャンプスタイルのBBQをして、夜はスキー場のきれいなホテルに泊まるデイキャンププランです。ラグジュアリー感のあるアウトドアですね。さらにその先は外国人を地方のスキー場エリアに呼んで、地方創生につなげるつもりです。

都市型BBQやデイキャンプのように、ニッチ市場を創造し盛り上げていき、最終的にはレジャー業界を制覇したいですね。そして、各分野の施設を1つのオンラインサービスとつなぎ、旅の計画からリアルの体験まで、一気通貫で行えるような世界を作っていきたいと考えています。時間はかかりますが、それを実現するためのビジネスモデルを構築しているところです。そうする事で、誰も崩すことができない状態を作り上げる事ができます。今後も、デジタルとリアルを融合させた課題解決を重ねていき、サービスを世界に広げていきたいです。

プロフィール

高橋 佳伸(Yoshinobu Takahashi)
20歳でIT系企業に入社後、エンジニアとして数々の表彰をうけ、23歳で独立、起業する。30歳でセミリタイアを決断し、半年間は冬山に篭りスノーボードインストラクターとして活動しながら競技者としてもスノーボード大会を転戦。春になると下山して海外でサーフィン、スノーボードをするという生活を8年間続ける。セミリタイア中に考案した海岸ライブカメラを使ったビジネスモデルが湘南ニュービジネスコンテストで優秀賞を受賞。社会復帰後、事業に本腰を入れ、2011年よりリアルな店舗展開とITを融合させたO2O事業を開始し5年で20倍の成長をさせる。現在の中核事業である「デジキュー」では、BBQ場と利用者・運営者・産地食材をBBQ機材販売業者とBBQ業者をマッチングさせ、利用者はBBQ場の空き状況チェックから食材の予約、クレジット決済まで、WEB上で簡単に予約できるプラットホームを提供している。
野内 敦(Atsushi Nouchi)
株式会社オプトホールディング 取締役副社長グループCOO、株式会社オプトベンチャーズ 代表取締役。1991年森ビル入社。1996年オプトに参画。共同創業者として、グループ経営、組織運営、新規事業設立など、グループ成長拡大に一貫して携わる。現在、グループCOOとしてシナジー戦略を牽引しつつ、ベンチャーキャピタル事業を行うオプトベンチャーズの代表者として、投資先を支援している。

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