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コロナの影響ほぼなし!オンラインの「N高」から学ぶ、これからの学校教育。

新型コロナウイルス感染症は、経済界だけでなく、学校教育にも大きな影響をもたらしています。授業や行事がオンライン化した学校、対面とオンラインとを使い分ける学校、コロナ対策を施しつつ対面での授業を再開する学校など、学校・自治体ごとに異なる対策がとられていますが、特に小・中・高校においては、完全にオンライン授業を提供できている学校は多くありません。また、オンライン授業を提供している学校・塾においても、その取り組み方に試行錯誤している様子が伺えます。
これから学校教育はどうなっていくのか。コロナ以前よりWebを活用し、教育プログラムの提供を行ってきたN高等学校の校長、奥平 博一氏に、オンラインでの学びの工夫やオンラインだからこそのメリットについてお話を伺いました。

ざっくりまとめ

- N高ではあらゆる授業がオンライン配信されていて、生徒は自分の好きなタイミングで好きなだけ学習できる
- これから教員に求められるのは、教科指導だけでなく、コーディネーターやサポーター、ファシリテーターとしての役割
- 教育現場は「こうでなくてはならない」にとらわれず、教育の原点に立ち返り、進化する必要がある
- N高は、生徒の多様性に合わせて教育のあり方を多様にすべく、さまざまな取り組みに挑戦し続けている

普段声を上げない子にスポットを当てられるのもオンラインの良さ

ーコロナによりN高は、何か影響を受けたのでしょうか?

正直、影響はほとんどありませんでした。

当然、リアルな活動への制限は増えました。たとえば、沖縄で開催予定だったスクーリング(面接指導)は、実施のタイミングを見合わせています。ただ、我々がメインで行なっているオンライン授業は、特にコロナによる影響はなく続けられています。

ーオンライン授業の具体的な仕組みを教えてください。

高校卒業資格を取得するのに必要な英数国理社や保健体育などの履修科目はもちろん、大学受験のための授業も、すべて映像化されています。基本的に生徒には、その映像を見て学習を進めてもらう仕組みです。生徒はインターネット環境さえあればいつでも、どの授業でも受講でき、自由に学習を進められます。

質問もWeb上で受け付けていて、各教科担当の先生が生徒からの質問に答えるシステムを構築しています。

またクラスも設けていて、Slack上でホームルームを実施したりもします。担任の先生とは随時Slackやメール、時には電話・Zoomなど様々なツールを使ってやり取りをしています。また、年に数日設けているスクーリング(面接指導)前には、参加する生徒たちのSlackグループができ、実際に会う前から活発にコミュニケーションを取っています。オンラインで関係性を築いた後、リアルの場で対面することになるので、生徒達は初対面の場で「会いたかった!」と互いに喜んでいます。
通学コースも用意しており、生徒が毎日決まった時間に通学し、授業が受けられるようにもしています。ここではアクティブ・ラーニングを通して、生徒の課題解決能力を伸ばすことに特化した教育カリキュラムを提供しています。

ーオンラインの良さはどんなところにあるでしょうか?

朝8時半から全員が一斉に勉強を始める必要はなく、朝が弱い人は昼前から始められます。自分の苦手な科目の授業を、重点的に繰り返し学習することもできます。逆に、得意な科目はどんどん先の分野まで進めることも可能です。

前提として子どもたちは「こうなりたい」「勉強したい」という気持ちを持っていますが、クラスメイトと比べて勉強がついていけなくなったといった事情で、学びへの意欲が薄れることがあります。 まずはそれぞれの生徒に合ったハードルに一旦リセットすることが必要で、一人ひとりが絶対に否定されない環境もオンラインだからこそ作りやすいです。

また、生徒一人ひとりとのコミュニケーションは、通常の学校よりも多いかもしれません。40人いるリアルなクラスの中で、「先生、私昨日こんなことしたんです!」と言える人は元気な子ですよね。そう言う子は自走できる傾向にありますが、黙っている子ほど実はコミュニケーションが必要だったりするんです。

オンラインの場合は、他人の目を気にすることなく、「先生!」と話しかけられます。私のアドレスも公開されていますから、生徒からのメールもよくもらいます。普段声を出さない子に、スポットを当てていけるところもオンラインの良さだと思っています。Slackのような全体が集まる場もありながら、一対一との関係性も成り立つ。こういうものを複合的に組み合わせられるのがいいですね。

先生の役割は、教科指導から別の役割へ

ーN高に通っているのは、どんな生徒が多いのでしょうか?

N高の場合はあえて入学試験を課してないこともあり、入学してくる生徒さんは学力も嗜好性もバラバラです。通信制高校と言うと、一般的には不登校児が多く、親御さんなどから勧められて入学する生徒が多いイメージかと思いますが、N高では生徒自身が新しい環境を求めて入学を希望するパターンも多いです。またアルバイトをする子も、海外在住の子もいます。

あえて共通点を言えば、既存の学校で習う枠から出たものも学んでみたいという生徒たちが多いと思います。卒業後の進路もバラバラで、東京大学など難関大学に進学する生徒もいれば、就職する生徒もいます。

ー先生に求められる役割も変わるのでしょうか?

全く変わると思います。

私自身、もともと小学校の教員をしていましたが、経験上、授業では勉強して自分の頭の中に入れたことを教えるので精一杯でした。しかし今はGoogleで検索して出てくる情報のほうが最新ということもたくさんありますので、もっとWebの活用を前提に授業内容を考えるべきです。

そうなると、教科指導が得意な先生はオンライン授業を継続して行えば良いと思いますが、むしろ今後、先生は教科指導ではなくコーディネーターやサポーター、ファシリテーターなどの別の役割が求められるようになるのだと思います。

我々としては、教科指導にもコーディネーター的な役割にも偏るつもりはありません。生徒と社会との接点をいかに多くつくれるかという一点を重視し、そのために必要な環境を整えたいと考えています。ですから講師陣も、社会の第一線で活躍している人に来ていただいています。

普通の授業をただオンラインで配信するだけではダメ

ー今、コロナにより学校はオンライン対応を求められています。どのようなことに気をつければ良いのでしょうか?

コロナになってオンライン対応をした学校の多くは、通常の授業をただオンラインで配信しているところが多いです。オンラインを使って、いかに学校教育をデザインし直すかという発想が大事です。授業ひとつとっても、我々は普通の授業を教室の後ろから撮影して流すのではなく、5〜10分単位で区切る、キャプションを入れるなど、オンライン用の授業を作りあげています。ただ普通授業を流すだけでは、オンラインツールだからこそのメリットが活かせず、コロナが収束したら、「よかった」とまた通常授業に戻るだけなのではないでしょうか。オンラインだからこその「進化」が必要だと思います。
ー何から取り組めば良いのでしょうか?

文科省はGIGAスクール構想を打ち出していますが、どちらかというとハード先行で、コンテンツについてはほとんど考えられていません。ですから、私はまずは教員の業務系からITツールを活用していくといいのではと思っています。教員自身がITツールに慣れていくことで、授業や学校生活に取り入れるアイデアが浮かびやすくなるのではないでしょうか。

社会が変われば、教える内容も変わる

ー学校は勉強だけでなく、生徒同士がコミュニケーションを取れる場所でもありました。オンラインに切り替わることで、問題は起こらないのでしょうか?

オフラインでのコミュニケーションは減るかもしれませんが、オンラインでのコミュニケーションが増えるなど、新しい関係性構築のあり方にシフトするので、とくに問題はないと感じています。

教育の世界では、Webは悪でリアルこそ善という考え方があります。ただし現在の若い世代からすると、Webの世界もリアルの世界もシームレスにつながっていて、その考え方は現代社会のスタンダードになっています。今教育の現場に求められているのは、世の中で必要とされるコミュニケーション能力を養ってあげることで、ならばこれからの学校では、オンラインでのコミュニケーションの機会を多くつくることも必要だと思います。

N高は、生徒たちが世の中に出た時に役に立つことを教えてあげたいと考えています。それは学校教育の原点のはずで、世の中が変わり、社会が変われば教える内容も変わるのが当たり前です。むしろそうであらなくてはならない、とすら思います。従来の教育の枠にとらわれず、つねに教育のあり方はアップデートしていくべきだと思います。

子どもたちの多様性に合わせ、教育のあり方も多様に

ー現在注力されていることを教えてください。

オンライン上のコミュニケーションをより活発にしていきたいと考えています。教育のあり方に関する討論の様子を無料で公開したりもしていて、討論の内容が少しでも参考になればと思っています。

ー今後の展望を教えてください。

もっとやれることを増やし、活動の領域を拡大していきたいと思っています。最近だと、主権者教育の一環として「N高政治部」を設立しました。また、茨城県つくば市に第2のN高であるS高(設置認可申請中)を設置し、今後はN高・S高共に「VR空間で学ぶ普通科」を作っていきます。
個人的には、子どもたちが多様であるため教育も多様であって当たり前だと考えています。全てがN高のような学校ではなく、全日制や全寮制の学校があっても良いです。一つの枠に留めなければならないという発想自体が間違っていて、生徒が自分にとってベストな環境が選べるほど、多様な選択肢を用意したいです。

我々は今で完成しているという感覚は全くなく、毎年新しい取り組みにチャレンジし続けています。今後も生徒一人ひとりにあった教育のあり方を模索していきたいです。
奥平 博一
N高等学校 学校長 

大学時代は発達心理学を学び、卒業後は公立の小中学校に教員として勤務。民間教育に面白みを感じ学習塾に職場を移し、小中学生の受験指導、新規教室の開校準備業務などに従事。その後、通信制高校での業務を機に、新たな通信制高校の立ち上げ、拡大に携わる。そして2014年10月、通信制高校の新たな可能性を信じてドワンゴに入社、すぐに沖縄へ移住し、「N高等学校」の設置・開校準備に奔走する。N高を含め、これまで様々な“子ども”達を見てきたことで、教育における多様な選択肢の必要性を感じている。

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